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戦国時代に宇宙要塞でやって来ました。  作者: 横蛍・戦国要塞、10巻まで発売中です!
永禄四年(1558年)

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2019/2170

第二千十八話・初夏の頃

書籍版、第八巻まで発売中です。

書籍オリジナルの加筆修正、追加視点、巻を重ねるごとに充実しております。

よろしくお願いいたします。


Side:知子


 神戸殿たちが奥羽に戻った。尾張や旧領に帰省し久遠諸島にも行ったことで有意義な休暇だったみたいね。


 皆、英気を養い、それぞれの役目に励んでいる。


 ただし、内部争いを始めた寺社と、国人や土豪の末端は相変わらずだ。隙あらば勝手なことをしている。


 この時代では比較的争いが少ない地域だけど、争いと同時に変わることも少なかっただけに変革についていけていない。


 まあ、勝手なことをした者たちは等しく捕えて、罪人としていて徹底的に労役に処しているんだけど。奥羽では領民や流民よりも、坊主や武士や土豪の一族などの罪人が増えているほどだ。


「寺社は、そろそろ片付くわよ。片付かなくても構わないけど」


 季代子はもう意に介していない。今年に入ってからも、奥羽領内の街道と宿場の制定、伝馬・伝船のための駅の設置などを進めている。


 とはいえ、開拓はあまり進んでいないのよね。十三湊、野辺地、八戸、能代、土崎など湊は重点的に開発をしているけど、それでさえ人手不足の中で賦役を進めている。


 織田家奥羽衆については、一部では寺社離れが起きている。真っ先に寺社と距離を置いたのは浪岡殿ね。所領を手放したことで旧領の寺社を庇護するのをやめてしまった。無論、今も義理程度の付き合いはあり相談事などには乗っているけどね。


 このまま南に領地を広げていくと私たちが奥羽から南下することを承知であり、彼も旧領を離れて新天地へ行く覚悟と支度を密かにしている。


「由利十二党が争っているのはどうする?」


「そっちも放置していいわよ」


 奥羽領の日本海側領境には由利十二党がいる。去年の花火には使者を寄越したし、こちらと争う意思はない。ただし、地域のバランスが崩壊したこともあり、あの地域で小競り合いや戦をしているのよね。


 安東など織田に臣従した者と通じていたところは自身の臣従も考慮しつつ、臣従する前に一暴れしている。因縁を晴らすため、武功を手土産にするため。理由は様々でしょうけど。


 はっきり言えば迷惑なのよねぇ。


 ああ、太平洋側は高水寺の斯波が上手くやっている。反発や混乱が一部にはあるものの、相対的に他よりマシで南にいる葛西との領境は比較的落ち着いている。


 山城よりは穴を掘って城にしろなんて言っていた人で、直感的な部分も含めて有能なのよね。


 私たちの統治法と許容範囲、あと加減を学ぶとそれに合わせて動いている。南部殿もそうだけど。元の世界で相応の評価をされていた人物は適応力もある。


「花火会、楽しみね」


「うん、楽しみ」


 優子と由衣子は今年の花火会に関する支度をしていることで、こちらは楽しそうねぇ。去年の噂も広がっていて、今年はさらに集まる領民が増えるだろう。


 去年の花火で私たちに従う人は確実に増えた。特に領民は。寺社の動きはそんな領民の様子を見た焦りもある。


 今年の花火はなにを生むのだろうか。




Side:織田信長


 近衛公か。此度はなにを言い出すのだと家中では懸念を深めておる者も多いが、かずは近衛公が来るのを待っていた。


 最早、朝廷など要らぬとさえ言う者もおるが、かずは公方様と三国同盟、引いては東国と畿内の先を見ておるからな。


 少し考え事をしておると、出された味噌汁に箸を付ける。


「ふむ、美味いではないか。わずかに物足りぬ気はするが」


 大豆を使うた赤味噌。味は悪うない。作ったのはセルフィーユだからな。ただ、かの者が作ったにしてはひと味足りぬ気はする。


「大量に造る味噌ではこれ以上は難しいです」


 米糠で造りし味噌を食うていた民を思うと十分過ぎる。まして戦の兵糧や飢饉の際に食わせる味噌としては上物と言えよう。


「大豆はもっとあってもよいな。畑は田んぼよりも楽に増やせる」


「はい。それがよろしいかと」


 新たに水がいる田んぼを開墾するのは難しい。いずこの地もすぐに田んぼに出来るところはそれほど多くあるわけではないのだ。ただ、畑ならばすぐに広げることが出来るところはある。


 それもあって、領内では大豆や麦や蕎麦の作付けが大幅に増えた。久遠料理が広がり、蕎麦や麦を使うた美味いものも珍しゅうないからな。


「民がこれほどの味噌が食えるようになるか。またひとつ変わるな。贅沢な品が贅沢でなくなるか」


 民が豆の味噌を食うなど贅沢だと言われることは今でもあるはず。


「質素倹約、大いに結構でございましょう。ただし、人は食わねば生きていけません。食こそ長生きの礎、強く豊かな国は民が満足に食べてこそなせるもの。質素倹約はその上にあるべきでございます」


 相も変わらず、セルフィーユは食を語らせるとケティのように己の信念を曲げぬな。織田家でも民の贅沢が過ぎると騒いでおった者がおったが、セルフィーユが左様な者を諭してしまった。


「ああ、左様であるな。引き続き頼む」


 世は変わり、人も変わるか。幾年付き合っても久遠の者らは面白き者らよ。




Side:近衛稙家


 歓迎されぬことも覚悟しておったが、内匠頭はまことに歓迎してくれた。話すことで政を進める。吾も学ばねばならぬことよな。


 蟹江から清洲も歩いて行くことにしておる。この国を民と同じ立場で見ねば足を掬われかねぬ。大樹を見てそれを痛感したのじゃ。


 道中は甲賀や伊勢よりさらに穏やかで、ゆるりと歩いておると心地よいほど。


 ふと以前あった橋がなくなり、隣に舟橋が架かっておる場に差し掛かった。橋のあったところには前の橋に使うておったと思われる木材が山積みにされておる。これは何故、橋を架け直すのであろうか?


「何故、橋を架け直すのじゃ?」


 ちょうど休んでおる職人と目があったことで声を掛けた。


「ああ、ここらは橋脚を石と南蛮漆喰とかで堅固なものにしているんだ。橋が流されにくくなるんだそうだ」


「ほう、なんとも凄いの」


「ハハハ、尾張じゃ珍しくねえんだけどなぁ。旅のお方は驚かれるな。この国は一年前と様変わりするから」


 なんとよき顔をする職人か。ここには、この世を儚む者が生きたまま屍の如く座り込んでなどおらぬ。


 皆が国をよくしようと励んでおるのがよう分かる。


 京の都も、かつてはかように良き顔をする民がおったのであろうか? それとも吾らの祖先は民を虐げることで政をしておったのであろうか?


 家伝や代々口伝として受け継いだことはある。されど、この国はそれのいずれとも違う。


 やはり、遅かれ早かれ朝廷は変わらねばならぬということか。


 内匠頭はあの気性故、攻めるなど致さぬが、もし日ノ本を己がものにしようと企む者が日ノ本の外に現れれば……。


 明や朝鮮とて信が置けるわけでもない。文永の役、弘安の役があったではないか。


 朝廷とはいかにあるべきなのであろうか。武士に命じるだけでよいはずがないと思うのは、吾の誤りなのであろうか。


 もし日ノ本の皆が久遠を主と仰ぐ日が来れば、朝廷は……。





メインでの活動はカクヨムです。

もし、私を助けていただける方は、そちらも、よろしくお願いします。

カクヨムにて『オリジナル版戦国時代に宇宙要塞でやって来ました。』と『改・戦国時代に宇宙要塞でやって来ました。』があります。

『オリジナル版』は、2153話まで、先行配信しております。

『改』は言葉、書き方、長期連載による齟齬などを微修正したものに、オマケ程度の加筆があるものです。

なお、『書籍版』の加筆修正とは別物であり、書籍版の内容とは違います。


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書籍版戦国時代に宇宙要塞でやって来ました。

第十巻まで発売中です。

― 新着の感想 ―
[良い点] これ読んでると藤原の不要さを痛感するわ
[一言] 味噌!醤油!豆腐!醤油!豆乳!おから!納豆! 大豆はあればあるほどいい。 主食になるものと大豆と塩で日本食は出来ている……いやほんと大豆活用しすぎでしょw
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