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戦国時代に宇宙要塞でやって来ました。  作者: 横蛍・戦国要塞、10巻まで発売中です!
永禄四年(1558年)

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2018/2166

第二千十七話・厄介なことは根っこまで厄介

書籍版、第八巻まで発売中です。

書籍オリジナルの加筆修正、追加視点、巻を重ねるごとに充実しております。

よろしくお願いいたします。


明けましておめでとうございます。

今年もよろしくお願いします。

Side:久遠一馬


 六月となり近衛さんが到着した。わずか五名での来訪で、仰々しい出迎えなど一切不要という先触れすらあった。


 そのあまりに質素な旅に織田家中の皆さんも驚いているほどだ。


 何度か言っているが、身分というモノは同じ人と思ってはいけないほど難しいものになる。上から数えたほうがいい名門である近衛家の前当主が、招かれてもいないのに自費で格下である尾張に来る。


 並々ならぬ覚悟が見える。


「御無事の到着、祝着至極に存じます」


 近衛さん到着の報告を聞いて、オレは蟹江に出迎えに来ている。無論、非公式にだ。到着を待っていたのも事実だからね。


 清洲までは自分で歩いて旅をするとのことだが、今日は蟹江にあるウチの屋敷に泊まってもらうことにする。


「息災そうでなによりじゃ。そなたの顔を見ると嘘偽りなく安堵する」


 顔を見ると素直に笑みを見せてくれた。


 もう少し切羽詰まっているかなと思ったが、表情は思いの外、悪くない。報告にもあったが、変に体裁を気にしなくていいことで、それなりに旅を楽しんでいたのかもしれない。


「しかし、身分を偽り、単身で来られるとは思いませんでしたよ」


「旅に出た大樹を見て、吾も一度真似て見たくての。それに供の者が多いと、まとまる話もまとまらぬ」


 もうこちらが見抜くことを理解して、内情を隠す気がないらしいね。言葉を選びつつも、邪魔だから置いてきたと言うなんて。


「まあ、たしかにそうですね。顔を合わせることは大切ですが、ただ中身のない宴ばかりしてもあまりいいことにはなりませんよ」


「二条公と山科卿には都を任せた。倅が頼りなくての」


 少し可哀そうになるね。まさか稙家さんから直に聞くとは思わなかったけど、史実の近衛前久である晴嗣さん、どうも彼の評価が芳しくない。


 情勢を甘く見ている。未だに朝廷と自分は害されないと高を括っているように感じる。こちらの分析では、公卿公家や諸勢力の様子を見つつバランスを取っているつもりに思えるが、やることが裏目に出つつある。


 関白である彼が率先して動かないので、公家たちも変わろうとしない。不要な対立の芽になるかもしれないんだよなぁ。人生経験の差だろうけど。


「話は後日に致しましょう。いろいろと詰めねばならぬこともございます」


「そうじゃの」


 とりあえず温泉で旅の疲れを癒していただこう。あと大々的でなくとも歓迎の宴は必要だしね。


 いずれにしろ、京の都から政治を分離するのは必要だ。朝廷がそれを認めるならこちらとしても悪くない。どういう形であれ、過去の決定を覆すのが難しいのが政治だ。


 まして、先例主義の朝廷なら尚更ね。




Side:ヒルザ


 領内から集まった患者の診察をしていると、面倒なところから使者が来た。


「言い分は承りました。ですが、私たちには関わりなきこと。どうぞお好きなようにされるとよいかと」


 思わずため息が漏れる。使者は仁科神明宮の者。


 仁科神明宮を筆頭にした、いわゆる仁科三社が仁科家と揉めている。神明宮の使者は仁科家との関係を見直したいとのことで助力を求めてきたけど、なんで私たちが寺社の後ろ盾にならなきゃならないのよ。


 仁科家は小笠原家と縁がありつつ因縁もある。小笠原家当主である大膳大夫殿の元正室は仁科の娘であったものの、小笠原が武田と争う最中に武田に寝返った。


 ここまではよくある話なのだけど、紆余曲折の末に大膳大夫殿が織田に降ったことで形勢が一気に逆転した。


 武田は信濃から手を引き、真田などごく一部以外は独立した。当然、仁科も。


 新たに入った織田では、信濃において国人を直臣として召し抱えていない。基本的に小笠原家の家臣として面倒を見るようにしている。例外は尾張望月家に吸収された信濃望月家くらい。


 小笠原家は守護であったものの、小笠原と国人衆に上下関係と言えるほどの力の差は小笠原領とされる地域しかなく、信濃全体ではせいぜいまとめ役がいいところだった。


 その小笠原家の家臣となるか、独立を維持するかで揉めたところが仁科になる。


 越後と信濃を結ぶ千国街道を押さえ、仁科三社を影響下に置くなど中信濃ではそれなりの勢力を誇っていたけど、織田は基本として関所の設置は認めていない。


 実入りくらいは保証するけど、関所の税に関しては利権が複雑であり仁科三社の利権分などは渡していないわ。


 もともと小笠原や仁科の所領だった松本平の周辺は水問題などもあり、多くの場所で田んぼが作れず原野が広がっていた。仁科とすると関所を失うのは力の源泉を奪われることになり抵抗が強かった。


 さらに正室を出しておきながら小笠原から武田に寝返ったことも、臣従をためらう理由だった。大膳大夫殿は表向き他と同じ扱いをすると明言したが、小笠原家家臣たちは居城を失った戦犯のように思っている者もいて決して歓迎されていなかった。


 そんな混乱の最中、当主仁科盛能が亡くなった。もともと体調が優れないとのことで暗殺などではなく病であったようだけど。寝返りをした当主が亡くなり、織田と戦う意思もない。格差がすぐに見え始めたこともあり、仁科に返されていた元正室の仲介もあって仁科は小笠原に臣従した。


 そこまではいい。先にも上げたけど、よくある話。実際、小笠原家中では冷遇されているけど、率先して働くわけでもないので私たちも口を出す気もない。


 ところが、そこから仁科一族と影響下にあった者たちが内輪揉めをしている。新当主は変わり続ける状況で家中を統制出来ていないのよね。


 金の切れ目が縁の切れ目と言えば言い過ぎかしらね? 特に仁科三社など、影響下にあった寺社が仁科から距離を置き始め、仁科家と揉めているのが現状よ。


 仁科神明宮は伊勢神宮の末社。伊勢神宮の仲介もあり織田に従うことで話が付いたんだけど、冷遇されている仁科と縁を切りたいとコソコソと動いていたのよね。


 まさか、私のところにまで根回しに来るなんて思わなかったわ。私たちは特定の寺社を庇護しないと明言していたのに。


 神宮に倣って行っていた式年遷宮も混乱で止まったままであり、再開する援助を求めてきたし、あそこも結構面倒なのよね。


 松本平のあたりは開拓をしたい候補としてあるけど、仁科のように在地の者たちが安定しておらず、手が付けられないでいる。


 奥羽だと季代子たちに反発していたけど、それがなくなると内輪で争うのよねぇ。結局、落ちるところまで落とさないと駄目なのかも。




メインでの活動はカクヨムです。

もし、私を助けていただける方は、そちらも、よろしくお願いします。

カクヨムにて『オリジナル版戦国時代に宇宙要塞でやって来ました。』と『改・戦国時代に宇宙要塞でやって来ました。』があります。

『オリジナル版』は、2151話まで、先行配信しております。

『改』は言葉、書き方、長期連載による齟齬などを微修正したものに、オマケ程度の加筆があるものです。

なお、『書籍版』の加筆修正とは別物であり、書籍版の内容とは違います。


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書籍版戦国時代に宇宙要塞でやって来ました。

第十巻まで発売中です。

― 新着の感想 ―
[良い点] あけましておめでとうございます! [一言] 変わろうとするところと落ちていくところが明確にわかれてきましたね……
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