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戦国時代に宇宙要塞でやって来ました。  作者: 横蛍・戦国要塞、10巻まで発売中です!
永禄二年(1556年)

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第千五百七十三話・その頃、都では……

Side:広橋国光


 年が明けたものの主上のお怒りは解けておらぬようだ。表立って口にはされぬものの、吾ら公卿にお心を開かれておらぬ。


 元極﨟(ごくろう)殿を筆頭に蔵人らと連なる公卿や一族の者は、心落ち着かぬ年始を迎えておろう。


 困るのは、良いのか悪いのかは別にして、尾張がこの件について特に口を出す気はない様子であることか。いっそ不満をぶちまけてもっと罰しろと言うてくれたほうが、こちらは動けるのだがな。


 口を出したとていいことがない。尾張ばかりではなく、畿内とて武士らは左様に朝廷を避けるのだ。今まではそれでよいと吾も思うておったが、捨て置かれておる間に世が変わってしもうては困る。なんとも難しきことよ。


 今後はこの件に限らず、こちらから尾張に声を掛けて話をしていかねばならぬ。斯波も織田も官位や権威を得ると畿内に巻き込まれ、銭と献上品を求められると疎むほど。致し方ないとはいえ、こちらに非がないとも言い切れぬ。


 ああ、近衛公や二条公と話をして、書物の写本はもっと皆に声を掛けて励むことにした。とにかく写本を増やして後の世に伝えるものを残さねばならぬ。これには馴染みの寺社にも声を掛けた。


 返答は様々であるが、写本ならばと力を貸してくれる者はおる。


 対価やら面目やらと、なにも出来ぬ現状で唯一懸念なく進められることなのだ。こちらがやる気がないと思われると困ることになる。


 さらに大樹が六角と三好を従えて尾張の味方をしておるからな。下手なことをすると朝廷を揺るがすことになってしまう。いや、吾ら公卿と公家が困ると言うべきか。院と主上は尾張に大義があれば吾らを見捨てかねぬのだ。


 問われておるのだ。吾らは主上や院、ひいては日ノ本にとって望まれる存在であるのかと。


 今まで変わらずおった故、これからも変わらぬと思うのは間違いであろう。


 難儀な世になったものだ。




Side:久遠一馬


 新年のイベントは烏賊のぼり大会だ。


 これは盛り上がるけど、織田家としての支出があまりないという意味では優秀なイベントになる。観桜会もあまり持ち出しはないけど、花火大会と武芸大会は相応にお金が掛かるからね。


 領民に娯楽を与えるという概念はこの時代あまりないからね。ただ、こういうイベントをやることでいい影響はいろいろとある。


 ただねぇ。


「上方からの流れ者です。子供を攫って売れば銭になるとしか考えていないようでした」


 先日、かおりさんたちが子供を攫った現場を押さえたんだけど。警備兵による尋問の結果報告がセレスからあった。


 こういう事件はよくある話なんだよね。織田領では身元がはっきりしない相手からは人買いをしないように分国法で定めてある。この時代で人身売買の禁止なんて出来るはずがないものの、売る相手と買う相手はきちんと吟味させている。


 人身売買、嫌なんだけど禁止したら捨てるか殺すだけなんだよね、余った子供を。それに禁止したとしても長期雇用として契約とか抜け道を作るのは分かっているので、そこを取り締まるには労働環境まで法で決める必要が出てくる。まあ、無理だね。やっと領内だけでも飢えずに治めている段階なのに。


 人身売買はこの時代なりのセーフティーネットなんだ。食わせられない子を食わせられる人が買う。代わりのセーフティーネットを構築しないうちは手を付けられない。


 ただ今回の件で問題なのは、流民や流れ者は織田の常識と法も知らない。また学ぼうとも守ろうともしない人が相応にいることだ。


 体裁としてこの時代でも御成敗式目のような法はある。とはいえほとんど有名無実化しており、織田でも守っていない条文が幾つかあるほどだ。


 一言で言えば、故郷を追い出された者や村のようなコミュニティから外れた流民が、一定数いる。上の命令を守るという考えのない人も当然いるんだよね。


 元の世界とは違う。最低限のモラルも法律もない時代だ。なにをやってもやったもの勝ち。そんな人がそれなりにいる。


 今回の犯人はちょっとした臨時収入程度の気持ちで迷子を攫って売ろうとした。悪い事という概念すらあまりない。こういう人が多いから、領内の商人や寺社には身元の怪しい者が女子供を売りに来た場合は警備兵に通報することを命じているくらいだ。


「真面目に働く気がない人はどうしようもないよね」


 賦役で一年真面目に働くと、正月にはお餅とお酒とちょっとしたご馳走は食べられるはずなんだ。ところが賦役に参加しないで用心棒とかアウトローな恐喝や強盗をして日銭を稼いで暴れる人がいる。


 真面目に働かない流民や流れ者は追放しろという意見は評定でも定期的に上がるほどだ。


 人口調査をしているので、出身地と名前とか把握しているんだよね。もっと単純に流れ者は言葉のイントネーションが違うからすぐに分かるし。


 ああ、先日の犯人は磔だそうだ。神聖な寺社の境内で人攫いとかタチが悪いとこの時代だと判断する。まあ、この時代だと死罪が割とよくあるので珍しくもなんともないけど。


 尾張なんかだと領民の意識も変わりつつあり統治体制が整いつつあるので、そこまで酷い犯罪は減りつつあるんだけどね。他国他領との格差はこういうところでも影響が出ている。


「ちーち! ちーち!」


 さて、気が滅入る話はそこまでにして烏賊のぼり大会の見物に行く。


 子供たちは空に浮かぶ烏賊のぼりに興奮したように喜ぶ子もいるほどだ。妻たちと孤児院の子たちもいるので相変わらずの大人数での移動と見物だね。


 今年の特徴は上皇陛下がご覧になることか。ただ、貴賓席とかは設けていない。そもそも会場も運動公園と周辺で割と勝手に揚げているだけだし。警護とか傍仕えの人とかいるけど、お忍びで見るような形に近い。


 さすがに帝がお忍びは難しいようだけど、親王殿下や上皇陛下だとケースバイケースだそうだ。本人の御意向を第一とする。蔵人解任以降ではそれが基本となっている。


 領民とお祭りをご覧になりたいという要望だしね。貴賓席で囲ってしまうと見える範囲が限られちゃうし。あとお忍びでの行動。これも一概に悪いとは言えないところもある。


 尾張だと晴具さんと具教さんは、常に少人数のお供だけを連れて行動されるけど。それで北畠家の名誉と権威が落ちたかというと、そんなことはなく、むしろ権威が上がっているようにも見える。


 山科さんはそこらを知っている人でもある。慣例は大切だけど、上皇陛下の面目と権威が傷つかないなら柔軟に対応する。


 まあ、山科さんが働けば働くほど尾張では前蔵人の評価が落ちるんだけどね。公家としては痛し痒しだろう。




書籍版・戦国時代に宇宙要塞でやって来ました。

六月十三日発売になります。


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書籍版戦国時代に宇宙要塞でやって来ました。

第十巻まで発売中です。

― 新着の感想 ―
[一言] 補陀落渡海。。。 海の向こうの極楽浄土。。。 上皇が久遠島いったら、言いそう。。。
[一言] 貧困で育てられない子供の人身売買については、勝手にやらせずに役所に話して買い手と売り先をきっちりして身元調査するようにすればいいと思う。 金銭の受理に関しては役所は金をとらずに双方を呼んで…
[一言] 都もいつまでも旧態依然としていては、世の中の流れに置いて行かれてしまいますからね…。 あの不届き者、一罰百戒ではないけど罪と罰を世に広く知らしめたほうが良いかと。 烏賊のぼり、絵をかく人…
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