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戦国時代に宇宙要塞でやって来ました。  作者: 横蛍・戦国要塞、10巻まで発売中です!
天文16年(1547年)

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第十四話・火縄銃と蕎麦

side・久遠一馬


 発砲音と共に火薬の焼ける臭いが辺りに充満していた。実はこの日は朝から信長さんが、悪友のワルガキたちを集めて火縄銃を撃たせてるんだよね。


「ふむ。確かに訓練は必要のようだな。費用を考えると、どうかとは思うが」


 きっかけは信長さんの疑問からだった。素人と訓練した者では火縄銃の命中精度がどう違うのか、具体的に見たいと言い出したんだ。


 信長さん自身を含めてオレや小姓に悪友たちばかりか、エルたちまで火縄銃が撃てると知ると撃たせて比べたけど、結果は一目瞭然だよね。


 まともに撃てたのは、オレとエルたちに信長さんだけだった。


 小姓の勝三郎さん、後の池田恒興さんまでも撃った経験がないらしく最初はダメだったんだ。


「前に早く飛ばす訓練はするべきでしょうね」


「ところで、お前の持ってきた鉄砲は便利だな」


 ちなみに信長さんが驚いたのは、肩に当てる銃床と肩から掛けるベルトに取り外しが可能な銃槍。そんなに難しいことでも画期的な物でもないけど、この時代の日本にはないんだよね。


「南蛮ではこんな形の物があるんですよ。日ノ本だと鎧が邪魔で、使いにくいかもしれませんが」


「鎧か。これでは使い物にならないのではないか?」


「鉄砲を大量に抱えて撃つ人なんてまだ居ないでしょうから、当面は大丈夫ですよ」


 それと信長さんの命令で古い鎧を的に撃ってみたけど、見事に貫通して使えないことが判明した。分かっていたことだけど、火縄銃相手に考えると鎧って意味なくなるよね。


 既存の鎧よりは気持ちマシな南蛮鎧を作るべきか? まあ、追い追いだな。


「いいか。こうしっかりと肩に当てるんだ。中途半端なことをすれば怪我をするからな」


「こら! お前! そんな撃ち方じゃ怪我をするぞ!」


 ところで。いつの間にかジュリアとセレスが、皆さんに火縄銃の撃ち方指導してるんだけど。いいのか?


 ワルガキとはいえ所詮はまだ子供か。歴戦の勇士みたいな迫力のあるジュリアとセレスには素直に従っている。実際あの二人は火縄銃も普通に上手いしね。




「ところでかず。お前それは何だ?」


「ああ、これですか? お昼は蕎麦にしようかと思いましてね」


 信長さんも二人が火縄銃を撃つのが上手いのを理解してるからか、女性が教えてるのを見ても特に問題視しないで見守ってる。


 ただ信長さんの興味を引いたのは、オレとエルとケティで蕎麦打ちの準備をしてる光景だった。


「蕎麦か」


「美味しいですよ」


 蕎麦自体にはあまり反応が良くない。何でだ? 美味しいのに。


「蕎麦を麺にするのか?」


「ええ。蕎麦と言えば麺では?」


「いや、聞いたことがないが。素麺ならば食ったことがあるが」


 あれ? 蕎麦って時代劇でやたらと食ってるイメージあるけど、この時代一般的じゃないのか?


「若様。西国にある小麦の粉を麺にした、うどんなる食べ方があります。これは蕎麦の粉に、その小麦の粉を幾らか混ぜた物なんですよ」


 どうやらこの時代だと蕎麦と言えば麺ではないらしい。エルがうどんを例えに説明してるくらいだし、一般的ではないんだろうな。


 というか結構人数が居るから、蕎麦を打つのも一苦労だ。オレは元々蕎麦打ちは素人だよ。趣味で少し練習したから、見た目がそれなりに打てる程度でしかない。


 蕎麦打ちの中心は万能型アンドロイドのエルがやってて、オレが手伝いケティが蕎麦を切ってる。


「味付けは醤油か? 似た物はあるが、お前の物は別格だな」


「蕎麦のつゆは、また別格ですよ」


 蕎麦つゆもちゃんとかえしから作ってる物だ。鰹節とか、この時代にはない物も使ってるから他じゃ真似できないだろう。


「へ~。こりゃまた不思議な料理ですね、若」


「すげえ。いい匂いがする」


「うめえ! なんだこれ!? こんなの初めて食ったぞ!」


 集まったメンバーは、大半が農家の二男や三男とかそれ以下で、家の手伝いでなんとか食ってる連中らしい。


 蕎麦自体は珍しくないようだけど、麺にした蕎麦は初めてらしいし、塩と味噌以外の調味料も大半が食べたことはないのだろう。


 信長さんと小姓の皆さんは、うちに来た時に醤油で味付けした料理を何度か出してるから、醤油系の味つけに多少は慣れてるけど。


 礼儀作法とか気にする人は居ないし、初めはみんな好きなように食べてる。


 ただオレたちが本来の蕎麦の食べ方で食べてると、いつの間にかみんな真似してたけど。


「蕎麦はともかく、つゆは銭が掛かってるな」


「まあ、それなりには」


 騒いだり慌てたりしながら食べる皆さんを尻目に、信長さんは蕎麦つゆの味に普通じゃないと気付いたらしい。


 この時代だと料理に砂糖とか使わないんだろうしな。鰹節は確か未来にあったような物とは製法が違うはず。


 さすがに出汁をとる文化は戦国時代にもあるみたいだけど、一般的じゃないみたい。信長さんは食べられるんだろうが、他はねえ。


 出汁の利いたかけ蕎麦をすすって食べてると、つい懐かしくなるね。昔は立ち食い蕎麦とかよく食ったからさ。


「菓子は蕎麦団子になります」


「これは甘くて美味いな。これも醤油か?」


「はい。砂糖醤油で味付けしました」


 そして食後のデザートは蕎麦湯とみたらし風蕎麦団子だ。


 蕎麦団子はあるみたいだけど、甘い砂糖醤油のみたらし団子はみんな初めてみたいだね。


「この白湯は?」


「蕎麦のゆで汁です。蕎麦が溶けてますから、身体にいいんですよ」


 栄養的にも蕎麦湯は飲まないと勿体ないしね。


「かず。出掛けるぞ」


「若様。どこに行くんです?」


「川に行くぞ」


 食後には満腹で、昼寝でもしたくなるような心地よさなんだけど、信長さんは早くも動き始める。若いっていいね。




――――――――――――――――――

side・織田信長


 やはりかずたちは違うな。何から何まで。


 食事に関してもかずたちは一日三食を食べるらしく、昼頃には食事を出してくれる。


 それにまさか蕎麦を、あれほど美味しく食べるとは。


 砂糖は安くはならんかもしれんが、醤油は尾張で造れぬものか。似た物はあるが味が全く違う。


 酒造りが上手くいけば、次は醤油を造ってもらうか。


 足りぬ。何もかもが。


 日ノ本は貧しいのであろうな。


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書籍版戦国時代に宇宙要塞でやって来ました。

第十巻まで発売中です。

― 新着の感想 ―
[気になる点] 展開遅すぎる。完結10年後かなぁ
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