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戦国時代に宇宙要塞でやって来ました。  作者: 横蛍・戦国要塞、10巻まで発売中です!
天文17年(1548年)

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第百二話・伊勢守家の決断

side:織田信安


「やはり駄目か」


「はっ、申し訳ありませぬ」


「よい。分かりきっておったことだ」


 弾正忠家との交渉は不調か。


 当然だな。向こうからすれば伊勢守家を降す絶好の機会。ワシが弾正忠殿でもすぐには返すまい。


 今の弾正忠家には勢いがある。伊勢守家を叩くには今が最適。農繁期なので戦をするのはどうかと思うが、考え方を変えれば今ならば今川も斎藤も動く可能性は低い。


「そろそろ決めねばならぬな。従うか、戦うか」


「殿。もし戦うならば美濃の斎藤家と同盟するのも一つの手かと」


 単独では勝てまい。美濃の蝮と組むか? だが蝮が信頼できるのか? 主人を平気で暗殺する男だぞ。今川の方がまだ信頼できるが、今川はちとまずい。


「いっそ当家が仲立ちして、斎藤家と今川家と三家で同盟をしてはどうじゃ?」


 三家の同盟か。同盟がなれば、確かに弾正忠家に対抗できよう。


 だが今川はまずい。


「そう都合よく同盟を受けるか? それに今川は守護様の仇敵のようなものぞ。そんな同盟を打診してみろ。守護様まで敵になるぞ!」


 そうだ。尾張の先代の守護様が没落したのは、今川家が守護様の遠江を奪ったのが原因だ。今の守護様とていい感情は持ってはおるまい。


 名ばかりとはいえ守護様は守護様だ。伊勢守家から守護代の職を取り上げられ、弾正忠家を新たな守護代家に任命すれば、弾正忠家と戦う大義名分すら消えてしまう。下手をすれば、弾正忠家に臣従することを強要されかねん。


 それに本当に弾正忠家と戦をするとなった場合、皆は戦う気があるのか?


「ふん! 虎だの仏だの騒がれても、運がいいだけではないか! 信秀の首はワシが取ってやるわ!」


「たわけ! 兵の数が違いすぎるわ!」


「なんだと!?」


「止めぬか、どちらにしろ一戦交えねばなるまい。たかが愚か者一人の問題で、戦わずして降ったとなれば、末代までの恥。戦に負けて降ったならまだ諦めもつく」


「確かに、降るのは仕方ないにしても、このまま降るのはな」


「ちょっと待て。戦をして家が残るのか!? 大和守家は滅んだのだぞ!」


「そうだ。弾正忠が伊勢守家を残すとは思えん! 今なら所領を大きく減らすまではできんはずだ」


 家中は割れたか。戦を望む者。戦を望まぬ者。徹底的に弾正忠家と戦うべきだと言う者。力を温存して降るべきだと言う者。バラバラだな。


 徹底抗戦を叫ぶ者は小領の者が多いな。伊勢守家の行方よりも手柄を欲するからか。手柄さえ立てれば弾正忠家に従っても生きていけると考えたのだろう。


 どうする? 義兄殿に勝てるか? いや、勝てなくてもよい。伊勢守家の力を見せつけることはできるか?


「そういえば、噂の南蛮崩れの金色砲とやらはどんなものなのだ? 雷を呼び城を焼き尽くしたと噂だが」


「分かりませぬ。ですが清洲が一夜と持たずに落城したのは確かです」


 気になるのはもう一つ。清洲城を僅か一日で落としたことだ。


 雷の神が味方しただの、南蛮妖術を用いただの、訳の分からぬ噂ばかり聞こえてくる。


 事実とは思えぬが、清洲城が一夜で落ちたのは確か。


 戦をせねばならぬか。


 ここで戦わずして降れば、臆病者や愚か者のそしりを受けよう。


「美濃とも今川とも同盟はせぬ。弾正忠殿が戦を望むならば応えようではないか」


「はっ」


 割れておった家臣たちも一応従ったか。だが内通や離反に気を付けねば。


 一戦交えて勝てば流れも変わる。負けたら籠城してまた考えればよい。


 命までは奪われぬであろう。




side:久遠一馬


 尾張は戦の話題で持ちきりだ。信秀さんは戦をするとはまだ明言してないけど、戦になるとみんな思っている。


 庶民は戦の名目や大義名分より、弾正忠家と伊勢守家の戦でどちらが勝つか話題にしてるみたいだけど。今のところ弾正忠家が優勢だという噂が多いらしい。


「物価が上がり始めましたね。米・雑穀・塩・味噌など値上がりしてます」


「戦になると踏んだ商人が、ひと儲け企んでるわけか」


「岩倉が兵糧を集め始めたことで、一気に値上がりしたようでございますな」


 まあ戦はいいんだ。仕方ないし戦力的に問題ないから。


 問題は物価が無用に上がったことだ。ただ資清さんの忍びの調べでは弾正忠家の領地はまだマシで、岩倉の領地の方が値上げ幅が大きいらしい。


 岩倉が戦の準備を始めたからだろう。弾正忠家はまだ動いてないけど、領境を事実上封鎖したからね。


「弾正忠家の領内で特に値上がりしておるのは清洲でございます。あそこは人が多いのと、大和守家が無くなったことで損をした商人が多いですからな」


 この日ウチでは、オレとエルたちに資清さん一益さんに太田さんを交えて物価と戦の話をしている。


 清洲の事情に詳しいのは太田さんだ。元々守護の斯波義統しばよしむねさんの家臣だったからだろう。


 太田さんは細かいところによく気が付くし、勉強熱心だ。ウチのやり方はこの時代の武家とも商家とも違う独自のやり方だけど、太田さんは資清さんに付いてよく勉強してるんだよね。


 伊達に史実で信長さんが側近にしたわけではないようだ。


「物価が上がるのは困るんだよね。せっかく領内が安定したのに」


「弾正忠家は籠城は考えなくていいので兵糧も銭も十分あります。しかし家臣の方は微妙ですね。あまり計画性がないようですから」


「土豪なんてそんなものでございます。無駄に誇りだけは高いので、商人の言い値で兵糧の売り買いをいたしますから」


 現状ではどちらかと言えば、戦そのものより物価の話の方が重要だ。


 需要と供給のバランスで物価が上がるなら構わないが、この時代だと流通が未熟すぎて、商人たちの思惑で物価が変動しちゃう。


 まあ武家も困ったら商人に矢銭を出させたり徳政令出すから、気持ちは分からんでもないけどさ。


 それと困るのは家臣の領地経営だ。どんぶり勘定の無計画経営が割とよくあるらしい。


 弾正忠家程になれば、まだ文官も居るしそこまで無計画じゃないみたいだけど。商人に上手いこと高い兵糧を買わされたら、借金になってしわ寄せは領民に行くことになる。


「殿に献策するか」


「兵糧は弾正忠家で一手に用意する方がいいでしょう。私たちで安いところから買い入れできます」


「商人の方は津島と熱田の商人には、その話を流せば宜しいかと。商人達も値が下がる前に放出するなり、対策ができますからな。恩を売れましょう」


「清洲の商人は些かやり過ぎでございますからな。痛い目を見た方がよいでしょう」


 乱取りと刈田狼藉は今回も禁止した方がいいね。後始末が大変になるだけだ。


 戦の兵糧も一般的に最初の三日は各自で持参して、それ以降は動員した人が出す慣例があるらしい。ただし戦費を節約するには、弾正忠家で用意する方がいいんだろう。


 家臣にどの程度負担させるかは信秀さんが決めるとしても、無駄な戦費は掛からないようにしないとな。


 岩倉は近いし、ついでに補給と輸送のテストもできるか?


 無駄に物価を上げた商人には痛い目に遭ってもらい、悪質な人は今後要注意人物としてマークしないと。


 それにしても清洲の併合から半年も過ぎてないのに、岩倉の併合は早すぎるな。やっと清洲が安定して上手く纏まり始めたのに。



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