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知らない天井だ。物語なんかでよく使われるセリフがふと浮かんだ。
「どこだ、ここ?」
と自分がいつのまにか寝ていた高級そうなふかふかのベッドで寝ていた。そのことに驚きつつも、起き上がり、周りを見てみるとかなり広い部屋の中に高そうな家具が置かれていた。
「えーと、一回落ち着こう。まず状況を整理しよう。確かじーさんが働くとか意味わかんないこと言い出して、そっからランク1位だとか言い出して、俺を知り合いに預けるとか言って、俺が反論してたら殴りかかってきた、と。おーけー意味わからんがじーさんには絶対3倍返しすると、そこからはこの部屋に運ばれてきたと思うんだが・・」
とそこまで言っていると部屋の扉の外から気配がした。すぐに一人の男が入ってきた。
「やあ、起きたんだね、琉君」と言われて、
このタイミングで入ってくるってことは・・・。
「やっぱり、あなたがじーさんの言ってた知り合いって奴ですか?」と確信をこめて尋ねる。
すると、男は少し驚いたような様子で、
「そうだけど、いきなり気絶させられて、知らない部屋に連れ込まれたっていうのに、動揺したりしないのかい?」
「別に、そういうことには慣れているだけです。・・・・だって、あのじーさんと10年以上も暮らしてるんですから」
「へえ、ウーさんが言ってた通り面白い子だね、君は」
「え?ウーさんって誰ですか?じーさんの話をしてるんじゃ?」
「そう、君のおじいさんの話だよ。ほら、あの人ウーヌスっていうじゃない。だからウーさん」
ちょっと待て。え、あれって本名だったの?
「待ってください!じーさんの本名ってウーヌスっていうんですか!?」
「ああ、違うよ。正確には称号さ。本名は別にあると思うんだけど、僕は知らないなあ。知っている人なんていないんじゃないかい」
自分の育ての親が本名不詳だった。一緒にいる時はじーさんって呼んでたから興味なかったけど、ちゃんと考えてみると俺、じーさんの名前知らないじゃん!
「自分の育ての親の本名知らなかったのはショックだけど、とりあえず状況説明してもらってもいいですか?」
とこのままでは進みそうになかったので話を強引に切り出す。
「そうしようか。じゃあ、まず自己紹介から。僕は冴島勝臣、35歳で一応ファイフェスの選手だよ」
「冴島さん、ですか。えーと俺のことはさっきの口ぶりだとじーさんから聞いてるようですが一応。立上琉15歳です。」
「うん。君のことは聞いているよ。あのウーさんと体術が互角なんだってね!」
「いや、互角っていうか、まだじーさんには惜しいところまでは行けてても勝ったことはないんですよ」
そうだ。それなのにあのじーさんときたら勝ち逃げしやがって・・・・。
「それでもすごいよ。戦えているだけでもすごいことだよ」
「そこまでのことではない気がするんですが、まあそれは置いときましょう」
またまた話が脱線してきた、そう思ったのでまた少し強引に話を変える。
「で、じーさんは知り合いに俺を預けるって言ってましたけど、それって本当に冴島さんなんですよね」
「うん。そうだよ。ウーさんからは学校にも行かせろって言われたけど」
「学校、ですか?」
「うん。東京異能力育成高等学校ってとこ」
なんか物騒な名前だな。それより、異能力育成学校って、俺は・・
「いや、でもじーさん曰く俺って異能力無いらしいんですけど」
「大丈夫だよ。そこ自体は異能力が無くても入れるから」
「そうなんですか。あ、でも入学試験とかってあるんですか?」
「そこは僕が口利きしとくから大丈夫だよ。しかも、ファイフェスに出る選手を育成する学校だからね、強ければ問題ないと思うよ。それに筆記試験はないし」
「はあ、そうですか。で、学校はいつからなんですか?」
「明日だよ」
「明日?」
俺がとぼけた声を出す。
「そう、明日」
いやいやいや、それはいくらなんでも急すぎやしないか。
「きゅ、急過ぎませんか?いきなり明日だなんて、さっきの入学試験のくだりはどこ行ったんですか!俺、受けるんじゃないんですか!?」
「だから、口利きしとくっていったろ。まあ正確にはもうし終わってるんだけどね」
そう爽やかスマイルと一緒に言ってきた。
「いやいや、それって受かるようにじゃないんですか?それに早すぎますよ。心の準備とか覚悟とか色々まだしてないのに!」
すると、しばらく考えるようなふりをしてから親指を立て、
「大丈夫だよ!君ならできるさ!」
「完璧無責任発言、あざーーす!なんだったんだよ今の間!」
こうなりゃもうやけだ。
「まあ、冗談抜きで、君なら心の準備とかは必要ないと思うよ。この学校は異能力を鍛えるのが主だから強い奴が偉いみたいな世界になってるし、君の実力はもはやそこいらの世界ランカーですら及ばないほどだ。何を準備するのか僕にはわからないよ。だから、気楽にいくといいよ」
「へえ、そうなんですかあ、ってちょっと待ってくださいよ!なんで俺の実力とかわかるんです?」
「ウーさんから聞いたんだよ。どのくらい強いかはウーさんが言ってたことだけど、まあウーさんが言うことだし間違いはないと思うよ」
この人って結構じーさん好きだよな。
「でも、それは異能力を使ってない場合のことですよね?異能力を使われたら俺なんかよわっちいですよ」
そういうと冴島さんはおかしそうに笑いだした。
「あっはははは。琉君、君はおかしなことを言うね。君はウーさんに勝てないまでにしても互角に戦闘することはできるんだろ?」
「互角かどうかはさておき、まあそれなりには戦えますかね」
「ふふ、それなのによわっちいとかあり得るわけないだろう」
「どういう意味ですか?」
「よく考えてみてくれ、いくら強力なミサイルを持っていても、それが当たらないほどのスピードで回避、攻撃されたら勝てると思うかい?しかも例え当たったとしても全然へっちゃらな体を持っている奴にさ」
「流石に例えが大袈裟すぎますって、冴島さん」
俺は何をバカなことをと笑う
「じゃあ君は銃の弾丸は避けられないのかい?」
「いや、その程度だったら余裕で・・・」
「君は弾丸に当たったらけがを負うかい?」
「いや、その程度では・・・」
「はあ、いいかい常識では弾丸など避けられないし、当たったら重傷を負うんだ」
と呆れ気味に言われた。
「ぐっ、でも流石に俺も異能力を使われたら負けますって」
もう意地でもこの主張をやめない。
「はあ、まあもういいよ、そういうことで」
なんかすっごく呆れられた。なんでそんなに・・・。
「まあ異能力どうこうの話は置いといて、俺が言いたいのは能力が無いから学校で浮くんじゃないかってことです」
そう俺は一番の懸念を話す。
「まあ、浮きはするだろうね、確実に」
そりゃあそうだ。異能力を育成する学校に異能力を持ってない奴が来るのなんか不自然でしかない。
「そうですよね、だから・・」
「だがね、君の場合は特別だ。特に問題はないと思うよ。まあ気にしてもしょうがないんだ、覚悟を決めなさい」
何か含みのある言い方をされる。
「はあ、わかりましたよ。」
渋々承知する。
「うむ。それでいい」
と言い爽やかに笑いかけてくれた。
「ああ、そうだ。学校の用意は僕の方で手配しておくから。ああ、後はくれぐれも学校では本気を出さないでくれよ。人が死ぬかもだからね」
さらっと怖いことを言った。
「何言ってんですか!俺をなんだとおもってんですか!?」
「最凶の怪物に育てられた最強の化け物」
「ひどい!」
冴島さんのなかでの俺の評価に傷つく。
「まあ冗談抜いても君は戦闘では本気を出さないでくれ。戦闘では1割程度にしとくんだ!」
鬼気迫る顔で言われたせいで俺は素直にうなずいてしまった
「わ、わかりましたよ」
「わかればいいんだ。じゃあ明日に向けてもう寝なさい。それとこの部屋は自由に使ってもらって構わないから。じゃあおやすみ」
と言って部屋から出て行った。
一人部屋に残された俺はとりあえずベッドに寝転がった。
「はあ、超展開すぎるでしょ。もうついていけねー」
と思考するのをやめ目を閉じた。
「って、俺さっきまで寝てたから全然眠くないんだ」
眠れねー。眠れねーよ。まあ目閉じてれば寝るだろう。いや流石の俺でもそれは無理、だろ、う。
寝た。