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World Adventure  作者: oyj
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第3話

シオンとジョーは、ダンテ村に辿り着いた。

途中でまたモンスターに襲われたが、難なく倒した。

ダンテ村は、ごく普通の村だった。

二人はまず宿屋で、ゆっくり休んだ。


「やれやれ・・・お前ともそれなりの付き合いになってきたなぁシオンよ」

「そうだなー」

モンスターたちが落とした羽や珍しい石などを売って、僅かな金を作る。

その金で多少の食料を買いながら、ジョーは言った。

「やっぱ金を稼ぐには、まともに働くしかねーよなぁ」

「旅って、結構現実的なんだな」

二人はこの村で、働く事にした。


数日後―――

貯めた金で大量の食料と、新しい靴や服・ナイフを揃えた。

そして二人は、考えていた。

魔法使いが心を開くには、信用してもらう必要がある。

何か方法は無いものか・・・

そして、酒場で話を聞いた。

例の魔法使いの村・ティグリ村は、水不足で困っているらしい。

村の近くに通るティグリ川が、上流で大岩にせき止められているようだった。

二人は思った。

その大岩を何とかすれば、魔法使いたちに恩を売れるんじゃないか。


二人はティグリ川の、上流に向かった。

「今度は森かよ・・・」

森の奥深くで、ジョーは言った。

「トレジャーハンターなら、慣れてるんじゃないのか?」

「俺は大体遺跡を探ってきたんだ。人工物のほーが得意なのよ」

「・・・で」

二人の前の前には、身長の三倍はある大岩が転がっていた。

「いやこれ転がってるってサイズじゃねーだろ!」

「さすがにどうしようもないかも・・・」

二人は困っていた。

そこに、先日の魔法使いの老婆が現れた。

「おぬしら・・・」

「あっバーサン!」

「ど、どうも」

「・・・この岩をどかしに来たのかい?」

「そうです」

「この岩はティグリ村にしか通ってない。なるほど、あたしらに恩を売ろうと考えたのか」

二人は焦った。

「フン・・・だがわざわざここまで来たのは褒めてやるさ。どいてな」

老婆は前へ出て、両手を上げた。


「『アースクエイク』!」

老婆の声と共に大地震が起こる。

「きえいっ!」

更に老婆は右手を前に出し、超巨大な火の玉を出して、大岩にぶつけた。

「はあーっ!」

何度も何度も火の玉を出しては、ぶつけていった。

そして遂に、岩にヒビが入った。

「『トルネード』!」

老婆の起こした竜巻で、大岩は崩れた。

竜巻は大岩を巻き込み、ゆっくり消えて行った。

辺りは砂だらけになった。

「す、すごいなぁおばあさん」

「・・・あたしゃヴィオラじゃ」

「これが魔法使いの力か。大したもんだねぇ」

流れ始めたティグリ川の前で、老婆ヴィオラは言った。

「おぬしの眼、信用しても良さそうじゃ。大した協力はできないが、付いてくるがいい」

シオンはヴィオラの後を追った。

ジョーも追った。

「おぬしの事は信用しとらんぞ」

「・・・。」

それでも、ジョーは追った。


再びティグリ村―――

モンスターは、魔法使いを襲わない。

確かにそうだった。

そりゃそうだ、あんなすごい魔法を使うこの人には、誰も勝てないよな。

シオンは思っていた。

「ヴィオラ様!」

魔法使いたちが、次々にやってきた。

「下がっておれ。こやつらは敵ではない」

ヴィオラはどうやら、この村の長らしい。

「さて・・・で、この村に何の用じゃ」

シオンは今までのいきさつを、ヴィオラに話した。

そういえばジョーに話したのも、初めてだった。

「お前の旅ってそんな旅だったのかよ!」

「なるほどのう・・・魔法使いにも、様々な者がおるでな」

「はぁ」

ジョーは蚊帳の外、といった感じだった。

「そう言えば人間たちに滅ぼされたインディス村には、生き残りがいたと聞く」

「え?」

「魔法使いは基本的に中立じゃ。人間を敵対視しているその黒マントの男は、おそらくその村の生き残りじゃろう」

「なるほど・・・その村はどこに?」

「遥か北の大陸じゃ。だが北には強力なモンスターが嫌というほどおるでな。それに滅ぼされた村に、その者が戻るとも思わん。行くのはやめておけ」

「でも・・・そこしか手がかりはないし」

「おぬしの親友が強大な力を持っているのなら、また噂も流れてくるじゃろう」

「うーん・・・」

「おーい」

ジョーはやっと、会話に参加できた。

「とりあえず地図を見て、行き先を決めようぜ」


この世界は大体、五つの地域に分けられる。

ここティグリ村やダンテ村、またポルーとシルフ島は地図の真ん中にある。

世界の中心の地域・ロマス。

ここは最も安全で、人間や動物たちが多く暮らす地域である。

そして北の地域・グレーデル。

ここには主に魔法使いやモンスターと動物が住んでいて、人間は強者しか近寄らない。

「俺は絶対行きたくないぞ!なぁシオン、お前も現実を見ろって!」

ジョーはわめいていた。

次に西の地域・ラーク。

そこは文明発達の地であり、多くの人間の国がある。

また魔法使いも多く暮らしている。

次に東の地域・アルカディア。

古代文明の残る場所であり、人間とモンスターが多く暮らす。

「俺はここから来たんだぜ!遺跡が多いんだ」

最後に南の地域・トッポ。

海や砂漠が広がっていて、生物自体があまり存在していない。

「まぁ大体どこの地域にも魔法使いは少ないんだけどな!」

「で・・・どうするのだ、シオン」

「やっぱ北に」

「馬鹿かてめーはー!」

ジョーは叫んだ。

「俺は西か南に行くぜ!」

ヴィオラは言った。

「北は危険じゃ。行くならば味方を増やすのだ。わしはここを離れることはできぬし、そいつは頼りない」

「・・・誰が行くかー!」

ジョーはイライラしていた。


「そういえば・・・東の国には、斬鬼と呼ばれる男がおるそうじゃ」

「聞いた事あるぜ」

ジョーは語った。

「アルカディアの斬魔・ガルムの息子でガルドって奴だ。人斬りガルドとか斬鬼とか呼ばれて恐れられてたよ」

「その者を仲間にできれば、心強いじゃろう。そおらく現代の人間では最強じゃ」

「なるほど・・・」

「アホかーっ!」

ジョーはまたまた叫んだ。

「俺の話聞いてたのか!?人斬りやら鬼やら言われてる男なんだ、仲間になるかっ!」

「でも、噂なんてわからないよ」

シオンは言った。

「確かに仲間は欲しいし、ヴィオラさんが薦めてくれるなら、東に行ってみよう」

「俺はその東・アルカディアから来たんだぞ・・・俺は西に行くからなっ」

「わかったよ」

シオンは、自立しようと決めた。

「ジョーには本当に色々と世話になったな」

「世話しまくりだっちゅーの!」

そして二人は、村を出た。


「近くの町までなら、わしの『ワープ』で送ってやる」

「じゃあポルーに」

「俺は西の『パルテ』ってとこへ頼むぜ」

「うむ・・・準備は良いか?」

「ジョー、また会おうな」

「・・・死ぬなよっ!」

「ゆくぞっ」

ヴィオラの移動魔法で、二人はそれぞれの目的地へと瞬間移動した。



東の地域・アルカディア―――

ジェノたちがやって来る随分前に、時間はさかのぼる。

そこで新たな物語が開かれる・・・


ジゲン村。

山の中のこの村で、彼は育った。

ガルド。

長い黒髪は全て逆立ち、忍者のような服を着ている。

父は最強の剣豪・ガルム。

斬魔と恐れられ、多くの人間を斬ってきた。

だが斬ってきたのは悪人ばかり。

それでも人間たちは、彼を忌み嫌った。

「・・・親父」

幼い頃より、ガルドは父と二人で暮らしていた。

父の死後、村人たちの目はより一層ガルドを睨みつけた。

ガルドは父の骨と刀と握り飯を持って、静かに村を出た。


「人切り丸」。

父の使っていた刀。

ガルドにもまた、才はあった。

彼は感じていた。

自分にもいつか、人を斬る時がくるだろう。

彼は父の骨を村の近くのトーデ丘に埋め、木で墓を作った。

「親父、俺は旅に出るぞ。あんたを越えてやる」

ガルドは刀を持ち、旅立った。

まずは近くの町に行こう。


アルカディアの町・カザフ―――

「おい、あれは」

「あいつは・・・見た事あるぞ」

「あの野郎のガキだ!」

町に着いた瞬間に、五人の男に囲まれた。

「おいてめえ!てめえは斬魔・ガルムの息子だろう!」

「・・・だったら?」

「ぶっ殺す!」

父は随分と、多くの人間に恨まれているようだ。

アルカディア中に名をしらしめるほどの人斬りだったのだから。

元は町人の依頼で、一人の悪人を斬ったのが始まりだった。

金を貰って人を斬る、と噂は噂を呼んで、いつの間にか父は大悪党にされてしまった。

不器用な父は弁解しようともせず、悪党退治に来た人間を斬り、敵討ちに来た人間を斬り・・・ジゲン村の人にまで、冷たい目で見られるようになった。

「・・・来るがいい」

ガルドは父と同じく、刀を抜いた。

きっと父は弁解されるよりも、それを望んでいただろうから。

無理に人間とわかり合おうとしなくて良い。

全ての人とわかり合うなんて不可能だ。

それが父の生きた道・自分の生きる道だった。


数分後には、五つの死体が転がっていた。

「・・・。」

ガルドは刀をしまい、町で準備を整え・・・また歩き出した。

そして数日後。

父の時と同じように、噂は噂を呼んだ。

あれからいくつかアルカディアの町を回ったが、その度に襲われ、斬った。

ガルドもやはり、父と同じく刀の達人であった。

彼は僅か数日で、斬魔の息子・斬鬼と呼ばれるようになっていった。


港町・ポルンガ―――

「おい」

「(・・・またか)」

ガルドは疲れていた。

「俺の名はダッジ。父エッジは、お前の父ガルムに殺された」

「・・・だから?」

「父は悪党だった。若い頃から盗賊だった」

「・・・?」

「だが俺には大事な父だったんだ。どっちが善悪かなんかどうでもいい。とにかく俺は、お前と戦いたい」

「・・・そうか」

ガルドは思った。

彼もまた、生きる道があるのだ。

互いの道がぶつかるのなら、避けようとはしない。

ガルドは刀「人切り丸」を抜いた。

「俺の刀、エッジの刀はな・・・『鬼切り丸』ってんだ」

「フン、それは良い名前だな」

「そう・・・だろぉッ!」

ダッジは斬鬼・ガルドに斬りかかった。

「フン!」

ガルドは刀で受け止めたが、何十年も使われてきた刀である。

人切り丸は、折れてしまった。

「喰らえッ!」

ダッジの縦一文字が、武器を持たないガルドを襲う。

ガルドは素早く避け、ダッジに蹴りを入れた。


「俺は・・・鬼だ!」

蹴り飛ばされたダッジを、ガルドは踏みつけた。

「ぐぼっ」

「これが俺の生き方だ・・・俺は鬼だ!」

ガルドは狂ったように、ダッジを何度も踏んだ。

「俺は強い!」

そしてダッジの刀を取り上げ、振り下ろした。

だが刀は、ダッジの眼前で止まった。

「てめえ・・・なぜ」

「・・・好敵手というものは、強くなるのに必要だ」

ガルドは刀を引く。

「なに?」

「思い出したぞ、エッジという名を。父がよく褒めていた。奴は強かったと」

「あ?」

「この刀は貰うが、貴様は生かしてやる。行け」

「てめえ・・・」

「それとも死ぬか?」

ガルドはまた、ダッジの眼前に刀を突きつけた。

「・・・チッ」

ダッジは走り去った。

ガルドは新たな刀・鬼切り丸を得た。

「(こいつも年季が入っているな・・・もっと良い刀を探すか)」

それからガルドは、刀を求めて彷徨った。

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