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World Adventure  作者: oyj
18/19

第17話

勇者たちの長い旅は、遂に終点を迎える。

シオンたちは、魔王城へと辿り着いた。

「・・・遂に来たな」

「ああ。後は奴らを倒すのみだ」

「きっと大丈夫よ!」

ここまでの道中、魔族は次々に襲いかかったが、その全てにかすらせもせずに来た。

勇者たちは、確かに強くなっていた。

「行こう」

三人は、地獄の門番ケルベロス二対の前に出た。

シオンの「サンダーストーム」、ガルドの「大車輪」、リーンの「ビッグウェーブ」により、ケルベロスは倒れた。

一行は門の中へと進んで行く。


青い狼が、巨大なオーラをまとって待っていた。

「ガオオオウッ・・・」

グレイヴである。

彼はジェノに、言われたのだ、「任せる」と。

少しでも多くのダメージをシオンたちに与え、ジェノたちに楽をさせる事が彼の役目。

グレイヴは主人と同じく赤く目を光らせ、牙をむいた。

三人はそれぞれ武器を持ち、構えた。


グレイヴの放つ「サイクロン」を、三人はそれぞれ避けた。

シオンとリーンは協力し、破壊の魔法「ハルマゲドン」を繰り出した。

グレイヴの巨大なオーラは、一気に縮小した。

彼はジェノに力を与えられていた。

グレイヴは「タイフーン」を繰り出し、シオンとリーンを吹き飛ばした。

そして「ハリケーン」が、ガルドに迫り来る。

「・・・フン!」

ガルドは急所を見切り、竜巻を切り裂いた。

そして「絶影剣」で、グレイヴを仕留めた。

「グガアアアッ!」

グレイヴは、倒れた。


グレイヴは10年前に生まれた。

幼い頃に親を失くし、ジェノと出会ってからずっと一緒に生きてきた。

彼にとってジェノは、自分の全てであった。

知能が高く、忠実な彼はまたジェノの右腕でもあった。

またジェノに従う仲間として、シルヴィスとも多少友情が芽生えていた。

彼は最後まで、ジェノに尽くした。

グレイヴの体は、消滅しようとしていた・・・


優しい光がグレイヴを包み、救った。

「シルヴィス殿、お疲れ様でした」

奥に、仮面の男が立っていた。

シルヴィスである。

「お見事です皆様・・・こちらへどうぞ」

シオンたちは無言で、中へと入って行った。

戦う力を失くしたグレイヴは、門の外へ出た。

自分にはもう、この城に居場所は無い。


「ようこそ魔王城へ」

シルヴィスは言った。

「リーン殿、あなたは回復魔法が使えるそうですね。私も練習したのですよ」

「・・・わたしのように清らかな心を持っていないと、うまく使えはしないわ」

「フフフ、心得ておきます」

シオンが、口を挟んだ。

「『ハナを恥らう乙女』が何か言ってるぞ」

「・・・。」

最終決戦の真っ只中、シオンとガルドの緊張が緩んだ。

リーンはキッとそれを睨んだ。

「シオンもしつっこいわね!」


「・・・ガルド殿は左の階段、シオン殿は真ん中の階段へどうぞ。リーン殿はこちらです」

「戦力を分断するのか?」

「それぞれの対戦相手がいるはずです。一気に戦っても、宜しいのですが」

「俺は別に構わん」

ガルドはそう言った。

シオンとリーンも、構わなかった。

確かにそれぞれ倒すべき相手がいる。

一対一の方が、やりやすい。

三人はそれぞれの階段を上った。


ガルドの上った先には、ダークがいた。

「・・・来たか」

「・・・借りを、返しに来た」

ここでガルドは思い出した。

そう言えば、多くの人間の借りを返していない気がする。

この旅が終わったら、まず仲間に借りを返そう。

リーンに5000Gも返してなかったな・・・

最後の戦いだが、ガルドにはまだ心に余裕があった。

ガルドは「真月」と「絶鬼」を抜いた。

ダークのブラッドソードは、赤く輝いている。

二人は互いに走って行った!


ダークは「フレイムブレード」を放った。

ガルドはそれをしゃがんで避けながら、「大車輪」を放つ。

ダークはそれを空中で避け、「キリングブレード」を放った。

ガルドは一歩下がり、一薙ぎした。

ダークは壁に叩き付けられた。

「・・・本気で来い」

ガルドは刀を構えなおした。

ダークは突進し、「ダッシュ斬り」した。

ガルドはそれを両の刃で受け、返した。

そして素早く踏み込み、「無限斬」を繰り出した。

無数の刃が、ダークを切り刻んだ。

そしてダークの黒い鎧は壊れ、中の戦士が出て来た。


「うぅ・・・」

ディランは22歳だった。

幼い頃に弟・ドランと共に竜帝に拾われ、育てられた。

彼はその力の全てをドラナグ帝国の為に使った。

そして国が滅びてからは、ジェノの為に。

彼の一生は、ずっと戦いの中にあった。

「ドラン・・・」

ディランは、何故その生涯をこの魔王城で、斬られて終えなければならないのだろうか。

哀しき運命は、今終わった。

その傍らには、砂漠の秘宝・ダークストーンと、血の魔剣・ブラッドソードが落ちていた。

「・・・。」

ガルドは奇妙友情を感じ、目をつむり軽く冥福を祈ってから、階段を上った。



リーンが階段を上ると、シルヴィスは言った。

「・・・始めましょうか」

シルヴィスはマントをなびかせ、不気味に笑っていた。

リーンは数歩下がって、「シャイニング」を繰り出した。

多くの光がリーンを包んだ。

「ほう・・・さすがだ」

シルヴィスは嬉しそうに、右手を上げた。

「アイスニードル」が、リーンを襲った。

リーンは「フレイムウォール」で、それを溶かし尽くした。

シルヴィスは次々に氷柱や氷の刃を作り出してゆく!

リーンはその全てを溶かし、壊していった。

「何故あなたは、悪の味方をするの?たくさんの魔法使いが、人間に協力してくれたのよ」

そう問うリーンに、シルヴィスは答えた。

「私は魔法使いではなく、古代獣にございます。そして私には、善や悪など関係無いのです。ジェノ様に従っていれば、私はずっと戦える。楽しめる。ただそれだけの事です」

「・・・あなたって最低ね」

「・・・。」


シルヴィスは「ダイヤモンドダスト」を繰り出した。

リーンは「ナパームストライク」を繰り出し、シルヴィス本体を燃やした。

「ギャアアアーッ!」

シルヴィスは倒れ、仮面が転がった。

「・・・ふう」

安心したリーンに、仮面から「アイスドリル」が放たれた。

「きゃあっ」

リーンは覚悟したが、クリスタルが輝き護ってくれた。

「チイイッ!」

「あなたの本体、仮面だったの・・・?」

リーンは魔力を集中し、「エネルギーレイン」を浴びせた。

光の矢が無数に降り注ぎ、仮面を集中砲火する。

「グオオオーッ!」

そして今度こそ、シルヴィスは倒れた。

「・・・よしっ。わたしの勝ちよっ!」

リーンも、階段を上った。


シルヴィスは100年ほど前に、古代人たちによって誕生した。

魔力を増幅させるアイテムだった仮面は、いつしか意思と魔力を持って動き始めた。

世界中で暴れ回り、古代獣たちを支配していった。

その頃のシルヴィスは、確かに強かった。

だが100年もの間封じられ、彼の力は半減した。

彼はジェノへの恩義と、新世界創造への興味だけで動いてきた。

だがそれも、もうすぐ終わろうとしていた。



シオンが階段を上ると、そこにはジェノがいた。

「・・・お前か、ジェノ」

「フン、久しぶりだな勇者殿」

ドランに兄ディランの事を頼まれたが、ガルドならきっと上手くやってくれるだろう。

今は目の前の敵に、集中しよう。

「思えばお前がいなければ、何も起こらなかったんだ」

「だがあの時私が生かしていなければ、お前は今生きていない。いわば私のおかげで、多くの仲間を得てきたのだろう」

「クッ・・・」

「勇者とは名ばかりで、お前の力は小さなものだ。実際はガルドとリーンの絶大な力によって、お前はここにいる」

確かに自分は、今までいろんな人に助けられてきた。

鎧を見て、シオンは思った。

ジョー・・・そう言えば5000G返してなかった。

ガルドと同じ事を、彼も考えていた。

「お前一人ならば、私一人でも倒せるだろう。ガルドとリーンは、ゼットに始末させるとしよう」

ジェノは死神の鎌・デスシックルを出して構えた。

長い銀髪が、揺れる。

赤い目が光って、シオンに迫って来た!


「『サンダーボルト』!」

「『デスライトニング』!」

雷と雷が、激しくぶつかった。

「何!?」

ジェノは驚いた。

計算よりも格段に強い・・・

「『サンダーブレード』!」

雷の精霊・オズマの力を宿した剣は、ジェノのマントを切り裂いた。

ジェノの周りに青紫の雷がまとった。

それを一点に集中させ、ジェノはジョーを倒したあの技を使った。

「『ゴッドバスター』!」

シオンは高く跳んで、それを避けた。

そして放った、竜戦士の技を。

「『ドラゴンダイブ』!」

それはジェノの鎧をも傷付けた!

「グッ・・・おのれ」

ジェノは鎌を回転させ、「デスブラスト」を放つ。

シオンは聖剣スペリオンでそれを切り裂き、ジョーの技「ショックスタン」を放った。

「クッ」

そして動きの止まったジェノに、「レジェンドクロス」を放った。

「クハッ!この私が・・・こんな小僧ごときに・・・」

そしてジェノはシオンを生かした事を遂に後悔し、ゆっくりと倒れた。


ジェノはこの世に生まれて20年、全てのものを見下してきた。

そしてその、他者を見下し過小評価する性格が、遂に仇となって彼は敗れた。

彼は何故私が・・・と、最後までそう思っていた。

歪んだ精神を持つ、真の魔王。

本当の悪は、まさにこの男だったのかもしれない。

悪は今、滅びた。

それを見届けたシオンも、階段を上った。



一方、外の世界では―――

主にドラナグが大いに奮闘し、魔族たちは次々に破れていた。

「シオン、後は君たち次第だ・・・!」

世界の命運は、やはり彼らに懸かっていた。

皆、彼らの無事を祈り続けた。



三人は再び、三階で合流した。

彼らは顔を見合わせ、微笑んだ。

あと一つ。

この最大の試練を超えれば、世界は平和に・・・

シオンは、最後の扉を開けた。

「行こう!」

「ああ!」

「うんっ!」


「皆、やられれたのか・・・」

玉座には黄金の鎧のゼットが、座っていた。

そして、立ち上がる。

「私がこうしてここにいる事も不思議だが、君がこうしてここに来る事もあの頃は考えられなかった事だな、シオン」

「・・・。」

「ガルド、最後まで彼の支援をしてくれて感謝する。君ともまた戦いたかった」

「・・・フン」

「リーン、君とは初めてだな。私が魔王・ゼットだ」

「・・・イーッ」

「私はこれ以上無い程、強くなった。人間の世か魔族の世か・・・世界の未来を賭けて、戦おうではないか」

「ゼット、俺も負けて強くなったぞ!」

皆それぞれ、武器を構えた。

最後の戦いが始まる!


「『エクスプロージョン』!」

ゼットの手元から大爆発が起こり、三人は散らばった。

「『ギガプラズマ』!」

ゼットの体から発せられた電磁波は、それぞれを正確に狙った。

ガルドはプラズマを斬り、リーンの下へ向かった。

シオンもプラズマを斬り、ゼットの方へと走った。

ゼットはシオンの前に立ち、新たな剣技「Z斬り」を放った。

「ぐはっ!」

ゼットの眼は紫に光り、鎧が崩れ羽と尾が生えた。

その姿は、悪魔そのものだった。

「ゼット、もうやめるんだ・・・君は悪魔に」

「私は魔王だ!」

ゼットは火を吹いた。

そして右手を上げ、闇黒魔法「ダークマター」を繰り出した。

空間が闇に破壊され、三人は大ダメージを負った。

「やはり強いな・・・」

ガルドがそう言った時、リーンは全魔力を集中していた。

「精霊たちよ・・・私たちに、力を!」

精霊たちが現れ、ゼットを取り囲んだ。


「何だこいつらは・・・」

人間の心を失い混乱するゼットを、精霊はしっかりと包囲した。

そしてそれぞれの力で、ゼットを封じ込めようとする。

「・・・無駄だ!」

ゼットは「ビッグバン」を放ち、精霊を拡散させた。

『これは・・・』

『我々精霊をも凌ぐこの力。彼は本当に人間か!?』

「精霊共よ、まとめて滅びるが良い!」

ゼットの魔剣「グランハザード」が、空間を切り裂く!

「『カオス』!」

精霊の力は、一気に弱まった。

ゼットの意識が精霊に向いている内に、ガルドは「無限斬」を繰り出した。

「ガルド・・・やはりお前は、強いな!」

だが尻尾でガルドは吹っ飛ばされた。

リーンも「エネルギーレイン」を繰り出すが、ゼットは羽を閉じ、ダメージを抑えた。

「女!甘いぞ!『ブラックホール』!」

闇黒空間が、リーンを包む。

「キャアッ」

「リーン!」

ガルドが飛び込み、それを守る。

ゼットがそれを見ている隙に、シオンは飛び込んだ。

「『レジェンドクロス』!」

「むううっ」

ゼットはダメージを受け、ひるんだ。


そしてシオンは叫んだ。

「ガルド、リーン!君たちの力は、これからの世界で役に立つ・・・」

「何を言っている、シオン!?」

「早くこっちに!」

シオンは聖剣スペリオンを高く掲げ、精霊たちに呼びかけた。

「全ての精霊よ、俺に力を!魔王ゼットを封印する力を、俺に与えて下さい!」

『封印だと?』

「無駄だシオンッ!」

ゼットが突っ込んでくる。

ガルドはそれを、「二天斬」で受け止めた。

「シオン、お前にやりたい事があるのなら・・・俺は止めん・・・!」

「ガルド、貴様ァー!」

ゼットの激しい猛攻を、ガルドは一人で受けた。

後ろから、リーンが回復させている。

シオンは再び叫んだ。

「魔王ゼットは強すぎる!ならば滅ぼすのではなく、封印するしかない・・・俺の体と、この剣と!精霊たちの力を使って、奴を封印する!」

ガルドは言った。

「シオン、お前もこいつと一緒に封印されるつもりか!?」

「ゼットは親友なんだ・・・」

リーンは、泣いていた。

『シオンよ、本当にいいのか?』

「迷っている暇はない!」

『うむ・・・わかった!』

『私たちも協力するしかなかろう』

七体の精霊たちは、皆大きな光となって、聖剣スペリオンに込められた。

「俺は『仲間』を信じてる。後の世界は、任せたよ」

「シオン・・・!」

そして七色の光を放つ聖剣を構え、シオンはガルドを薙ぎ払い向かって来る悪魔に向けて、叫んだ。

「ゼットーッ!」

「シオン・・・ッ!」

そしてシオンは高く飛び上がり、一気にスペリオンを突き刺した。

「ぐおおおーっ!」

ゼットは叫び、封印された。

シオンとゼットの体は消滅し、そこには地に刺さる聖剣が残った。

この時、世界の平和は取り戻されたのだった。


「シオン・・・シオン・・・」

リーンは泣き崩れていた。

「・・・行くぞ、リーン。奴が残した、世界を見届けなければ」

ガルドはそう言って、リーンを連れて外に出た。


外の世界には、人々が集まっていた。

「やったんですね!」

「勇者ばんざい!」

ガルドとリーンは、ゆっくり城の外へ出た。

「・・・。」

「シオン・・・」

こうして彼らの冒険は、幕を閉じた。


神は、全てを見てきた。

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