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頑張ってほしくなかった「がんばれゴエモン」

作者: まつだ

中学1年の春ごろ、僕は「ミスター五右衛門」に夢中だった。土曜日になるとそのスーパーに買い物に行く親についていき、はるか名古屋城を目指していた。

「ミスター五右衛門」はサイコーだった。滑らかに動く表情豊かなキャラクター、操作の心地よさ、テンポのいい音楽、逃げたり攻撃したりを瞬時に入れ替えるゲーム性。どれもこれも最高に面白かった。

しばらくしてファミマガで「ミスター五右衛門がファミコンで発売される」との囲み記事を目にした。その喜びと言ったらなかった。ファミコンなら際限なく遊べる! やった!


そしてあっというまに発売された。夏休みの始まり頃だったか。息せき切って発売日に手に入れて、さっそくプレイ開始!

しかし、そこには「ミスター五右衛門」はなかった。「がんばれゴエモン」だった。平べったい江戸の町を行ったり来たりを繰り返し、なぜか立体迷路をさまよって手形を集めるゲームだった。僕は立体迷路がだいっきらいだったので、それもあいまって絶望的に面白くなかった。爽快さはまったくなく、先を急ぎたい気持にはならない。音楽は似ていた。小判をまき散らすクリアデモも似ていた。

でも、まったく違うゲームだった。なので、部活の先輩から頼まれてすぐに貸した。そして夏休みの終わりごろには3000円で売ってくれ、と言われたのでそのまま手放した。


このあとも何度かこういう手ひどい裏切り(身勝手)と、なにかにつけてゲーセン至上主義を振りかざして、自分の中で嵐が吹き荒れるのだが、この五右衛門はその最初だった。おまけに僕の周りではがんばれゴエモンは話題になっても、ミスター五右衛門はまったく話題にならなかった。それを裏付けるようにゲームセンターからもすぐに消えた。なにもかもが悲しかった。それ以来ゴエモンシリーズは全くプレイすることはなかった。みんな判ってない! 「ミスター五右衛門」はもっともっと面白いんだよ! と思っていても口にすることはなかった。ゲームセンター至上主義者には、こういうやっかいな特性があるのだ。


時は流れに流れて。探しに探して、なんとか基盤を買って遊び倒した。自分の思い出の中にある「ミスター五右衛門」だった。思い出補正なんてまったくなかった。でも、めちゃくちゃ難しかった。名古屋城は遠かった。


そしてPS4で遊べるようになった。やっとみんなが五右衛門を遊べる時代になったのだ。中一の僕に伝えたい。お前が想像もできないようなハイスペックゲーム機とネットワークを駆使して、やっと「ミスター五右衛門」が遊べるようになるぞ、と。

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