殺気
フィナークの手に赤い斧槍が握られたとき、四人の傭兵は恐れを感じて、後ずさりをした。背徳者は、戦いを求める戦士と化した。
「来ないなら、こちらから行かせてもらうぞ」
四人は一斉に散り、陣形を作った。フィナークはあっという間に囲まれた。陣形の中で緊張感が生まれた。四人は手を出さないフィナークに疑問を抱いた。
「なぜ戦わない?」
「魔術戦争に参加したことはあるか?」
フィナークは反応をうかがったが、誰も答えなかった。
「誰もいないのか?」
〈死神使い〉はがっかりだ、と言わんばかりに肩をすくめた。
「では知らないのだな? 魔力は物質を流れることも」
四人の傭兵は痺れを感じ、次に激痛が走って倒れ込んだ。
「ここで流血沙汰は起こしたくないのだ。あの二人を安全に逃がすのが優先目的だからな」
フィナークは斧槍に寄りかかった。
「しかし、魔力を結構使ってしまったな。身体に血じゃなくて、水が流れているようだ」
〝なぜ殺さなかった?〟
「わたしが殺すのは……〈魔術師〉だけだ。それに、あの時のようにはなりたくない」
〝それで、これからどうする? そのまま追いついても足手まといだぞ?〟
「ベルティーナに頼るわけにはいかないか?」
〝逃げるように出てきたからな。まあ、ベルティーナは根に持たないだろうが、代償を求めるだろうな〟
「ああ、よく分かったよ。だとすると……」
フィナークはベルトにつけた小袋から、ドレウと呼ばれる果実を取り出した。ドレウはブドウに魔力を当てて育てたもので、魔界・生命界のどちらでも栽培されている。トゲの生えた皮を剥くと、それを口に入れた。電撃のような衝撃と共に、甘みが広がる。微弱ながらも魔力が流れ込んでくる。
「少しはましになったかな?」
〝我の復活はまだ遠いらしいな〟
フィナークはドレウの果汁で赤くなった舌を出した。
「いずれ〈獅子王〉というごちそうを得られるだろうさ」




