死神アロウド
ミレイシアとホーキンは目の前に現れた魔物に息を飲んだ。それは、骸骨だった。血に濡れた骸骨は深紅の鎌を持ち、漆黒の外套を羽織っていた。それはまさに死神だった。骸骨はカタカタ笑い、戦士たちに飛び上がった。
「ウラド! 早く来い!」
フィナークは窓を開け、跳び上がった。二人は呆然としていたが、覚悟を決めたミレイシアも跳び下りた。ホーキンはしばらくためらっていたが、一人の戦士が死神の鎌を避けやって来るのを見て取ると、仕方なく窓から出て行った。
下にはフィナークが待ち構えており、両手を上げていた。魔力の流れが衝撃を和らげたが、それでもホーキンはしりもちをついた。
「さて、アロウド――あの死神――が獲物を狩っている間に、他の場所を見つけよう。おそらくまだこの周辺に追っ手がいるはずだ」
フィナークはよろめいた。ミレイシアが彼を支えた。
「大丈夫?」
「ただの貧血だ」
〝血の魔力を相当消費したぞ。すぐに得られなければ、ウラドあたりから――〟
「うるさい!」
ミレイシアはこわばった。フィナークは左手に持っている籠手を嵌めた。
「すまない。何でもないのだ。急ぐぞ」
三人はすでに日の沈んだ町を駆けた。フィナークは後ろに四人が尾行しているのに気がついた。このままでは、三人とも追いつかれる。
「ウラド、戦い方は分かるか?」
「護身術くらいしか……」
「それだけあれば充分だ。ここはわたしが食い止める。どこで落ち合う?」
「『竜の寝床』という宿屋で」
「分かった。先に行くんだ!」
二人を先に行かせ、フィナークは立ちはだかった。血が足りなくてふらつく。
「四人いるな? 来るがいい」
薄影のなかから、予想した通り四人が姿を現した。闇に存在感を隠す黒い外套を羽織っていたが、フィナークには、斧や剣が光っているのを見て取れた。四人は丸腰の男一人を簡単に葬ることが出来ると高をくくっていた。
「なぜあの二人を狙う?」
「おれらはあんたと同じ傭兵だからさ、〈死神使い〉。あの二人には懸賞金がかけられているんだ」
「なるほど、単純明快で分かりやすいな」
フィナークは闇に浮かぶ死神の姿を見つけた。その死神の手には、自分の鎌と別に赤い斧槍が握られていた。〈死神使い〉は天に手を伸ばした。アロウドは斧槍をその手に落とし、魔界へ姿を消した。
「もしあの二人を追いたいのなら、四人一斉にかかってくるがいい。単純でいいだろう?」




