秘密を抱えた二人
二人はアミアーリに繋がる丘陵地帯を歩いていた。
「馬車でも使えばいいのに」
「わたしの目は見られればすぐに分かってしまう。だから公共の乗り物は使いたくない。わたしと同伴する者の不運だと思って諦めろ」
「その帽子は目を隠すためのものかい?」
フィナークは黙り込んだ。ウラドは肩をすくめた。しばらくすると殺し屋のほうから話しかけてきた。
「あんたは、人を殺したことがあるのか?」
「へ? そりゃあ傭兵だからね。何人かは」
〈死神使い〉はずんぐりした傭兵に向き直った。
「わたしはあんたが人の命を奪った人間には見えないのだ」
「ほう?」
「あんたは、人殺しの目じゃない」
ウラドはしばらく黙り込んだ。今度はフィナークが肩をすくめた。
「それ以上詮索はしない。わたしも人には言えないことがあるのでな」
二人は黙り込んだまま旅路を進まざるをえなかった。
丘陵地帯を過ぎると、二人の旅人はヴァルティンの首都アミアーリに辿り着いた。この町は魔術帝国が持つ絶望感が見受けられない陽気な町だった。オドランのような吟遊詩人の姿もある。
二人は、とりあえずそこで食堂を見つけ、昼食を取った。二人はその間も無言だった。ウラドは訊きたくなることがたくさんあった。フィナークは食事中でも帽子を外さなかった。それはまだ分かる。だが、彼は右腕だけにしている籠手を外そうともしなかったのだ。それでもウラドは訊かなかった。二人の間には互いのことを訊いてはならぬ緊張感があった。
支払いを終えて店を出たとき、フィナークが足を止めた。
「どうかしたんですかい?」
フィナークはしばらく人だかりを見ていたが、やがて目を逸らした。
「いや、何でもない。それより暗くなる前に宿を見つけよう」
「それだったら、いいところを知ってるよ」
ウラドの案内で、ある宿屋に辿り着くころにはすでに辺りは暗くなっていた。そこは町はずれにある宿屋で、人通りも少なかった。フィナークは明らかに怪しいと思ったが、人目につかないという意味では、ありがたいと思った。
フィナークは宿泊室の寝台に横になると、帽子をずらして眠ってしまった。
「そんなに早く寝るのかい?」
ウラドが聞いた答えは、フィナークの消え入りそうな寝息だった。傭兵は溜め息をついた。この男といると、息が詰まりそうだ。何というか、自然と人の警戒心をかきたてる。たしかに紫色の目をしていて、赤い斧槍を抱えているから親しみは覚えない。だが、彼はそれとは違う人ならざるものを感じさせる。




