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失楽園で眠る者――背徳者編  作者: 陸堂 戒
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『マラクの書』

「おかえりなさい、ラウドゥーンさま」

 〈雷帝王〉は魔導書を神官に手渡した。彼は旅の疲れがどっと出たようにどっかりと座り込んだ。

「どうでした? 我が愛書は?」

「なかなか良かった。ただフィナークには通じなかったよ」

 アスガイクはページをパラパラとめくった。その本は『マラクの書 第二版』。『マラクの書』が書かれてからかなり年月が経て書かれたので本人が書いたはずはないのだが、その内容は原本を超えると言われる。

「わたしはこの文に感銘を受けたのです。『人間とはすなわち魂ある魔人であり、魔人とは魂なき人間である』――人間でも魔人になれると確信したのです。だから――」

「自分の子どもである双子の兄を拷問にかけ、弟に見せつけたと?」

「魂を腐らせ、魔人に近づく必要があったのです」

「生き残った弟を苦しめてどうする気だね?」

 アスガイクは赤紫色の目を細めた。

「わたしが魔王になる!」

 ラウドゥーンは思わず身震いした。アスガイクは狂ったように笑い出した。聖騎士に殺されたあの晩、魄が覚醒した。ベルティーナに瀕死のエシオンを引き渡した。魂は良心との葛藤によって傷つき、精神活動を止めた。わたしは悪魔になる。彼の赤紫色の目は赤みを増したようだった。

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