アルザン
「撃てぇー!」
合図と共に王城の衛兵たちから一斉に火矢が放たれた。戦神は痛みにうめき、剣で王城の壁に斬りつけた。
「フィナーク」
ミレイシアと衛兵がぼろぼろのフィナークを引きずり出した。衛兵が傷を調べるが、驚きの声を上げた。
「傷がどんどん回復している。不死身なのか?」
「不死身じゃないさ。今のは相当危なかったんだぞ?」
「おれはアルザン。おれたち衛兵隊も援護する」
「あの巨人の狙いはわたしだ。わたし一人で……」
「注意を引きつけるくらいは出来るはずだ。その間にあんたは一撃かましてやってくれ」
「死人が出るぞ」
「ああ、おれたちはヴァルティンを守るために命を懸ける。おれたちで王の秘蔵っ子を倒そう」
「……分かった」
フィナークは立ち上がった。
「やはり狙いは心臓だ。心臓は全身に血を送る魔力の源。エヴィレイ、戦神の心臓はいくつだ?」
〝五つだ。胸に一つ、両手の平に一つずつ、踵の腱に一つずつだ〟
「まず狙うのは目だ。視覚を奪う」
アルザンはうなずき、衛兵隊に笛で小刻みに信号を送った。衛兵隊の矢が巨人の頭上めがけて降り注いだ。戦神は再び王城に斬りかかろうとした。
巨人の背後に回ったフィナークが腿をめがけて投石機で魔力の塊を放った。戦神はうめき、片膝立ちになった。フィナークは斧槍で脈打っている踵に突き刺した。戦神が一際響く悲鳴を上げた。
〝ここの魔力は濃い。さすが心臓だ〟
フィナークも濃い魔力を感じていた。足が熱い。魔王のものに変わったばかりの部位は魔力に過剰に反応する。フィナークは足踏みした。そこに出来上がったのは空に浮く踏み台だった。
「足でも物で作れるのか?」
〝そうなのか?〟
エヴィレイも知らなかったのか。フィナークはもう一歩踏み出した。空に浮かぶ踏み台が彼の足に乗った。
「なかなか面白いじゃないか」
衛兵隊たちは度肝を抜かれた。フィナークは空中を歩いていた。彼は空を駆け出し、戦神の手の甲で丸く脈打っている心臓に斧槍を突き刺した。
巨人の腕から力が抜けるのと同時にフィナークも振り落とされた。どうにか空を踏み込み、体勢を整えた。
片腕と片足しか使えない戦神はそれでもなおその闘志が衰えることはなかった。剣を振り回し、フィナークに斬りつけようとした。だが、足下ではアルザンが巨人の腱を狙って斬りつけた。戦神はバランスを崩し、城壁に倒れ込んだ。城壁は半壊した。
〈死神使い〉は再び立ち上がろうとする戦神の手の甲に降り立ち、斧槍を突き刺した。戦神は再び倒れ込んだ。
「最後の一つだ」
〈死神使い〉は巨人の身体の上を駆け、胸に最後の一撃を見舞った。戦神は悲鳴を上げたかと思うと、その姿は砂のように崩れ落ちた。
「終わったのか?」
しばらく流れる沈黙。衛兵隊から歓声が挙がった。だが、フィナークは真剣な面もちで周りを見渡した。




