生きることを選択しろ
「わたしは〈魔術王〉以外から魔力を奪わない」
「頼……む。おれは死んだも……同然だ。だったら、無為に……死にたくない。……だから……おれから……魔力を取ってくれ。あの化け物を……止めてくれ」
戦神の剣が再び振り下ろされた。振り返ったフィナークの目には殺気が宿っていた。その目が鮮血色に染まった。
「暴れんじゃねえ!」
巨人の剣が止まった。エヴィレイはフィナークに起きた変化に驚嘆した。
〝戦神の動きを止めているのは魄から発せられる魔力じゃない。魂から怒りで生まれた霊力を引き出しているんだ〟
エヴィレイの驚きを意に介さず、フィナークはミレイシアから斧槍を奪い取り、戦神の足に突き刺した。高濃度の魔力が彼の体に流れ込んだ。
フィナークは戦神に弾き飛ばされた。その衝撃は相当なものだったが、戦神から得た魔力はそれ以上だった。そう、人間の身体が不安定になるくらいに。
〝このままでは人間の身体は保てないぞ〟
「ならば、くれてやる」
〝今度はどこだ? 内臓はほとんど残ってない〟
「両脚だ」
フィナークの答えにエヴィレイは含み笑いをした。
〝ずいぶん気前がいいじゃないか〟
次の瞬間、フィナークは両足に獣に喰われるような激痛を覚えた。見ると、彼の靴は裂け、中から足は黄金色の鱗に覆われていった。痛みは少しずつ上に昇っていった。
「ふう……」
痛みがおさまると、両脚は魔王のものに取って代わっていた。彼は戦神の前に立ちはだかった。
「その必要はない、ウラド。こいつは高濃度の魔力の塊だ。こいつの力を少しずつ奪いながら、こちらの魔力に変換すれば、片が付く」
フィナークは斧槍で空を薙ぎ払った。それは勢いを増し、かまいたちとなって戦神を傷つけた。戦神の傷口から血が溢れ出す。高濃度の魔力を含んだ血の池があちらこちらに出来上がる。
「だから……生きることを選択しろ」




