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代償
「食い物はないか……」
彼は棒きれに寄りかかっており、相当空腹なように見られた。彼女はテーブルの上にある自分の手をつけていない簡単な食事を指さした。〈死神使い〉はふらふらしながら辿り着き、食事にありついた。彼女は飢えた捨て犬に餌を与えているような気分になった。
「そんなにお腹が空いていたの?」
フィナークは皿から顔を上げ、口に付いたソースを舐めた。
「ああ、胃も魔王のものでな」
「え? 右腕だけじゃないの?」
「遠慮なく訊くんだな」
「あ、ごめんなさい」
「まあいいさ。内臓はほとんど魔王のものだ。色んな〈魔術王〉を殺していくうち、魔王の力を借りざるを得ない。それには自分の一部を捧げる必要が出てくる。まあ、選べるようにはなったことが幸いかな。最初は勝手に喰われたんだから」
「そんなことしたら、全部魔王になるじゃない。あなたはそれでいいの?」
「すでに模索したが、あったのは絶望だけだった。身体が魔王になるよう作り替えられていたんだ。死ぬことも魔王が許さなかった。だが、だからこそ絶望のぬかるみを進もうと思ったんだ。生きていることはすでに一つの正解なんだから。あらゆる可能性はその後から出てくる」
ミレイシアは絶望の壁がもろくなっていくのを感じた。まだ可能性は存在する。
「フィナーク、頼みがあるの」




