〈獅子王〉スレイヴン
フィナークは蜂蜜酒に喉を通した。長テーブルの向かい側には、この城の主〈獅子王〉スレイヴンの姿があった。頬は痩せこけ、目の下にはくまが出来ているその容貌は、一国の主とは程遠かった。彼は鳥を模した冠を被っており、それぞれの指には指輪を嵌めていた。〈魔術王〉ならよく行う虚飾だ。こうして魔力の依代を隠し、敵の〈魔術王〉に能力を誇示するのだ。フィナークの見覚えのある指輪が一つあった。それは渦巻く緑色の宝石が埋め込まれた指輪、魔人イオラスの依代だ。スレイヴンはイオラスと契約している。
「よくぞ宰相のホーキンを連れてこられた」
「彼は復帰するのかね?」
「それなんだがな……彼がこの城に連れてこられたとき、反乱軍に入ろうとしたのだろう? 優秀だったのに残念だ。彼は反逆罪で〈罪人の塔〉へ連れて行かれるだろうな」
〈獅子王〉は蜂蜜酒を口に流し込んだ。その手は震えていた。おそらく〈死神使い〉の突然の訪問に戸惑いを隠せないのだろう。フィナークは溜め息をついてみせた。
「なあんだ。わたしが連れてきたのは宰相ではなく、罪人だったのか」
酒を飲み干したとき、スレイヴンが切り出した。
「ところで、衛兵の報告によれば、ホーキンを連れてくる以外に用事があったようですが」
〈死神使い〉は空になった酒を長テーブルの上に置いた。
「では、仕事の話をさせていただこう」
スレイヴンは身をこわばらせた。フィナークはそのようすを楽しみながら続けた。
「陛下は政敵が多いでしょう?」
「誰に雇われたのだ?」
〈死神使い〉はさらに口が輪郭から溢れ出んばかりに笑みを浮かべた。
「いえ、あなたに雇われようと思いましてね」
「わしに?」
「ええ、あなたがお望みなら、反乱軍でも皆殺しにしてみせよう」
「……何が望みだ?」
「さすが話が早い。わたしが出す条件は、〈罪人の塔〉の秘密だ」
「秘密?」
「とぼけられるほど巧みに隠しきれているとは思えんが。わたしの見立てだと、狂戦士の軍団を作っているんじゃないですか?」




