三分の一の
「ね、もし自分が持つ愛情を分割出来たら誰に渡す?」
「分割、というと?」
「愛を三つに分ける、みたいな」
「ああ、そういうこと」
学校帰りに立ち寄った公園のベンチで、隣に座る小山がそんなことを口にした。
自分の持つ愛情、というものがどれくらいの大きさで、三つに分けたときそれぞれがどんな分け方をされるのかはわからないがここは等分としておこう。
「小山はどうすんの?」
「うーん、まずは家族でしょ?」
「まぁ、俺もそうかな」
頷いて、実際に家族に愛を渡すところを想像してしまって身震いした。わざわざ「愛を渡します!」なんて宣言してから渡す姿が瞼に浮かんでしまった。なんて拷問じみた恥ずかしさなんだ。
「二つ目が悩むんだよね」
「二つ目? じゃあ三つ目はもう決まってるってこと?」
「あれ、決まってないの!? 酷くない?」
裏切り者! とでもいうように小山は眦を吊り上げたが、一つ目ですら決まってなかった俺に何を期待しているんだ。というかなんで三つ目が決まっていて二つ目は空白なんだよ。
「なんかわからんけど悪かったよ。で、なんで三つ目が決まってんのに二つ目に悩んでんの?」
その質問でうまく気を逸らすことが出来たらしく、二の腕をつねっていた細い指が離れた。
「だってさ、友達に渡すとしても友達いっぱいいるじゃん。誰か一人に渡すなんて無理だよ」
「そんなこといったら家族に渡す分だって一つ限りなんじゃないの? そういうことなら家族の中から一人選ばなきゃいけないことになるぞ」
「あ、そっか。なら一つ分をみんなで分けてもらおうかな」
「小山の交友関係だと砂粒くらいも残りそうにないな」
「それくらい友達いるんだからしょうがないよ。あ、でも山崎くんが友達に渡す分は大きそうだね」
友達少なくて悪かったな!
こいつは人の痛いところを無遠慮に突っつく奴だから困る。少々憮然と眉を寄せた。
「家族友達であと一つはどうすんの?」
「ええ!? それ聞いちゃうの? 聞いちゃだめだと思うんだけどなぁ……」
ちらっちらっと俺を見る眼球を潰してやりたい。フリじゃないからな! みたいなちら見にイラッとくるが、これもこいつの特性だ。
ちょっとだけ顔を赤くしてるのが癪だが、とりあえずその期待を裏切ってやることにした。
「俺は三つ目は恋人さんに渡すかな」
「えっ……」
ショックを受けた表情になったがそれも無視。
「家族にも友達にも三分の一を更に細かくした愛情なのに、恋人さんはまるっと一つって凄いよな。ホント愛されてる! って感じで」
「ぁ、うぅ……その……」
「それで三つ目はどうなのかな。俺の恋人さん?」
「うぁうぅぅぅ……その、私も同じ、です」
「それは良かった」
こんな風に、よくわからない話を振るときは、大抵何か恥ずかしい言葉を言わせようとしているときだ。やられっぱなしじゃ男じゃないよな。色んな意味でさ。
「えへへ、顔真っ赤だよ」
「うっせ」
そりゃお互い様ってもんだよ、バカ。
こんな経験してみたいです。妄想丸出しでごめんなさい。




