教育塔にて
この学園はとても広い。僕の向かっている教育塔へは、さっきまで僕のいた教室からは、徒歩で15分近くかかる。僕と同じように、委員会や部活動の入部試験を受けに行く人達が周りにはたくさんいる。
教育委員会ってこんなに人気だったのか。僕の勝手なイメージだが、人に教えるのが好きな、物好きくらいしか、入らない、暗くて少人数の委員会だと思っていた。
そんなことを考えていると、教育塔が見えはじめ、教育塔に到着した。
教育塔の入り口にはたくさんの人が集まっている。
…募集人数が少ないのに、この数の人が教育委員会希望者だと思うと、入れるか不安になる。何でこんなに人がいるんだ、この学園にはどれだけ教師ごっこをしたい奴がいるんだ、と心の中でだけ文句を言ってみる。楽しくないのでやめた。
ここにいても、何も始まらないので教育塔に入ろうとすると、
「桜麻慶一くんだよね。」
誰かに名前を呼ばれた。振り返ると、1人の女子生徒がいた。真っ黒な長い髪をたなびかせて、ニコニコしている。
「情報部の部長がお呼びだよ、私について来て。」
突然何を言い出すのかと思ったが、返事を待っている様子なので、
「僕はこれから教育委員会の入社試験を受けるので、また今度にしてください。」
と手短に返答した。すると彼女は教育塔の方へ駆けて行き、
知り合いだったのか教育委員長と僕の方を指差し、何か話している。
少し話した後、彼女は満足そうに頷き、こっちに戻ってきた。そして
「教育委員会の入社試験断って来たから、行こうか」
と笑顔で言った。
何を言ったのか理解できなかった。