ななかいめ
---【強気な女の子が先生に恋をしてしまう】
賢者と騎士はバーガー店で向かい合い携帯ゲーム機のキーを叩く。「テスト前なのに」「そんなのを気にするとは思わなかった」「数学だから」俯く騎士の耳朶は微かに赤く染まっている。「先生の事は関係ないからね」「聞いてないって」 @
---【アトランティス大陸】
「とにかくあの二人どこに飛ばしたのよ」誤魔化すように騎士は顔を上げて賢者に聞く。「星屑画廊だけど」「ちょっと、全然先のマップじゃない!」「アトランティス大陸に近くてある程度レベル低い処、と思ったんだけど…」「全然低くないわよ」 @
---【君は天使】
「LV10にも届いてない子が次の大陸にいける訳ないでしょ!ハイイロウサギの格好の餌だわ」「あれ可愛いよな、女王に似てて」「そうそう。あまりに可愛いからペットにしちゃった」賢者と騎士ははたと顔を見合わせる。「やばい!」二人の声が重なった。 @
---【韃靼そば茶】
「どうしよう、モンスターと間違えられて狩られちゃったら」「他の奴のペットにされちゃってたらもっと面倒くさいな」「冷静に言ってるんじゃないわよ!」セットの韃靼そば茶をずずずーっと吸い込み騎士は紙コップをテーブルにだん!と叩きつける。 @
---【水墨牡丹】
「どうするの、このまんまじゃ女王を探すことすらできやしない」「大丈夫だよ、女王は首に目印をつけてただろ?」「そんなのつけてたっけ?」「首に、墨で描いたみたいな牡丹の、ほら」「あの和風のバンダナみたいな?レアモンスターと区別つくかしら」 @
---【ポタージュスープを一緒に】
ちょっと待って、と騎士を制し賢者は立ち上がる。そのまま1階へ降りてやがて保温カップを2つ手に持って帰ってきた。「ほい」「…悪いわね」「ドリンク一杯で居座り続けるのもね」騎士は蓋をとって、湯気の立つポタージュスープに細く息を吹きかける。 @
---【爪先】
「携帯ゲーム機での捜索には限界があるね」ゲームの画面を覗き込みながら賢者は宣う。「俺21時に戻るからさ。ONしたら一緒に探しに行こう」「あんたバイト終わったんじゃないの」「うんでも俺寝てないから」騎士は無言で賢者の脛を革靴の爪先で蹴っ飛ばした。 @
---【お喋りな胡桃割り人形】
「いねえぞ」草原の中央、長身の男が呟く。女王の特徴は既に伝えてあった。「…ん?」その声に僕は顔を上げる。奇妙な声を上げてハイスピードで近づいてくる、彫刻のような──「何だありゃ」それは自宅の食器棚の奥に眠っていた胡桃割り人形に似ていた。 @