モンティ・ホール問題
《数学者》は先ほどの決闘に関する考察を誰かにしたかった。
ところが彼らの名誉のために喋るわけにはいかない。
そこで気晴らしのため友人である《普通》にまた違った問題を出してみることにした。
「アメリカの有名なゲームショー番組であったことなんだけど聞いてくれるかしら」
「ゲームショー? 日本でいうフレ○ドパークみたいなもんですか」
身も蓋もない。
「そんな感じね。その司会者モンティ・ホールの名前から取った問題なんだけど。A,B、C三つのドアがあって、そのどれかに新車、ヤギ、なにもない、があって新車のドアを選ぶとそれが貰えるの」
「パジェロ! パジェロ! とタワシ! という感じですね」
彼女の例えはいつも俗っぽくていけない。
《数学者》にはこの友人であり妹のように思える《普通》の少女があまりに無知なのを本気で心配する悪癖があった。
《普通》は彼女のそんな不安を知るよりもなく、いつもしまりのない顔をしているのだが。
「挑戦者が一つのドアAを選択した後、司会者が残りのドアのうちヤギがいるBドアを開けてヤギを見せる」
「ふんふん、それで」
「司会者モンティは挑戦者に最初に選んだAドアから残っている開けられていないCドアに変更してもいいよというの。そこで、問題。挑戦者はドアを変更するべきかしないべきか」
《普通》は腕組みをして考えはじめた。頭を抱えて耳から蒸気がプシューと吹き出ている。
感覚的に1/3の確率から1/2になったように思える。
だから、変更しようがしまいが確率は同じ1/2のままだと考える。
《普通》の少女なら尚更この考えにはまるだろう。
「う~ん。扉を変えます、たぶんそっちのほうが2倍当たると思います」
《数学者》にとっては予想外に彼女は正解を言い当てた。
確かにこれは直感的に確率は変わらないように思える。
だが、新車がもらえる確率はそれによって2倍となるのだ。
つまり、最初に選んだ時のAの正解率(新車)は1/3。
しかし、残されたCドアの正解率は2/3となる。
一見ヤギを見せることによって分母が減りA,Cともに1/2になったと考えてしまう。
それがこの問題をややこしくさせている原因だ。
最初のAは選んだ時点から実は確率を変化させていないのだ。
残されたふたつのドアに新車がある確率は2/3のままなのである。
そして、その状態でハズレをみせれば、残されたドアに確率が集中する。
つまりAは1/3とBは2/3である。
そのためドアを変更した方が正解率は2倍になるというわけである。
感覚的にわかりやすいのは、ドアの数を増やして考えること。、
これがもし100の扉のうち99のドアが行き止まりの壁だったとしよう。
最初に握ったドアノブの先が正解かは1/100である。
すると、それをあける前に答えを知る者が現れて、他の98のドアを開けてしまう。
残されたドアはふたつだが、果たしてそれは1/2だろうか。
答えを知る者が意図的に残したのが99/100の確率で正解というわけだ。
これは米紙を騒がせた問題である。
「どうして、わかったの?」
《数学者》は彼女のフツーの考え方というものが理解できなかった。
彼女はあっけらかんと。
「答えを知る人というのは、たぶんイジワルだと思ったんです」
IQ228の天才、マリリン・ボス・サバントは新聞のコラム「マリリンに聞く」で「モンティ・ホール問題」について投書を受け、「ドアを変更すると景品は2倍の確率でもらえる」と回答。
一万通の抗議ハガキを受けるという反響を受けたが、後に彼女の正しさは証明されることとなった(理論としても番組の統計データからも)。
ちなみに彼女はIQの高さギネス保持者。
IQの平均は100前後。120あれば大体は天才として扱われる。
アインシュタイン博士とホーキング博士のIQは160。
アクション俳優のアーノルド・シュワルッネッガー氏はIQ135。
かなり高い。