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トルエル

 ある日《数学者》は校内の運動棟で決闘の審判を頼まれた。

 《鉄棒》《フェンシング》《早撃ち》の三人からである。

 何でも下らない言い争いで三人は決闘することになったらしい。

 最初は銃で決闘することになったが実弾でなくエアガンへと変更された。

 ちょうどその時、たまたま近くを通りがかった《数学者》が三人から立ち会いを頼まれたわけだ。

 三人が決闘前、的に試し打ちをしたところ。

 《鉄棒》は三回に一回標的に当てることができ。

 《フェンシング》は三回に二回あて。

 《早撃ち》は百発百中であった。

 公平に決着をつけるために《鉄棒》《フェンシング》《早撃ち》の順に一発づつ撃つことになった。

 《鉄棒》は最初にどちらを撃つと勝つ確率があがるのか。

 《数学者》は考えた。

 もし弾を《フェンシング》に向けて撃ったとして、仮に当たったとすれば。順番を繰り上げられた《早撃ち》によってもたらされるのは、完全なる敗北である。

 なら狙うとしたら消去法で《早撃ち》となる。

 《フェンシング》の場合を考えると《早撃ち》は《鉄棒》よりも自分フェンシングを危険視するはずだ。

 そのため当然フェンシングは《早撃ち》を優先的に撃つ。

 外すと百発百中の《早撃ち》は《フェンシング》を優先的に撃ち抜くだろう。

 一見この状態だと《鉄棒》は最初に《早撃ち》を狙うことでしか勝ちを拾えないように思える。

 だが、もっといい方法がある。

 《数学者》は審判に立ちながらそれに気づいた。

 それでも決闘が終わるまで終始黙っていた。


 もし仮に《数学者》が《鉄棒》だったなら最初の一発を空に向かって撃っただろう。

 なぜなら《早撃ち》目がけて撃ち、当たってしまった場合、彼の勝率はガクリと下がる。

 それを避けるには《早撃ち》と《フェンシング》を二人で潰し合いさせればいい。

 二巡目にはどうせどちらかが倒れている。

 残った方を撃てば良いのである。

 三人での決闘の最初の一発を撃つのでなく、二人による決闘の最初の一発を撃てば良かったのだ。


 決闘の結果は《早撃ち》の勝ちで終わった。

 世の中とは確率通りにはいかないものだと《数学者》はためいきをついた。

有名なゲーム理論のひとつですのでご存じの方も大勢いらっしゃると思います。


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