天文学1
「紀元前453年に太陽は直径一五〇キロほどの、赤熱した岩であるとする説をとなえた人もいたよ。ギリシャの哲学者アナクサゴラスっていう」
《天文学者》は普段科学第七棟である天文学棟にこもって宇宙を観測している。
時折、部室から出てくるとこうして一気に話をしてくる。
《普通》はこの時になると、決まってボタンを押すだけで相づちを打ってくれる機械を切望した。
「ふ~ん、それでその人はどうなったの」
「世論をまどわすといわれてアテネから追放された」
世知辛いなぁ。
「金星の動きを予測するのは細緻を要するの、でも古代マヤ人は年間十四秒の誤差でその軌道を計算したんだよ」
「でっていう」
スゴイけど「それで?」という感じだった。
「昔の人の話もいいけど、今の宇宙についても語って欲しいかなぁ」←話題転換。
「今一番期待しているのはブラックホールが崩壊したのを観察することかな、新しい発見の宝庫になるんだけど」
彼女は窓から半身乗り出して、足をパタパタ振る。
「だからいつでも観測データ残せるように準備をして待ってるんだ」
まるで誕生会に呼んだ友達を玄関で待ち受けるように、彼女は空を眺めていた。
明日には空が落ちてくるのではないかと、死ぬまで不安に思っていた男が中国にいたという。
杞憂の語源だが。《天文学者》にとっては逆らしい。
「ブラックホール崩壊しろぉぉ~」
《天文学者》はなにやら天に向かって両腕を掲げ、思念波らしきものを送る。
なんとなく楽しそうなのでつられてやってみる。
「崩壊しろ~」
やがて、うしろで見ていた《物理学者》《数学者》《生物学者》も参加しだした。
五人で思い思いに願掛けをする。
それを傍目で見ていた二人。明石教諭と先輩は、呆れ調子で、
「今年は何か大予言のたぐいがあったかな」
「マヤの予言ポポル・ヴフにおいては2012年12月21日に世界が終わるとかなんとか」
ドイツ東部の牧師は黙示録がはじまり世界の終わりは1533年10月18日と予言。しかし、なにも起こらず町の人たちに袋だたきにされた。
アメリカでは1831年、宗教家ミラーが12年後の4月3日に世界が終ると予言。その話術力で何千人ものアメリカ人を信じこませた。信者は所有物を使ったり、他人にやったりしてその日を迎えたが何も起こらなかった。
彼は真の審判の時は翌年の10月22日だと訂正。再度信者達は結成したが何も起こらず、ついには見放された。
のちにミラーは所有物を何一つ手放していなかったことが判明した。
1999年7月には恐怖の大王が降ってくるという、有名なノストラダムスの大予言があげられる。
1999年8月1日、なぜか日本の出版社、講談社「マガジン編集部」では朝から問い合わせの電話が殺到したという都市伝説がある。(未確認情報)