奇妙なノーベル賞
「ノーベル賞って頭のいい人がもらう賞ですよね」
「頭がいいかどうかは定義に入っていない、人類に貢献したかどうかが受賞の理由となる」
「それを世間一般の人は頭がいいと表現するんですよ」
模範的な解答しかしない先輩に≪普通≫は不満げだ。
「まぁ確かに川端康成の国境の長いトンネルを抜けると雪国であったの名文はバカには書けない。だが、バカは受賞できないからといって頭のいい人間が必ずしも受賞できるものでもない」
「ふーんでも、なんかその言い方だとノーベル賞に関してなにかご不満でもあるみたいですねぇ」
先輩が言葉をはっきりと言わないときは何か思うところがある時だと≪普通≫は察していた。
「そうだな、バートランド・ラッセルの受賞についてかな」
「へぇ、それはどーいう人なんですか」
やはり、何かあったらしい。
「彼は数学、哲学に優れ、論理学者としてはアリストレス以来と呼ばれ従来のパラドックスを体系づけた」
パラなんとかは知らないが、なんとなくすごい人だというのはわかる。
「ん、でもそれだと、そーいう人が受賞するのは当たり前のことじゃあないんですか?」
「彼のすごいところは、それだけ数学、哲学、論理学に貢献しながら。1950年に受けたノーベル賞が文学部門だったということだ」
「……それは人類に貢献する内容の本だったんですか?」