表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
32/36

アルス・マグナ

「大いなる技法アルスマグナとは錬金術において、神に等しい超人を生み出すことを目指した思想なんだよん」

「相変わらずそういったオカルティックな話がお好きですねぇ」

 《普通》は適当に相槌を打った。

「あら、それは虚数の概念を初めて示した本と同一のお名前ですわね」

 《数学者》が横からわってはいってきた。

「おや、そいつは知らなかったねん。それってなによ」

「16世紀にカルダノが出版した算術技法の本ですわ。その中には足して10、掛けて40になる二つの数はなにか。これはその当時では「解なし」でもその本では「5+√15」と「5-√15」が答えであると示されましたの」

「現代数学では簡単に解けるねん、中学校までなら解なしが正解だけど」

「ええ、でもそれが虚数を持ち出せば答えのない問題でも答えが出るという概念を生んだのです」

「それに関してカルダノさんはなんて言ったんです」

詭弁的カズィスティックであり、数学をここまで精密化させても実用上の使い道はないと、書物ないで発言してますわ」

 自著で自重していたらしい。

「デカルトでさえも否定的に捉えましたの。それを想像上の数字ノンブル イマージナルと呼び、-の平方根は図に描けないとさえ揶揄しましたわ」

「我思う故に我あり(コギト エルゴ スム)で知られるデカルトでさえも批判したわけかよ。でもノンブル イマージナルという言葉。なんだか虚数イマジナリティ ナンバーの語源っぽいのは皮肉めいてるねん」

 それはさすがに事実無根の平方根だろう。

「このようにして虚数は出発点から否定的に受け止められてましたの。この子が数学会で市民権を得るにはオイラーという大数学者をまたなければなりませんでした」

「あの、ひとついいですか」

 《普通》はそっと手を挙げた。

「はい、なんでしょう」

 《数学者》はやさしく微笑み返してくれる。

「もうすでにアルス・マグナとかいうの錬金術と全く関係がなくなってないですか」

 なんか魔法っぽい話からいつのまにか数学の話になっている。

 《数学者》は取り繕うように上品に手のひらをポンと打つと、

「ええっと、つまり、その、虚数こそが大いなる技法といえるんじゃあないかしら」

 強引にまとめられた。 

 ついでに「アルスマグナ」の著者、ジェロルモ・カルダノの父親はレオナルド・ダヴィンチの友人のひとり。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ