細菌学者の独り言2
一本の骨が二か所同時に折れたとしても複雑骨折ではない。それは複合骨折。
折れた骨が皮膚を突き破って、細菌感染の危険があること、それが複雑骨折なのだ。
なにが「複雑」かというと医者の治療手順に関してなのだ。
特効薬の英名は Magic bullet 直訳すると「魔法の弾丸」
ウェーバーのオペラ「魔弾の射手 Freikugel、Zauberkuge」も英名は同じ。
抗体がまるで「魔法の弾丸」のように自ら標的を見つけ出し殲滅することから。
それを名付けたエールリッヒは化学と細菌学を結びつけ抗生物質発見に寄与したのだ。
ヒ素の化合物は有毒で知られているが、当時最も毒性の少ないヒ素化合物は「アトキシル」「無毒」という意味である。これを使い、分子構造を加えたり変えたりしながらエールリッヒは様々な実験を行った。
1908年、多数の有機ヒ素化合物実験に対してエールリッヒの助手は「なんの効果もしめさなかった」と報告。
その2年後、日本の留学生が彼の元で同じ実験を行うと「アピロヘータ(梅毒の一種)を殺した」と報告。この薬はそののち「サルバルサン(安全なヒ素)」と名付けられたのだ。
それから25年後にサルファ剤が発見され、抗生物質発見へと繋がっていったのだ。
病気と戦う化学薬品と、抗体を含む血清の開発者として彼の業績は偉大であり、これからも多くの命を救い続けるのだ。