春と出会いと、それからそれから。
「高校生活って、なんか全部がキラキラして見えるよね?」
そんな気持ちをそのまま物語にしました。
主人公の春彦は、ちょっと不器用で、ちょっと空回りしがちで、でも誰よりも青春に憧れている少年です。
彼が桜の下で出会ったリヴィとの関係が、これからどう変わっていくのか。
あなたもぜひ、彼の“新しい春”を見届けてください。
中学の頃は災難続きだった。
クラスじゃ浮くし、部活は散々。
おまけに好きな子には、こっぴどくフラれるしで、
もうどうしようもない学校生活だったよ。
……だけど、今日からは違う。
「なんて言ったって高校生!憧れのスクールライフが僕を待っているんだ。」
スニーカーを固く結ぶ。
全身に力が駆け巡る。
「最終チェック、いってみよー!!」
姿見の前に立ち、上から下まで確認する。
「髪良し、面良し、剃り残し無しっと、あとは―――」
鏡の前で口角をニカッと上げた。
「笑顔良しっと!!準備は万端だな。」
カバンを背負い、後ろに向かってこう言った。
「いってきまーーす!!」
***
スニーカーのかかとを鳴らし、桃色に染まった並木道を歩いていく。
「うわぁ、桜咲く春ってこういう感じか。キレイだな~。」
パシャパシャと、目の前の光景を写真に収めるくせ毛の少年。
―――そう、まぎれもなく僕である。
「これから毎日ここを通るのか、しかもあの人たちと一緒に……。
うわぁ、楽しみだ~。」
周囲には、同じブレザーを着た少年少女達。
これから始まる学校生活、皆一同に胸を躍らせている。
当然、僕もその筆頭であるのだが。
「確か今日の予定は、入学式だったか?持ち物は筆記用具と、
学生証………は確か右ポケットに入ってたはず。」
確認ついでに、ポケットの中身を確認した。
―――が、
「あ、あれ?無い、無いぞ?さっきまで右ポケットにあったはず……。」
続けて左ポケット、胸ポケット、カバンを探すがどこも見つからない。
必死になって探すほど、不安の色が濃くなっていく。
《うそだろ?よりにもよって、高校の入学式前なのに!
これじゃあ、中学の二の舞いだぞ?!》
「ど、どうしようっ。どこにやっ―――」
「あの~、もしかして “やまだ はるひこ” さんですか?」
緊張がピークに達したとき、前方から声が掛かった。
「へっ?」
顔を上げるとそこには、翡翠の目をした少女が立っていた。
「そうですけど……どうして名前を?」
そういうと彼女は、ポッケに手を入れ。
「これ、さっき落としてましたよ。」
差し出されたのは、見覚えのある水色の手帳。
もれなく写真とフルネームつきだ。
「そ、それ、僕の学生証です!!」
彼女からおずおずと受け取り、我が子の様に抱きしめる。
「よかった~!!ほんとに見つかって!!」
「ふふふっ、喜んでもらえて何よりです。」
少女はまるで、聖女のような微笑みをたえている。
瞬間、心拍数の上昇を感じた。
ここ数年来、ご無沙汰だった感情が、熱を帯びて一気に膨れ上がる。
「それでは―――」
「待ってください!!」
気づいた時には、その背を呼び止めていた。
「名前っ、なんて言うんですか?」
ピタッと止まる彼女。
金糸のような長髪が、風に乗って煌めいた。
それから、クルリと振り返り、
「 “百合園・オドネル・オリヴィア” です。リヴィって呼んでくださいねっ。」
パァ~っと、周囲に花が咲く。
満開の桜にも負けない、美しく可憐な一輪花。
僕の青春の一ページが、華やかに彩られていく。
「リヴィさん、か……。」
彼女が行った後に、一人でポツリと呟いた。
「同じクラスになれたらいいな。」
そんな言葉が飛び出した、今日この頃だった。




