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ルッキズム死ね。でも美少女にはなりたい。  作者: :)
第二章(3/1に全話投稿予定)

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8/30

もっと普通の美少女TSがしたかった

うおー!ファンタジーやっていくぞー!

うおー!

【提案(201×年4月◯日18時25分提出分)】

201×年4月◯日17時45分、神奈川県□市△駅構内にて"吸血姫の存在"が確認された。

これを踏まえ、同月×日に予定されていた『吸血姫一派残党掃討作戦』は中止にすべきというのが、私の率直な見解である。

「それでも、弱っている今叩くしかない!」とのたまう強硬派が一定数いることは理解している。

だが、彼らには是非、"十二回目降臨"の際に我が国が被った"142万人もの死者"という甚大な被害を思い出してほしい。

かの力は…、



【201×年4月◯日 臨時会参加報告】

…□□首相の強い後押しが決定打となり、作戦は予定通り決行されることになった。

愚かだ。

奴らは"エスタファノの血種"を根拠に出していたが、アレはまだ未完成なのだぞ?どうして奴らは我が国の命運をそんなものに全ベット出来る?

これだから政治家は嫌いなんだ。我々官僚の方が何十年も同一の仕事と課題に向き合ってきたプロなのだから、お前らスポークスマンはしゃしゃり出なければいい。ただ国民のご機嫌取りだけしていればいいんだ。それなのに、どうして…。

…あぁそうだ。吸血姫残党による略取被害者の捜索及び救出はSATの協力をあおぐことにした。

これだってため息だ。

たった60数名の無実の人々の命だけで恐怖の大王の腹の虫が治まるのなら、それでいいじゃないか…。





急いで現場から離れる輸送車の内、細々と会話をするSATの隊員たち3人に囲まれて、僕はガタガタ震えていた。

今に助けられた実感もなく…。



 …


4月×日、早朝。


「…料理長。それで、主様はまだ食事を取らないと仰っているのか?」


頭に二本の角と背に翼が生えた高身長細身の男…、名を『ガーネット』と言う彼は、今に銀のお盆を携えて主の私室から出てきた、下半身が大蛇な女に尋ねる。


「えぇ…」


ヘビ女はお盆に載せた、腕によりをかけて作った『お夜食』…、新鮮で柔らかい赤子のムネ肉を挟んだサンドイッチと、若い男女20人の肝臓を濃縮した栄養満点ジュースを悲しそうに見つめる。


「どうしてかしら…?今までの主様なら、いつだって嬉しそうに私の料理を食べてくださったのに…?」


悲しみに耐えきれず、反抗期の娘を持った母親のようにさめざめと泣くヘビ女。


「あぁ…主様…!遂に私の未熟な腕に愛想を尽かされたのかしら…!?でも、ここで諦めては取り立てられた者として不敬…!もっと大勢の人間を使って作った至高の一食で信頼回復のチャンスを…!」


「いや、それは止めておいた方が良いだろう」


昂ぶるヘビ女にガーネットは言う。


「我々は少々この街で暴れ過ぎたきらいがある。恐らく、人間は既に行動を始めている。…最悪、この国に居るという、『御三家』なる強力な討伐チームが対処にあたるかもしれない。その場合、主様が万全でない我々が無傷で勝利することは難しい。…最悪の場合、私も降臨せざるを得ないだろう」


「…!なら、これは貴方が食べて?たとえ主様が直接口をつけてくださらなくても、貴方に食べてもらって英気を養ってもらえるなら、間接的にでも、主様のお役に立てることになるから…!」


「…あぁ、そうさせてもらおう。少しでも主様のお役に立ちたいのは私も同じだ」


笑顔を取り戻したヘビ女に、ガーネットは優しく微笑む。

しかし、彼の心は一方で穏やかでなかった。


(…しかし、今の主様の、あの人間のような態度は、果たして一括りに記憶の混濁だと言えるのか?もしや、死者を蘇らせる『復活の儀』に何か失敗があったのか?)

(…いや、有り得ない。我々は最も安全な手段を取ったはずだ。あの儀式が失敗だったなど、万が一にも有り得ない。それこそ、有り得るのだとすれば、主様が"こうお考えになられた場合"しか…)


二人の足音が長い廊下の奥へと消えた。



 …



『主』の私室。


正確には、異形のモノ数十名により占拠された、神奈川県K市K山の中腹にある高級レストラン二階のVIPルーム。そのベランダ。


そこにて、『吸血姫』と呼び慕われる僕は死んでいた。


目の前には見慣れた故郷。尻にはデッキチェア。肌には吸血鬼の侍女らに着せられたネグリジェ。そして、背後にはその侍女らの気配。ただし、彼女らは吸血鬼らしく部屋の隅、日陰に隠れている。


デッキ下、丁寧に手入れされた庭園に目をやると、監視役なのであろう、頭がタコの怪人がこちらの視線に気がついて、笑顔で両手を振る。ここから脱出しようとすると、アイツが悲しそうな目をして僕を取り押さえる。


これは経験談。

軟禁されている僕の、一昨日の体験談。


「…」


ここに連れてこられて、既に数度日が沈んでいた。


その間、僕の脳は何度もぐちゃぐちゃにかき乱された。

あの、ガーネットとかいう冷血漢が目の前に現れる度に、怒りと悔しさでいっぱいになって、自分でも何言ってるか分からない程の罵声を撒き散らして暴れた。気持ち悪いヘビ女が『料理』を持ってくる度に、胃が空っぽになるまで吐いた。


それなのに、奴らの方が悲しそうな顔をするもんだから、たまったものじゃない。


被害者は僕だよ馬鹿野郎。


コイツ等一体何なんだ?


人間じゃないことは確か。


そんな奴等のアジトが、どうしてよりにもよって僕の住む街にある?


何故簡単に人を殺す?


何より、吸血姫って何だ?


復活の儀って何だ?


僕は一体何だ?


「あの、主様…?あまり長く日の光を浴びられると、お体に障りま…」


「うるさい」


『吸血姫』の身を案じた侍女の一人が、僕の一言に異常な程ビクビクする。まるで銃口でも突きつけられたかのように震えて黙る。


僕は『吸血姫』なんかじゃないのに。

そんなんじゃないのに。

僕はただの、僕なのに。


なのに。


なんだよこれ。


ふざけんなよ。


違う。僕の考えていた夢ってのは決してこんな形じゃない。

姫なんかじゃない。王なんかでもない。僕はただ、僕で、浅ましくて、でもその浅ましさが楽しくて、その劣悪さを引き継ぐからこそTSは楽しいのであって、だから、


つまり、僕は、この体でオナニーさえ出来れば良かった。


思えば、僕が男女格差を認め訴える決定的な点は正にそこだ。


女性のオーガズムが男性の何倍も気持ちいいって格差だ。


その他愛もない雑学を耳にした瞬間、僕は半ケツのまま膝から崩れ押したんだ。

なんでだよと。同じホモ・サピエンスなのに。うとうと眠りについた時の心地良さも、初めて食べる博多豚骨ラーメンのショッキングも、男女間で差は無いというのに。

なぜ、コレだけは決定的に違うんだと。僕は憤慨したんだ。


あぁそうだ。憤ったんだ。

おかしいと。


環境や遺伝なんかよりも残酷な、生物の機構そのものにまつわる優劣。


そう、劣。


つまり、僕の、そうだ、毎日一生懸命積み重ねてきた右手の筋肉と丸まったティッシュの山は、全て劣化品だと言われたんだ。顔だけじゃない、お前は、その独り善がりで可哀想な幸福の産生でさえ、他を圧倒的に下回っているんだよと、嘲笑われたんだ。


だから僕は、女体を恨んで、羨んで、そう成りたいと必死に願って、


それで成れて、だから嬉しくて、歪んで、柔らかくて、触れようとして、


…だけど、そんなものよりもずっと大切なものがあるって、糸ちゃんに教えてもらって、


愛してもらって、


なのに、そんな温かさすら全部コイツ等に壊されて、


壊されて、


壊されて、


「…」


…コイツ等、明日も明後日も僕の傍にいるのかな。


加工した人間を持ってくるのかな。


的外れな慰めを押し付けてきて、勝手に被害者ヅラするのかな。


僕はもう、普通に生きることが出来ないのかな。


この異常者共の児戯に、永遠に付き合わなきゃいけないのかな。


自分の部屋と、スマホと、パソコンと、階下から聞こえるテレビの音と母さんの生活音が、今更になって恋しくて仕方がない。

生ぬるさが恋しくて仕方がない。


「…ぐっ、うっ…」

「うぅぅ…」


思わず嗚咽を漏らす。

侍女らが慌てて僕の傍に駆け寄ったが、僕は無茶苦茶に叫びながら彼女らを追い払った。少しだが、日差しに出て指先や耳を灰にした彼女らは、青ざめて、トボトボと日陰に戻った後、身を寄せ合って泣き始めた。


なんだよ。


泣きたいのはこっちの方だ。


糸ちゃんを殺されたことだけでも耐えきれないのに。


僕をイライラさせるなよ。


勝手に失望するくらいなら、その名で僕を呼ぶなよ。取り扱うなよ。


頼むよ。


僕に普通を返せよ。


僕は鼻息を荒くして、震えて、やがて泣き崩れた。


しかし、それは、昨日もしたこと。


現状を何も変えない、無意味なこと。


そう諦めていた。


だが違った。


その直後だった。


階下からの爆発音と共に、激しい銃声が建物中を襲ったのは。


数秒後、僕は、何も無い空からデッキに飛び込んできた数人の特殊部隊らしき人たちに身柄を確保され、

呆気なく建物の外に運ばれた。

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