とりあえず顔に物言わせてラクにお金稼ぎたいよね
この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません。
ほんとだよ。
母さんの部屋、化粧台の前でニカッと笑う。
かわいい。
「母さん喜ぶだろうな…。この前までおっさんみてぇなツラしてた息子が、こんなに可愛い娘になったんだから…」
子供っぽく小首を傾げたり、立ち上がって、小さな足をトテトテ動かして、その場でくるくる回ってみたりもしてみる。
んふふ、あーかわゆ。
「…ふっ!」
おもむろにスカートをたくし上げる。
「おぉ…、おー…。ふぅん、これが…」
…しかし、実物の女性器って意外と大したことないんだな。もっと言葉では表し難い、まるで自然が造り出した絶景のような凄いものだと思ってたけど、実際にはただの皮膚と肉だ。
…なのに、なぁ。どうしてこんなにも目が離せないんだろう?触るとこんなにもふにふにしているのは何故だろう?物質的にはデブの三段腹と何も変わりないのに?
…なんか、急にスーパー銭湯での出来事を思い出したよ。やっぱり、小さい女の子だからってパパと一緒に男風呂に入るのは良くないよ。
どれだけ小さくても、ここはやはり神秘だ。許されるべきではない。
手をパーにしてスカートをストンと落とす。その後、上にも下にも凹凸が足りない、未成熟な体をあちこち触りながら考える。
…なんで上も下も何も着けてないんだろ。いや、逆か。今着てる一張羅の方がどっから湧いたんだ?母さんの私物…、ではないよな。母さんこんなにロリじゃない。
つかこれ、本当にTSでいいんだよな?
夢とかじゃないよな?
"こうなる前の記憶が無いってのも、どういうことなんだ?"
女体化する薬を飲んだとか、神様が神パワーでこうしたとか、こう、具体的要因があれば、現状に納得が出来て、安心感が持てるんだけどな。
「…」
何もわからない。ググりたい。
「あれ?メインスマホどこだ?」
自室に戻ってサブスマホを使う。
『唐突な女体化 なぜ』
『豆乳 女性ホルモン 効き過ぎ』
『性転換 戸籍』
「…」
『いかがでしたか?』じゃねえんだよなクソ。
「…あー」
脳が疲れた。スマホ脳。
だからってわけじゃないけど、何となく指を動かして写真を撮る。
自撮り。
「…おぉ」
「絵面が綺麗…!」
別に何をしたわけでもない、すっぴん、無加工で奇跡のワンショットが撮れた…。
これが美少女パワー…!
くぅー。
更に何枚か写真を撮る。表情を作ってみたり、ポーズを凝ってみたり、色々試してみて。
…楽しい。
何をどうしたって写真写りが悪かったあの頃とは違う。修学旅行の写真販売で自分が写った写真を一枚たりとも買う気になれなかったあの頃とは比べ物にならない。
「これ…、皆に見せたらどうなるんだろ…」
衝動に駆られて、震える手でツイッターを開く。ほぼソシャゲのスクショ貼りしかしていないクソアカウント。
ここに、一つの傑作美術を投下する。
すると…
「…うわっ」
「うわっ…!うわっ…!」
一枚の写真に、あっという間に大量のいいねとリプライがついた。それも、殆どが賞賛の言葉。驚嘆の言葉。
卑猥な言葉…。
「あ…」
「ははっ…」
世界が僕に注目している。妖しい目を向けている。
ぞくぞくする。いけない笑みが浮かぶ。
胸の奥と、子宮がぎゅっと絞られるのを感じる。
いけない果汁がいっぱい出るのを感じる。
もっと、もっと。
吐息を漏らしながら指を動かす。
必死に、情けなく、腰を揺らしながら。
次から次へと際どい写真を投稿して。
そして…
いつの間にか、僕はDM上で男と会う約束を取り付けていた。
「は…、はは…、やっちゃった…。金玉に合うエロ漫画探すくらいのノリで、エンコーの約束を…」
生唾を飲んだ。
…
…太平洋側、沿岸部にある僕の住む神奈川県K市から、待ち合わせ場所に指定された同県Y市のショッピングモールまでは、電車で一時間くらい。
僕はもちろん、ナイトドレス一枚だけの姿のまま移動している。
(…いやだって、これ以外に服がないんだから、仕方ないじゃないか…)
しかし、この服は生地が薄い。ゆるゆるサイズで胸元も背中も開きまくり。そりゃそうだ。部屋着なんだろうから、防御性能とか気にして作られていない。周囲が僕を見てギョッとするが、悪いのは僕じゃない。服だ。
現状に言い訳をしながら、電車内。
ふと、吊り下げ広告を見た。美人が大文字の隣で笑顔なだけの広告。
イラっとした。
(大体、世の中は美男美女に甘過ぎるんだ。美人ってだけで、テキトーに写真撮られるだけで、汗水流して働いているサラリーマン以上に金が貰える。不公平だ。平等な社会のためには皆が美男美女並みの好待遇を受けなきゃいけない。それを考えたら、僕の行動は失ったものを取り戻しているだけ。コウフクツイキューケンの行使だ。何も間違っちゃいない、何も間違っちゃいない…)
「…」
目的の駅で電車から降りて、整備された並木通りを抜けてショッピングモールに向かう。日差しにフラつきながら、銀髪を揺らして、僕はテトテト歩く。
(街中だと、尚の事注目を集めてるよ、僕…)
すれ違う人皆が僕を見る。一旦は服装に驚くけど、次の瞬間には容姿に、その美貌に魅了されて、うっとりする。
世界が僕中心に回っているような気がする。それがまぁ、気持ちいい。
道中の店々だってそうだ。おしゃれなカフェや洋服屋、ファンシー雑貨屋なんかの、今まで僕を門前払いしていた世界も、この姿の僕には優しくて、重い扉を開けて待ってくれている気がする。
(この顔なら入っていいんだよな…!あの店にも、この店にも!この顔なら、あの中に居たって場違いじゃないから…!)
何度か通ったことある道なのにワクワクする。明らかに世界が広がっている。
夢が、次から次へと溢れ出る。
(となると、やっぱ金だよな、金!金さえがあればいくらでも遊べる!)
モチベが上がる。エンコーへの罪悪感が薄れていく。実は現在の僕の所持金、僅か200円。今ちょうどジュース買ったから残り80円。あーあ、もうダメだぁ、お金稼がなきゃ帰りの電車すら乗れないやぁ。
うふふ。
間もなく、僕は待ち合わせ場所に着いた。缶コーラを足元に置いて、SIMカードが刺さっていないサブスマホを無意味にスワイプさせながらニヤニヤして相手を待つ。
ふと、通りすがりの女性が一人、僕に目線を合わせた。
ツリ目、長いまつ毛、黒のショートカット、インナーカラーとして青が入っている、バリバリにピアスを開けた耳、ロゴT、ダボッたいパンツ。そして、それらが全て似合う、治安の悪い顔立ちをした、若く、高身長で、スレンダーで、不健康そうな女性。
それが、どうして、僕を視認すると同時に、速歩きでズンズンと近づいてきた。
「えっ…」
「えっ…!?えっ…!?」
この状況で僕に駆け寄る相手なんて決まっている。
…エンコー相手って、もしかしてあの人!?
マジか…!?マジか…!!つかあのDM、女のだったのか…!
あんな子が『君とおせっせしたいな~( ^)o(^ )、なんてね☆チュッ(ハート)』って文章送ってたのか…!
(ヤるのか…!?今から、あの人と…!?)
そう意識すると、僕は急に恥ずかしくなった。童貞の限界ってやつだ。思わず両目をギュッと瞑った。
すると、彼女は返事と言わんばかりに僕の腕をギュッと掴んだ。
「…ちょっとこっち来て」
低い声。ビクッとした僕は、言われるがままにショッピングモールから離れた、人気のない路地裏に連れ込まれた。僕を壁際に追い込んだ彼女は、しゃがんで、僕に目線を合わせた。僕達は嫌でも見つめ合う形になった。瞳が、互いを吸い込むように求めていた。
嘘でしょ…!?嘘でしょ…!?
こんなところで…!?犯され…っ!
次の瞬間、彼女は僕の頬を思い切りビンタした。




