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ルッキズム死ね。でも美少女にはなりたい。  作者: :)
第三章(一日2話ペースで投稿予定)

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20/30

そろそろ設定開示するか

『おいカナモリ!今から吸血姫連れ回すから金くれ!』


『…今月の小遣いはこの前ちゃんと渡したはずだが?』


『三千円なんてその日の内に使い切ったわ!最低でも10倍はねぇと満足できねぇよ!』


『…金遣いが荒すぎるぞ。何にそんなに使ったんだ?大体、中学生の小遣いは三千円くらいがベストだと、この前読んだ育児書にもそう書いてあってだな…』


『うるせぇこの教条主義者!もういい!こんなケチ放っておいて行こうぜ吸血姫!』


『…えぇ?』



はい。なので、風呂代もタオル代も全部僕が秦から貰った三千円から出しました。


マジで何だコイツ。徹頭徹尾イカれてる。


いや、僕が女風呂に入ることは了承したよ。本当に、渋々だけど。

何で意地悪な顔で、すっぽんぽんの体を見せつけてくるんだよ。


「いやぁ、んへへ。気になるんだよ」


「なにが」


「お前の性的嗜好についてだよ。お前ってさ、体と脳が不一致なんじゃなくて、脳も全部女のままだけど、魂だけが男な訳じゃん?その場合って、肉体に従って男の体に興奮すんの?それとも、魂に従って女の体に興奮すんの?なぁどうなんだよ?おい、なぁ」


コア子はそう言って、これみよがしに鼠径部を僕に突き出す。


あぁ、確かにそれは女子の裸。

だけど、僕はエロさよりも不快感を抱く。


不思議だ。彼女の寝息には確かに異性を感じられたのに。


一つに、下品だから萎えてるってのがある。

思うに、性器にかかるエロスには、交尾を予見させることが必要なのだ。だのに、今の彼女にはそれを感じない。ただソコを丸出しにしているだけ。それじゃ、性器は単なる排泄機関だ。衛生的に汚らしい、それこそが下品って言葉なんだと思う。


あと、もう一つ。コア子には、観念と生理の問題があった。

彼女の裸は、なんというか妹の裸みたいだった。異性の裸だから、気になって、つい見ちゃいはした。けどエロい目では見られなかった。彼女の、今の僕よりもぺたんこの胸や、青い尻、初潮が来てるのかどうか疑わしいほど幼い体には致命的な程のエロスの欠如があった。


悪いけど、僕的には、どちらかと言うと、鏡に映る僕自身の全裸の方がヤバかった。

一糸まとわぬ真っ白な肌、突起部にツンと施された可愛らしいピンク。髪の毛より少し薄い銀色をした体毛。黄金比そのものな頭身。無防備な全身像は、精巧に描かれたアフロディーテのように美しい。


「…」


…ナルシストになるのかな、これ。


「…おぉ」


…幸い、変な時間に来たおかげで他の客はいなかった。

よかったー。ババアの鶏皮みたいなおっぱいでも、人妻のおっぱいだしな。コア子の間抜け全裸なんかよりよっぽど危険だ。


間もなく、二人で背中を洗いっこした。

未だ僕を欲情させることを諦めていない彼女が「おい、前も洗えコラ」と凄んできたが、僕は無視した。


だって、本当に興奮しないんだ。


コア子の体は、


…服の上からは見えなかった、傷痕、縫い目、火傷痕まみれの体は、直に触れても悲しいだけなんだ。


「…私の体、そんなに魅力ない?」


そう言って、鼻のあたりまで湯に浸かって、しょんぼりしながらぶくぶく息をするコア子。今に髪をタオルの中にまとめた僕を寂しそうに見ている。


…もう、嘘でも言ってあげた方が良いのかな。

僕は彼女の隣に浸かった後、伝えた。


「あー、その、魅力、あるよ」


「…え?」


「だから、魅力あるって。あんまり反応しなかったのは、その、我慢してたんだよ」


「…ほんと?」


うそだよ―。


「ほんとほんと」


「…んへへ、なぁんだよぉ!お前、ちゃんとスケベなんじゃんかぁ!このぉ!」


コア子はすぐに調子を取り戻した。その場で飛び上がって、僕めがけてダイブした。


いくらコイツのカス全裸とはいえ、抱きつかれたら流石に困る。


「ちょっ…!やめっ、離れろっ!離れろって!」


「えー」


「えーじゃないが?」


「私は嬉しいんだけどなぁ。こうして誰かと肌を寄せ合えるの。最近はカナモリも一緒にお風呂に入ってくれないからさぁ。寂しかったんだよ」


…秦も苦労してんだなぁ。


「つかお前、本当に純潔とか気にしてないの?お前も肉欲の園出身なの?良識とかモラルとかどっかに置き忘れちゃったの?」


「良識、モラルねぇ。それを解き放つからこそ裸なんじゃねぇの?」


「…また頭痛くなりそうな話しようとしてるなお前?させねぇぞ?つか変わんねぇからな?いくらお前が屁理屈を捏ね散らかしても、今にお前は、元キモデブの豚骨ラーメン系男子と一緒に風呂入ってるんだからな?」


「…そんなに強調するほどキモかったのお前?そこまで言われると、なんか興味出てきたな。なぁ、なんか写真とか持ってないの?」


「いや、無いけど…」


「実家にアルバムとかは?」


「…どこいったか忘れた」


「んーそうか。なら後で調べていい?」


「?調べられるの?」


「んまぁ、方法は幾らかあるよ。得意分野でもあるしな。一応、戦闘担当のカナモリに対して、私は諜報担当だ」


「ふぅん…」


「で?どうなの?調べてもいいの?」


「えっ…?い、いやぁ、その…」


「…そういう感じならやめとく」


「う、うん…」


…どうなんだろう。

調べて良いよって言えば良かったかな。

そうしたら、僕の死因も知れたかもしれないし。


…でも、なぁ…。


なんかごめん、と僕は伝えた。

コア子は、何で謝んだよと返した後、おもむろに立ち上がった。え?もう出るの?と聞いたが違った。彼女は一旦浴場から出て、冷水機でダバダバと水を飲み散らかした後、戻ってきた。僕の隣にチャプンと浸かって、改めてこちらを向いて、尋ねてきた。


「…つーかお前、何か気になることないの?」


「?気になること?」


なんそれ。


「いやほら、あるだろ?だってお前、よく分かんねぇまま吸血姫になって、よく分かんねぇまま怪物と戦って、よく分かんねぇままカナモリに飼われるようになったじゃん?」


「あー…」


「だから、あるだろ?気になること」


「そりゃあまぁ、滅茶苦茶あるけど…」


「そうかそうか!じゃあ、この私が全部教えてやる!文字通り赤裸々な!」


コア子は、胸を張ってそう言った。


直後、僕ははたと気づいた。


…コイツ、もしかして最初からコレが目当てで僕を銭湯に誘ったのか?

こうして、ゆったり会話が出来る場所に?

不器用だけど、そういう気遣いがあった?


「…お前、ひょっとして良い奴?」


「…は?何?私をテメェの物差しで計んじゃねぇよ」


口ぶりは相変わらずこんなだけども…。


しかし、これだけズバズバ言えるタイプの人間が自分の感情に素直じゃないわけがない。

現に、コア子は口ぶりに反して、湯の中で両手をモジモジさせている。褒められたのがよっぽど嬉しかったのか、顔が赤くなっていた。


(…あ)


ちょっと可愛いかも…。

素直にそう思った。

ほんの少しだけど、彼女がちゃんと女の子に見えた。


一息ついて、僕は甘えるようにして答えた。


「…うん。じゃあ、色々教えてもらえると助かるよ」


コア子は満面の笑みを浮かべた。



 …



これから話す内容について、コア子は別に他の人に話しても良いと言った。

えっ、良いの?こういうのって普通、『政府が秘匿している…!』んじゃないの?

確認したが、うん、本当に良いらしい。


「異形の存在は、知られてないというより受け入れられてないんだよ。社会全体が認知不全に陥ったと言うべきか。下手にお勉強をして直感的な合理性しか信じられなくなった近・現代人は異常性と恐怖に真っ向から向き合う術を失い、非現実を娯楽的に消費するしか出来なくなった。尤もそれは、ご自慢の文明化された社会を維持するための防御機能とも言えるがな」


「はぁ」


「だから、異形の存在を口にしても問題はないぜ?だって誰も信じないから。実際、政府もその前提に立って異形による被害をアナウンスする。たとえばテロによる攻撃とか、小隕石の飛来とか。それだって本質的には実態の掴みようがない話なのにな」


「へぇー。まぁなんか分かんないけどおっけー」


「よし、じゃあ話すぞ」




【吸血姫やガーネットのような異形は、総じて『キャスタウェイ』と呼ばれる】


ただし、この単語は1912年にイギリスのランスロット・アレクサンダー・ボズニウェル博士が発表した論文、『Immortals On The Pavement』によって定義された学術用語であり、あくまで、研究者等の一部の人間にしか通じない。

日常会話をする分には、キャスタウェイの伝統的・慣習的な呼び方…、『妖怪』『怪物』『化物』『悪魔』、そして、『吸血鬼』『鬼』などの方が通じやすいだろう。


「おい僕の中の吸血姫。実際どうなんだ?自分のことをキャスタウェイって呼ばれて頷けるのか?」


『いやぁ…、そんな呼び名は初めて知ったなぁ…。多分、人外には一切通じないんじゃないか?』


「なら何の役に立つんだよ、この知識」




【キャスタウェイは、決して超常的存在ではない】


彼らは、近年の遺伝学の発展により、生物学的にはヒト属に属することが判明している。つまり、ヘビ女も、頭がタコの怪人も、その見た目からは考えられないが、ネアンデルタール人と同じ旧人類なのだ(だから異形以外の部分がある程度似ているのだ)。


「いやぁ…、それは流石に受け入れ難い話だなぁ…」


『はは。しかし我が半身よ、科学は差別しない。差別は、あくまで人間が産むのだぞ?』




【キャスタウェイは総じて生存競争に負けた弱小種であり、ホモ・サピエンスによる淘汰対象だった】


だから、彼らは地域や環境に応じて独自の進化を絶え間なく繰り返し、それぞれが単体で集団に対抗できる形質を獲得した。

異形の肉体も、異能も、いうなれば『ヤドクガエルの毒』なのである。


『だから、我々は異形と揶揄されど、生物学的には合理的なのだよ。まるでジャンボジェット機のように、全てのパーツが予定調和で設計されているのさ』


「じゃあ、下半身がヘビの姿に進化する合理性って何だよ?」


『そりゃあ…、アレだよ…。這うついでに床掃除が出来るじゃないか…』


「…」




【しかし、人類社会の発展は圧倒的であり、キャスタウェイらは、異形と異能をもってしても絶滅の淵に追いやられた】


そこに現れたのが『吸血姫』だった。彼女は世界に姿を現した西暦536年以降、あっという間に全ての聖職者、祓魔師、僧侶を虐殺し、世界中の有力なキャスタウェイを従え、『夜』という、キャスタウェイのための新たな社会を人間社会の裏に作り上げた。

そして、彼女は『夜』の絶対的な『王』として、今日に至るまで君臨した。


『ちなみに『夜』という名称は、単純に夜に集会を行っていたのが由来だ』


「適当だなぁ。もっと名付け頑張れなかったの?円卓会議!みたいなさぁ」


『それだって十分見た目通りの名じゃないか?』




【本町や秦、コア子のような、異能を駆使してキャスタウェイから人類を守ることを生業としている者は、総じて『ビロンギング』と呼ばれる】


ただし、この語も、キャスタウェイと同じく学術用語であるため、やはり日常会話をする分には旧来の呼び名の方が好ましい。


「あ、悲しい単語だ」


『悲しい単語だな』


「可哀想に。せめて僕達の間だけでも使ってあげる?」


『嫌だよ。びろんぎんぐなんて。語呂悪すぎじゃないか』




【多くの先進国において、ビロンギングは国家の治安維持機構として組織化されている】


日本だと、戦後に結託した反米保守派の内閣府職員らが『四隅隊(元々宮中に存在していたが、明治維新を期に形骸化してしまった対妖魔部隊)』を再編し、組織に成功した『宮内庁侍従職侍衛係』がそれにあたる。

なお、侍衛係は侍従職であり、主たる役務は皇室の身辺警護とされているが、組織創設の成り行きからして、事実上の管轄は内部部局ではなく内閣府の『特別情報局』が行っている。


「本町が所属してる組織だな。ちなみにアイツはちょっと特殊で、侍衛係でありながら御三家の一員なんだ」


「御三家?」




【御三家とは、陰陽の三大名家を指す言葉である。『網走家』『八雲家』『本町家』がこれに当てはまる】


「ちなみに本町は、千年以上京の守護を担っていた本町家の長女だ」


「えっ!?それって結構凄いことなんじゃ…!」


「そう、本来なら本町こそ、『吸血姫死すべし!』って叫ぶような、反動御三家らしい、風通しの悪い人間に育って然るべきなんだが…。いや、カナモリ曰く、アイツも十代の頃はそういう権威主義的保守主義の専制者だったらしいが、色々あって、今の人情派極太眉毛になったらしい」


「暴言に余念がないよなお前。そういうトコ、僕は好きだよ」




【キャスタウェイの異能が先天的なものである一方で、人間の異能はおしなべて後天的である】


「神から力を授かって戦う、聖職者や巫師を想像すると分かりやすい。現代では、ビロンギングに力を与えし『神』の正体について、科学的な分析が進んでいるけれども、昔の人からすりゃ、ある日突然異能に目覚めるなんて、宗教と結びつけたくなる奇跡でしかないわな」


ちなみに、この差異は、ホモ・サピエンスが生存競争の過程で集団化を選択したからであると考えられている。つまり、異能は他者と活動する上で信頼関係の構築を阻害するから、それを司る器官が退化したのだと考えられている。


「へー」




【人間が得うる異能は『おおとりモデル』により科学的な説明が可能である】


「この『鳳モデル』ってのが結構面白くてな?こう、メレオロジーに関する宇宙的な議論をより剥離させるんだ。それで、世界に存在するエネルギーを1つの充電池の中での出来事のように考えてさ…」


「あ、ごめん。僕文系だから」


「えぇー?面白いのに…」


「理系科目は分数の足し算で折れた」




【異能は、慣習的には『生まれ持った才能』+『ある後発的な条件』により得られるものとされている】


この一連の現象は地域によって様々な呼び方をされている。日本においては、『イワトを開く』『神降ろしの奇跡』と表現されてきた。


「ほーん、条件?条件ねぇ。それって何なの?」


「それは…、ごめん。また今度でいいか?」


「えっ、なんでだよ?そんなもったいぶるようなことなのか?」


「いや…、その…、えっと…」


「…あー、いや、分かった。問い詰めてごめんな」


「…ふへへ」


「わっ!このっ!だから抱きつくのは止めろというに!はっ、離れい!」




【そして…】


「のぼせたぁ…、ねぇー吸血姫ぃー…。お湯全部凍らせて氷風呂に変えてぇー…?」


「アホなこと言ってねぇで、のぼせたんならさっさと上がるぞ」


話半ばで、コア子はくたばった。

上がるように言っても、彼女はもはや熱に力を奪われていて、自力では動けなかった。


仕方ないから、僕は彼女の両脇を抱えた。

…思えば、今、生まれて初めて女の子の裸に触れたかもしれない。こんな色気の欠片もない場面で初めてを迎えるのは何か癪だった。


「…んぉ?」


「?どした?」


ちょうど、コア子を湯から引き上げた時だった。彼女は茹でダコのような顔をしたまま眉をひそめ、股をモジモジさせた。


「なんか…、アソコがチクッとした気が…」


「ん?炎症か何かか?」


「どうかなぁ、全身ゆでダコだから分かんないや。ちょっとよく見てくんね?」


「よく見て良いわけねぇだろ。テメェも自分を大切にしろコラ」


湯から出て、ようやく自力で立ち上がったコア子は、「っかしいなぁー?」と言わんばかりの顔をして、股間をボリボリ掻きながら脱衣所に戻った。


「下品だなぁ…」


そう呟きつつ、ふと床の風呂タイルを見ると、何故か、コア子の歩いた後に沿って血がポタポタと落ちていた。


「これが生理…、ってヤツか?」


…ここで違和感の正体に気づけていれば、僕達は後にあんな大惨事に遭わずに済んだかもしれない。


しかし、色々なことに余りにも経験不足だった僕は、それについて、何も察することが出来なかった。

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