ギタリスト
インディーズになって、数年が経った。
ライブは回っている。呼ばれる回数も増えた。
活動は安定している。
それでも、伸びない。
理由は分からないまま、時間だけが減っていく。
今日のライブには、顔見知りの制作も来ていた。
チャンスだったはずだ。
なのに、音が合わない。
何度やっても、締まらない。
リハも、納得のいく出来じゃなかった。
控室で、息をつく。
対バンのボーカルが目に入った。
バンドは派手じゃない。
でも、音が崩れない。
落ち着いていて、余計な力が入っていない。
制作側の視線が、
自分たちよりも、そっちに向いている気がした。
自分のメンバーを見る。
それぞれ、肩の力が落ちていた。
このままだと、何も変わらない。
さっきの、
対バンのやり取りを思い出す。
揉めていなかった。
説明もしていなかった。
それでも、音が少しずつ整っていった。
——もしかしたら。
気づいたら、声をかけていた。
「さっきの音なんだけどさ」
対バンのボーカルは、少し間を置いて、
視線を向けた。
遅れて、
自分のメンバーの視線も集まる。
「悪くないんだけど、
なんか締まらなくて」
音を思い出すように、
少しだけ考えてから答える。
「低音、前に出しすぎてる」
「え?」
「迫力はあるけど、
抜けが死んでる」
一瞬、沈黙が落ちる。
「……そんな細かいとこまで聴いてた?」
肩をすくめる。
「聴こえたから」
メンバー同士、顔を見合わせる。
「ちょっと、
次のリハで一回見てくれない?」
変わるかどうかは、分からない。
でも、
声をかけたことに、後悔はなかった。




