第42話『我が名はダイナ・アスター』
【主な登場人物】
『師匠』
名前:マナ・アスター
性別:女性
種族:ハイエルフ(絶滅危惧種)
年齢:400歳オーバー
容姿:身長140cm エルフ耳 色白 華奢な体型
紫がかった白く長い腰まである髪 金色の瞳
服は白系のワンピースタイプの服が多め
外出時はその上に黒のローブとツバ広の魔女帽子
備考:一人称は「ワシ」 天才魔法技術者、及び魔術師。別名魔術おばけ。
王宮直属の魔術研究機関に勤めていた過去を持ち、数え切れないほどの魔術やそれに関する技術を開発した。
しかし、ものぐさな上に人嫌いであり、面倒事に巻き込まれる気配を察して逃げるように研究所を退職。
それ以来、研究者時代に稼いだお金で買った土地と森で、ダイナを拾うまでは悠々自適な一人暮らしをしていた。
未来から来たという大人になったダイナの話を聞いて強い後悔と責任感を覚え、共に未来を変えようとしている。
『弟子』
名前:ダイナ・アスター
性別:男性
種族:幻魔族(絶滅済みとされていた)
年齢:12歳
容姿:身長152cm(ケモミミを含まない) 狼のような黒い獣耳と尻尾 浅黒い肌 可愛い系な顔立ち 標準体型
赤みがかった黒色で前髪長めの無造作ショートヘア こめかみ辺りからは灰色で小ぶりな巻角 赤い瞳
冬以外は半袖半ズボンで居る事が多い 中でもドラゴンが刺繍された赤いシャツがお気に入り
学校へ行くときは、その上から学校指定の黒いフード付きローブを着用
備考:一人称は「僕」 マナの弟子にして、古に絶滅したとされる幻魔族の末裔の少年。
ある雨の日に、母親からの手紙と共にマナの家の前に置かれた籠の中に入れられていた。
12歳になって学校に通い始めるまで森の外に出たことが無く、少し世間の常識とはズレている所がある。
好きな事は読書と料理、マナに教えてもらう魔術の勉強。最近はそれに学校へ行くことも追加された。
マナの事はもちろん好きだが、その感情の正体や意味を本人はまだ完全には理解していない。
ずっと怪しんでいたデュオスの事を現在は「未来から来た自分とマナの子供」だと勘違いしている。
『もうひとりの弟子』
名前:デュオス(未来のダイナ)
性別:男性
種族:幻魔族
年齢:不詳(見た目は20代後半くらい?)
容姿:身長178cm(ケモミミを含まない) 狼のような白い獣耳と尻尾 浅黒い肌 すっかり大人の顔立ち がっちり体型
ストレスで真っ白になった長いやつれ髪 こめかみ辺りからは黒色で立派な巻角 本来赤の瞳はマナと同じ金色に偽装している
時間遡行の影響で部分的に真っ黒に変色してしまった身体を隠すため、長袖長ズボンでいる事が多い
外出時には、こっちに来てからマナに買い与えられた黒いロングコートを身に纏う不審者スタイル
備考:一人称は「俺」 マナと結婚した未来から来たというダイナ。
ある雷雨の日に落雷と共に全裸で家の前に現れ、不審者だと思ったマナに拘束・保護された。
同じ時間軸に現在と未来の同一人物が存在するという時間的矛盾の発生を回避するために、過去の自分であるダイナには記憶喪失という事で通していたが、現在はダイナの思わぬ勘違いによって2人は父子という事になっている。
未来から来た理由は、この先に待ち受ける最悪の未来を変える為だという。
【その他の登場人物】
『彼方よりの征服者』
名前:エクデス(未来)
年齢:20代くらいの若さに見える
種族:幻魔族
性別:男性
容姿:身長176cm 青髪 糸目 標準体型 頭部に犬系獣耳 ツノ 腰に尻尾 左腕が義手
備考:復讐を掲げた侵略戦争によって他の全ての種族と国を焼き、再び大陸の支配者となった未来からやって来たエクデス。
ラギルを唆してリュケウスを暗殺させる事に成功し、傀儡の王となったラギルを通じて数多くの同胞を国内へと招き入れ、国が陥落する要因を作り上げた真の黒幕。
同じ幻魔族の血を引き、師弟の娘であるキャロルに偽りの憎しみを植え付けて暴走させ、彼女が死亡する原因となった人物。
底をついた魔力の回復手段を求めてダイナの通う学校へと赴いたデュオスは、そこで偶然にもダイナらと遭遇する。
そして海岸線にて宿命の相手、エクデスと激闘を繰り広げている師匠マナのピンチを察知して颯爽と救援に現れたデュオスではあったが、うっかりとダイナを現場へと連れてきてしまう。
当然ダイナをこんな危険な場所に連れてきた事に対し不満を漏らすマナではあったが、来てしまった物は仕方ないとして、弟子達に自分が魔力を回復するまでの時間稼ぎを任せ、2人はそれを見事に成し遂げたのであった。
「待たせたのう、お主ら。さぁ……最終戦の開幕じゃ。」
「し、師匠……!」
「師匠っ!」
デュオスへと向けられた攻撃を防いだマナは、魔女帽子をデュオスへと投げながらエクデスを見上げる。
何とか約束通りに彼女を守りきり、魔力回復までの時間を稼ぐことに成功した弟子達に、一斉に希望の笑顔が灯る。
だが一方で、最強の敵の復活を許してしまったにも関わらず、エクデスの表情にはあまり焦りは見られない。
「おーおー、随分と手酷くやられたようじゃな?小僧。片足をどこに落としてきたんじゃ?」
「それとも、家の弟子達はちょいと出来が良すぎたか?」
片足を失い重傷を負ったエクデスを見て、マナは嘲笑うような挑発を向ける。
己の力を過信し、そして弟子達の実力を舐め腐った結果、その慢心によって予想外の一撃を受ける事となったエクデスは、彼女の挑発に僅かに獣耳を反応させる。
「ええ……少々躾のなっていない犬に噛まれてしまいましてね。」
「──ですが、もう油断はしません。」
「む……!」
込み上げる怒りをぐっと抑えて冷静さを取り戻したエクデスは、小さく息を零すと何かを引き寄せるように右手を動かし始める。
その奇妙な行動にマナが軽く身構えた、その時。
「使えるものは全て使い、圧倒的に、絶対的に、完璧に──貴女に勝つ。」
そう不敵な笑みを浮かべたエクデスの側に突如として虚空から現れたのは、見覚えのある青髪と獣耳の拘束された男──この時代のエクデスだった。
「なにッ──!?」
「(まさかあいつ、起こすつもりかッ!?ここでッ!)」
屋敷での戦いにおいてデュオスとの殴り合いに敗北し、拘束された後に魔術協会へと移送された筈の彼が、未来から来たエクデスの手によってここへ召喚されたのだ。
そしてデュオスの危惧している通り、エクデスの狙いは──。
「タイムパラドクスという物を、貴女ならばご存知でしょう?」
「異なる時間を生きる同一の存在が、もし出会ってしまったら……。」
「一体何が起きるのか、今からご覧に入れましょう。……さぁ、起きなさい。」
拘束を解かれ回復魔術によって現代のエクデスが意識を取り戻す。
そして目の前に存在する自分と瓜二つの顔をした未来のエクデスを認識すると、酷く驚いた様子でその糸目をはっきりと見開いた。
「し、師匠!ヤツを止めないと!」
「わかっておる!しかし──!(あの口ぶり、もしや彼奴は何が起こるか知っているのか……?!)」
状況的に考えるならばデュオスの言う通り、エクデスが何か行動を起こす前にここで叩いておくべきなのだろう。
だが、ここでマナが選んだのはあえての静観。
さらなる危機を呼ぶかもしれないというリスクより、長年抱き続けた未知への答えが示される事に対する期待、1人の研究者としての彼女の異常なまでの好奇心が勝ってしまったのだ。
「随分なやられようですね、この時代の私。あの野蛮な男にでも殴られましたか?」
「私……?何を──うッ!?」
目を覚ました現代のエクデスの頭へと未来のエクデスが手を翳し何かをした瞬間、現代のエクデスが突如として苦しげに頭を抱えたかと思えば、やがて落ち着いたようにゆっくりと頭を上げる。
「ああ、そうか……貴方は、私……なのです、ね。」
「では後は任せて頂きましょう──。」
「ッ!?(来るか!タイムパラドクスが!)」
「くっ!?」
「わぁっ!?」
異なる時代の同一存在が互いを自分だと完全に認識した、次の瞬間。
まるで磁石のように強く引き合った2人の身体が接触し、不思議な色をした眩い光を放つ。
虹の色にも似た不可思議な光が辺りを包み込み、やがて収束していく。
そして──。
「ああ……私の知る歴史とは既に随分と違いますね。」
そこに居たのはエクデスが1人。
先程のデュオスらとの戦いで失った片足も、その前のマナとの戦いで自らへし折った角さえも、何もかもが無かったかのように完全な状態での復活を果たした、最悪の敵の姿だ。
エクデスは少し悩ましげな表情をしながら頭を人差し指で叩き、自らの持つ記憶と今新たに得た記憶の相違点にひとり苦笑する。
「融合……いや、合体した……!?(左手は義手のまま……でも何か、さっきよりも更に魔力が上がってねぇかこいつ!?)」
「なんと、このような──!」
「な、何が起こったんですか!?師匠!」
意図的に引き起こされた時間的矛盾の結果、異なる時間軸のエクデス同士が引き合い、合体して1つになるという予想外の事態を目の当たりにして、師弟達は三者三様の反応を示す。
焦りから額に汗を滲ませるデュオス、自らの予想の外を行く未知の現象に強い驚きと興奮を示すマナ、ただ泣きつくようにそんな彼女の元へと駆け寄るダイナ。
混沌と混乱渦巻く状況の中、それでも1つだけはっきりとしている事があった。
それは、合体したエクデスの魔力が既に現在のマナをも上回っているという事だ。
更にその上、奇跡を呼び起こす切り札たる幻魔族の角までもが復活してしまっている。
「……さて、お待たせしました。戦いを続けましょうか、マナ・アスターさん?」
「ッ──お主らは逃げろッ!こやつはワシが何とかするッ!」
「師匠──ッ!?」
軽く手を翳した瞬間、エクデスの手から放たれたのは視界を覆い尽くさんばかりの大きさを持つ極太の勅死の光。
あまりに桁外れで馬鹿げたその出力に、瞬時に防御や軌道変更は不可能だと判断したマナは、両手を伸ばして弟子達に触れると転移術を発動。
3人で一緒にクレーターの外まで緊急退避した後、自分だけ再びエクデスの元へと戻っていってしまう。
「待ってください師匠!僕も一緒にッ!」
「やめろバカッ!もう俺達がどんなに頑張ったってどうこうできるレベルじゃ──!」
何も言わず戦いへ行ってしまったマナを追いかけようとするダイナを、デュオスは腕を引っ張って強引に止める。
ここで弟子達が束になってどれ程上手く連携を取った所で今のエクデスには敵わない事はもちろんだが、師匠であるマナでさえ勝てるかどうかは怪しく、状況的に見てもかなり不利な戦いを強いられる事は必至だった。
だがその時、窮地に陥ったデュオスの頭に、1つのある奇策が思い浮かぶ。
「(一か八か、この方法なら……でも、それは……ッ!)」
「デュオスさん……?」
「……、……それでもやるしか、無いよな。」
それを実行する事によって生じる様々なリスク、そしてこの先の未来への影響を考え、デュオスは不安げに揺れるダイナの赤い瞳を見つめながら苦渋の表情を浮かべる。
それでも大切なものを再び失うよりはマシだと腹を括ると、デュオスは小さく息を吸って自らの気持ちを落ち着かせた。
「──聞け、ダイナ・アスター。」
「は、はい……?!(あれ、デュオスさんの瞳が……?)」
デュオスはダイナの両肩に手を置いて真っ直ぐに見つめると、ゆっくりと一度瞬きをしてから彼に呼びかける。
いつになく真面目な様子のデュオスに、緊張気味な返答をするダイナの赤い瞳が向いた先にあるのは、同じ赤色をしたデュオスの瞳。
「俺は……本当はお前と師匠の間に生まれた子供。なんかじゃない。」
「っ!?こ、こんな時に何を言って──。」
「いいから聞け!ダイナ!」
「ッ!」
突然の衝撃的な告白をしてくるデュオスに、ダイナは当然困惑したような反応を示す。
それでも真っ直ぐに見つめ続けてくる彼の真剣な声に、ダイナは獣耳を傾けた。
「俺は──俺の本当の名前は……ダイナ・アスター。」
「未来から来た、お前自身だ。」
「え……あ、なっ、何を……だって、そんな……そんな事──ッ!」
明かされたその正体に、ダイナは激しく混乱し、狼狽え、その事実を受け入れる事を拒むかのように頭を抱え目を泳がせる。
だが彼の脳裏に次々と蘇るのは、師匠とデュオスへの小さな疑念の記憶。
何故、彼は師匠の家に侵入する事ができたのか?
何故、彼は師匠を最初から師匠と呼んでいたのか?
何故、突然現れた彼を師匠はあっさりと受け入れたのか?
何故、彼は師匠のコーヒーの好みを知っていたのか?
何故、彼の好みは自分と似ているのか?
何故、何故──。
積み重なった数々の疑問が突きつけられた1つの真実によって繋がり、嫌になる程にはっきりと解き明かされていく。
「ずっと……ぐすっ……僕のこと、騙してたんですか?」
「……ああ。」
今にも泣きじゃくってしまいそうなのを必死に堪えながら、こちらを強く睨みつけてくるダイナの姿に、デュオスは強い罪悪感のような物を覚え、胸を激しく締め付けられる。
「じゃあっ!僕が師匠と結婚したっていうのも本当は全部嘘で──!」
「それは本当だ!そして未来で師匠が死んだのもッ!!」
「ッ……!」
顔を上げ叩きつけるように叫ぶダイナの言葉をデュオスは遮り、残酷な事実を突きつける。
それを聞いた途端、不安にかられたダイナの赤い瞳にじわりと込み上げた涙がついに溢れ、大粒の涙が頬を伝った。
「泣くなよ、ダイナ・アスター。……この時代の師匠は、まだ生きてるだろ?」
「……っはい。」
デュオスは親指でダイナの涙を拭うと、おもむろに自らの右角へと手を伸ばす。
この時代のマナはまだ生きていて、今も必死に戦っている。
だがこのままでは、未来と同じ悲劇を繰り返すことになってしまう。
「──だったら、やる事は1つだ……覚悟はいいか?」
「ッ──はいッ!!」
覚悟を決めたダイナの表情を見て小さく笑うと、デュオスは思い切り自らの角をへし折った。
幻魔族最大の特徴である、奇跡をもたらすと言われる神秘の角。
そして失えば二度とは戻らず、両方を失えば長くは生きられないと言われている、命の次に大切な物。
「期待してみようぜ、幻魔族の持つ、奇跡の力ってヤツに──!!」
握り砕かれた角が眩い光の粒となってダイナを包みこんでいく。
やがて光の塊となったダイナは徐々にその大きさを増し、ちょうどデュオスと同じくらいの大きさになった、その時。
まるで光の殻を破るように中から現れたのは、角のもたらす奇跡の力によって大人の姿へと変身を遂げたダイナだった。
「さぁ、行くぜ。なんたって俺達は──。」
「師匠のたった1人の弟子、ですからね!」
並ぶ程の背丈へと急成長を遂げたダイナの姿にニヤリと笑うデュオスが軽く手を掲げると、ダイナは力強くハイタッチするようにそれに応える。
その瞬間、眩い虹色の光が辺りを包み込んだ。
異なる時間の同一存在が、時間的矛盾によって今、1つとなる。
「──行きますッ!(行くぜ!)」
七色の光を切り裂き飛び出したのは、赤みがかった黒い短髪に赤い瞳をした大柄な獣耳の男。
真っ黒なコートをなびかせて、風のごとく走り向かうは大切な人の元。
彼の頭の中に響くのは、自分であって自分でない者の声。
愛する者を守る為に、時を越えた因縁に終止符を打つ為に。
そして何よりこれからの未来を守る為、戦う覚悟を決めたダイナの身体は、不思議な高揚感に満ち溢れていた。
「師匠ーッ!(師匠!)」
「ッ!?デュオ──ッ!?ん!?」
慢心を捨てたエクデスの猛攻に、紙一重での防戦を続けていたマナの元へとダイナは一直線に飛び込んで行く。
彼の目には今、そこに流れる魔力の全てが見えていた。
故にこそ、それを手繰り意のままにする事など容易く──。
「受け取ってくださいッ!僕達のッ!(俺達のッ!)」
「愛情たっぷり籠めた贈り物をッ!」
「ぬわッ──!?!?」
ダイナが地面の一点を見定め拳を打ち付けると、凄まじい衝撃と共に大地が裂ける。
それから地震にも似た数秒の揺れの後、地面からマナへ向かって溢れ吹き出したのは煌めく謎の光。
地中深くへ何万何千年もかけて蓄積された、霊脈とも言うべき超高純度の自然魔力の塊だ。
「霊脈だと!?まさかッ!?見えているとでも言うのかッ!?こんな残留魔力まみれの中でッ!」
「そのまさかですよ!今なら、全部!(全ては俺達の思うがままってな!)」
予期せぬ乱入者の常識外れな御業に驚きを隠せないエクデスは、それでも全てを滅ぼすような勢いで極太の赤黒光線を連射する。
しかしダイナはそれを何の術式も介する事無く、純粋な魔力操作の力によって上方向へと捻じ曲げて見せた。
「師匠!どうですか!?(あれだけ浴びれば、いくら魔力おばけの師匠でも──!)」
「……うぇっぷ。ちょっと待ってくれ……あまりに濃い魔力で……うっ。」
霊脈から吹き出す大量の魔力を直接その身に浴びたマナは、口を抑えしゃがみ込んでいる。
どうやらちょっと弟子達の愛情が効きすぎたようだ。
「なんてデタラメな……ですがッ!私はそれさえも超えてみせるッ!!」
「!?(気をつけろ!上だ!)」
エクデスが天高く手を掲げた瞬間、彼の魔力が急激に空へと集中する。
その魔力の流れに何か不穏な気配を感じ取ったダイナが咄嗟に空を見上げると、その視線の先にあったのは土埃の曇天の隙間から見える、剥がれ落ちた空。
先の戦いにおいてマナが使用した、宇宙から呼び寄せた隕石を落とす大魔術。
龍滅の光をエクデスは詠唱も無しに見様見真似で再現してみせたのだ。
しかも今度は、2ついっぺんにである。
「星が落ちてくるぞ。今度ばかりはワシの結界でも耐えられんじゃろう……さぁどうする、愛弟子よ?」
「ほ、星っ!?え、えーと、えーと……!(そんなもん撃ち落とせばいい!)」
「撃ち落とすって!?でもそしたら破片が街に……!(だったらどうすんだよ!)」
「くふ。わからぬか?では手本を見せてやる。彼奴の相手は任せたぞっ!」
「は、はひっ!?」
突然のマナからの問いかけに答えに迷うダイナだが、そうしている今も刻一刻と星は2人に目掛けて落ちてくる。
するとマナは時間切れだと言わんばかりに弟子の背中を叩き1人空へと浮かび上がると、光を灯す魔術を用いて宙に超巨大な魔法陣を形成し始めた。
「おやおや、よろしいのですか?私の相手などしていて!」
「貴方はともかく、あれが落ちれば大勢が死にますよッ!」
「っ……それでも僕は師匠を信じてる!だからッ!(くたばれエクデスッ!!)」
向かってきたダイナへ目掛け、動揺を誘うような言葉と共にエクデスは鋭く巨大な風刃を放つ。
だがそれを強い意思を持って撥ね除けたダイナは、同じく風刃をぶつけてそれを相殺してみせる。
そんな2人の熾烈な魔術合戦が行われる中、土埃の天井をかき分けついに姿を現したのは、天より迫る疑似・龍滅の光の光。
それに立ち向かうのは、たった1人の小さな魔術師──ただし、天才の。
「開け、門よ!その貪欲なる深淵にて全てを飲み込めッ!!」
眼前まで迫りくる2つの星へ、マナが手を掲げ叫んだその瞬間。
空中へと光で形成された魔法陣の中に現れたのは、真っ暗な穴。
それは何もかもを飲み込む、何よりも深い虚無へと続く門。
流れ落ちた星々は門を通じて闇へと消え、後には静寂だけが残るのであった。




