第36話『正論は時に弟子を傷つける』
【主な登場人物】
『師匠』
名前:マナ・アスター
性別:女性
種族:ハイエルフ(絶滅危惧種)
年齢:400歳オーバー
容姿:身長140cm エルフ耳 色白 華奢な体型
紫がかった白く長い腰まである髪 金色の瞳
服は白系のワンピースタイプの服が多め
外出時はその上に黒のローブとツバ広の魔女帽子
備考:一人称は「ワシ」 天才魔法技術者、及び魔術師。別名魔術おばけ。
王宮直属の魔術研究機関に勤めていた過去を持ち、数え切れないほどの魔術やそれに関する技術を開発した。
しかし、ものぐさな上に人嫌いであり、面倒事に巻き込まれる気配を察して逃げるように研究所を退職。
それ以来、研究者時代に稼いだお金で買った土地と森で、ダイナを拾うまでは悠々自適な一人暮らしをしていた。
未来から来たという大人になったダイナの話を聞いて強い後悔と責任感を覚え、共に未来を変えようとしている。
『弟子』
名前:ダイナ・アスター
性別:男性
種族:幻魔族(絶滅済みとされていた)
年齢:12歳
容姿:身長152cm(ケモミミを含まない) 狼のような黒い獣耳と尻尾 浅黒い肌 可愛い系な顔立ち 標準体型
赤みがかった黒色で前髪長めの無造作ショートヘア こめかみ辺りからは灰色で小ぶりな巻角 赤い瞳
冬以外は半袖半ズボンで居る事が多い 中でもドラゴンが刺繍された赤いシャツがお気に入り
学校へ行くときは、その上から学校指定の黒いフード付きローブを着用
備考:一人称は「僕」 マナの弟子にして、古に絶滅したとされる幻魔族の末裔の少年。
ある雨の日に、母親からの手紙と共にマナの家の前に置かれた籠の中に入れられていた。
12歳になって学校に通い始めるまで森の外に出たことが無く、少し世間の常識とはズレている所がある。
好きな事は読書と料理、マナに教えてもらう魔術の勉強。最近はそれに学校へ行くことも追加された。
マナの事はもちろん好きだが、その感情の正体や意味を本人はまだ完全には理解していない。
ずっと怪しんでいたデュオスの事を現在は「未来から来た自分とマナの子供」だと勘違いしている。
『もうひとりの弟子』
名前:デュオス(未来のダイナ)
性別:男性
種族:幻魔族
年齢:不詳(見た目は20代後半くらい?)
容姿:身長178cm(ケモミミを含まない) 狼のような白い獣耳と尻尾 浅黒い肌 すっかり大人の顔立ち がっちり体型
ストレスで真っ白になった長いやつれ髪 こめかみ辺りからは黒色で立派な巻角 本来赤の瞳はマナと同じ金色に偽装している
時間遡行の影響で部分的に真っ黒に変色してしまった身体を隠すため、長袖長ズボンでいる事が多い
外出時には、こっちに来てからマナに買い与えられた黒いロングコートを身に纏う不審者スタイル
備考:一人称は「俺」 マナと結婚した未来から来たというダイナ。
ある雷雨の日に落雷と共に全裸で家の前に現れ、不審者だと思ったマナに拘束・保護された。
同じ時間軸に現在と未来の同一人物が存在するという時間的矛盾の発生を回避するために、過去の自分であるダイナには記憶喪失という事で通していたが、現在はダイナの思わぬ勘違いによって2人は父子という事になっている。
未来から来た理由は、この先に待ち受ける最悪の未来を変える為だという。
楽しい夏休みも気がつけばあっという間に終わりに近づいて、もう数日もすれば新学期が始まろうという頃。
ひょんなことからミナの帰省に同行する事となったダイナは、実に1週間もの期間を彼女の実家で過ごしたの、だが。
そこで本当に色々な事があったせいか、帰ってきてからもどこか元気が無く、時折空を見上げてはため息ばかり零しているのだった。
「──おい!おいってば!」
「ふぇ──ッ!?」
またもや呆然としていたらしいダイナに、誰かが呼びかける声がして彼はハッと正気を取り戻す。
直後、彼の頭に何か小さくて柔らかい物がそこそこの勢いでぶつかって、彼は背中から地面へと倒れ込んだ。
そこへ慌てて駆け寄り顔を覗き込んでくるのは、彼とよく似た特徴を持つのデュオスだ。
「またぼーっとしてたのか?本当しっかりしてくれよもう……。」
「……ごめんなさい。」
呆れたように深くため息を零すデュオスに、ダイナは申し訳無さそうに目を伏せてぶつかった所を軽くさする。
本来であれば夏休み期間中は2人でみっちりと修行をする予定だったにも関わらず、1週間も遊びに行ってしまっていたダイナの修行の遅れを取り戻すべく、ここ最近デュオスは彼にいつもよりもハードな修行をさせていた。
だというのに彼は修行中でさえも時折こうして物憂げな表情を浮かべては、心ここにあらずとばかりに呆然としてしまっているのだ。
「あの子と何かあったんだろ?……話したくないのはわかるけどさ、いつまでもそんなんじゃこっちまで調子狂っちゃうよ。」
「そう、ですよね……でも……、……はぁ……。」
「(失礼だなこいつ……。)」
目線の高さを合わせるようにしゃがみ込んで、デュオスは困ったように頭をかきながらダイナへと語りかける。
しかしダイナはそんなデュオスの方をじっと見つめたかと思えば、またため息を零すのだ。
あの日彼女からの秘めたる強い想いを伝えられたダイナは、自らの未来とその使命を知るが故にその場で返事をすることができず、その答えを一時保留とした。
もしダイナが彼女の事を本当に何でもないただの友達だと思っていたのなら、これ程までに思い悩む事も無かったのだろう。
だが現状として彼の心はは、未来にて師匠と結ばれ息子を授かるという自らに課せられた使命と、彼女の想いにどう答えるべきかという悩みによって激しく揺れている。
「(デュオスさんが未来から来たって事は、僕と師匠は間違いなく未来で結ばれたんだ……でも──。)」
「(僕は確かに師匠の事が大好きだけど……未来の師匠はどうして僕と結婚する事を受け入れてくれたんだろう?)」
「(師匠も実は僕の事が……なんて事は師匠に限って絶対無い筈だよね……?だったら、そのきっかけは──?)」
地面に座り込んだまま小さく頭を抱え、悶々としながら考え続けるダイナの様子を見て、デュオスは静かな焦りを覚える。
在りし日の自分を取り巻く環境の変化によって、本来の流れとは別の方向へと未来が動き始めたのは確かに良い事だ。
やがて訪れる最悪を跳ね除ける為の力を彼につけさせて、今度こそ大事な人達を守るためには必要な条件である事には変わりない。
しかしその環境の変化によって、もし彼が心変わりをしてしまったのなら──。
「……未来で僕と師匠が結婚した時って、やっぱり僕から師匠に求婚したんですか?」
「んっ?あ、ああ……未来の父さんからは、そう聞いてるよ。」
「その……プ、プロポーズの言葉とかって……聞いてたり……?」
「え、あー……。(プロポーズの言葉……!?ッ……どれだ!?)」
ふと気になったのか唐突に顔を上げたダイナからの問いかけにデュオスはややぎこちなく嘘の返答をするが、続く質問の内容に思わず固まってしまい、真剣な表情で考え込むように自らの口元を手で覆う。
事実、未来での師弟がそうなったのは、互いの様々な感情のせめぎ合いによる結果による物であり、その過程は実にシームレスでなし崩し的な物であった為、明確なプロポーズの言葉という物は存在していなかった。
「っ……流石に聞いてない、かなぁ……?(酔った勢いで一線越えてずるずる行った結果、なんて言えるわけねーだろ……!)」
「そ、そうですか……。」
迂闊に答えれば余計にややこしい事態を引き起こしかねないと判断したデュオスは、知らないふりをする事にする。
そんなデュオスの答えに、未だ幼いが故に結婚という物に対してのイメージが純粋で無垢なままのダイナは、少ししょんぼりとした反応を見せた。
彼としてはそのプロポーズの言葉を参考にすれば、師匠を振り向かせる方法がわかるかも知れないと思っていたからだ。
「──その、もし……もしですよ?もしこのまま僕が将来、師匠と結婚しなかったら……今ここにいるデュオスさんはどうなっちゃうんですか?」
「ッ!?それは……、……。(え……?どう、なるんだ……?)」
仮の話だと念を押すようにしながら、ダイナはデュオスへと問いかける。
唐突なそんな質問に驚くデュオスだが、またもや真剣な表情で考え始め固まってしまう。
そもそもの話、2人はどちらも異なる時間軸を生きているダイナ本人なのだから、どうなるも何も無いという話ではある、のだが。
要するに、本来辿るはずの歴史とは異なる選択によって未来が変わった場合、本来の未来から来た存在はどのような影響を受けるのか?という事だろう。
もっと言えば、それが過去の改変を実行するきっかけになるような重要な選択だった場合、どうなってしまうのか。
「っ……。(もしこの時代の俺と師匠が結婚しなかったら、もちろん娘は生まれてこない……。)」
「(けど俺は師匠と娘を失ったからここに来たわけで……。)」
「(この先、この時代のあいつを倒して未来に起こる最悪を全部無かった事にしたら──。)」
「!?(そもそも俺は、この時代に来る理由が無くなるんじゃないか……!?)」
真剣な表情で考えながらも苦悶するように顔を歪ませるデュオスを、ダイナが不思議そうに見上げている。
最悪を回避するために未来からやって来たが、それを過去改変によって回避すると未来からやってくる理由が無くなり、過去改変自体が行われなくなる、という矛盾に行き詰まってしまったデュオスは、頭が転げ落ちそうな程に首を傾げた後でやっぱりわからなくなってしまって、ダイナと同じように頭を抱えた。
「ごめん……俺にもわからないよ。何しろ時間遡行なんて初めてやったから……。(師匠ならわかるかな……?)」
「で、ですよねー……うぅん……。(師匠ならわかるのかなぁ……。)」
考えれば考えるほど頭が爆発してしまいそうな時間的矛盾の問題に揃って頭を抱える弟子達を、何も知らないマナは不思議そうに2階の窓から見下ろしていた。
「(何やってんじゃあいつら……?)」
◆
あれからお昼休憩を挟んだ後、弟子達はリビングのソファへと並んで座っていた。
その視線の先にはどこからか引っ張り出されてきた移動式の黒板と、白のチョークを片手に何やら描いているマナの姿。
先ほど散々2人で悩んでいた矛盾についてどうしても気になってしまったらしいダイナは、昼食の際にやんわりとマナへと尋ねてみたの、だが。
それが何か彼女の研究者としての良くないスイッチを入れてしまったらしく、もうかれこれ2時間近くも小難しい時間遡行についての説明が続いていたのだった。
「──というわけで以上の理由からして、既に観測された未来は不変であると考えられるのじゃ!」
「なる、ほど……?」
「さ、流石です師匠!」
黒板へ何やら図形や式を激しく刻みつけたマナが、ばんっと板面を叩いて弟子達へ力説する。
それでようやく終わったらしい説明を聞き終えた弟子達ではあったが、その反応はまちまちだ。
説明を咀嚼するように獣耳をピコピコ動かしながら何とか理解をしようとするダイナに対し、この中唯一の時間遡行者の筈のデュオスはもはや理解する事を諦めたのか、マナを称賛する方向へ切り替えていた。
「ふぅ、少し喋りすぎて喉が乾いたな……デュオス、茶をいれてくれ。」
「はいっ!すぐに!」
「お疲れ様です、師匠。」
「うむ……ところでダイナ。」
「はい?」
無事に講義を終えて休憩とばかりにソファへとマナが着席すると、入れ替わるようにデュオスが立ち上がってキッチンの方へと走る。
するとマナは突然隣のダイナの肩へ手をかけ抱き寄せると、によっとした顔で彼を見つめた。
「──この間、ミナに告白でもされたか?」
「……ふぇっ!?!?」
小声ながらもお見通しだと言わんばかりに、そんなどストレートな質問をぶつけてくるマナにダイナは一瞬思考停止してしまった後で、顔を真赤にしながらわかりやすく狼狽える。
ミナの実家から戻って以来ダイナの様子がおかしい事はマナもすぐに察知していて、最初はまたミナと喧嘩でもしたのかと思っていた彼女だったが、その物憂げな表情や様子からして、今回はそうではないと気がついたのだ。
「で、返事は?その様子じゃと、まだしておらんのじゃろう?」
「う……はい……。」
悪戯っぽい笑みを浮かべながらぐいぐいと迫ってくるマナに、ダイナは逃げるようにゆっくりと目を逸らしながらもそれを肯定する。
そんな弟子の様子にマナはますます興奮気味に鼻を鳴らしたかと思えば、嬉しそうに彼を抱きしめた。
「くふふ……そうかそうか。それで?角の事は何と?」
「びっくりはしてました、けど……それでも好き、だと……言ってくれました。」
あの時のミナの言葉を思い出すように、自ら口に出した途端ダイナはますます顔を赤くして俯く。
予期せぬ外泊延長によって自らの施した曖昧の魔術によるダイナの角の隠蔽が途中で解けてしまった事は、帰ってすぐに本人の口からマナは聞いていた。
本来であればダイナ自身の安全を守るためにも然るべき処置をしなければならない所だが、彼女は今回あえてそれをしなかったのだ。
それはもちろんミナという、ダイナの運命を変えてくれるかもしれない少女に対する、期待の表れでもあるのだが。
「あのような良い子は中々おらぬぞ?むざむざ断る理由もあるまい?」
「それはそうかも、しれません……けど……。」
彼女への返事を急かすようにダイナの頭を優しく撫でるマナだったが、尻尾を揺らす彼の視線は誰かを気にするようにキッチンの方へと向けられている。
しかしながらマナの時間遡行に関する説明を聞き終えたダイナは、少しだけ安心していた。
何故ならば、マナの言うように観測された未来が不変であるなら、もし万が一師弟が将来結ばれなかったとしても、今ここにいる息子が消えてしまう事は無いからだ。
既にダイナにとってデュオスは、気に入らない所は多々あるが居なくなってしまうと淋しい、そんな風にさえ思える家族の一員のような存在になっていた。
「ま、最終的にどうするかはお主自身が決める事じゃが……。」
「別に一度付き合い始めたからと言って、そのまま結婚して其奴とずっと一緒に居なければならない、というワケでも無いからの?」
「はい……。(でも──。)」
気負いすぎているようなダイナの心を少しでも軽くしようとあれこれと助言を送るマナではあったが、生真面目な彼にはむしろそれは逆効果なようだ。
交際=結婚では無いことは理解しているつもりだが、だからと言ってミナとは付き合うだけ付き合っておいて、結婚は師匠としたいなんて都合の良い事がまかり通るとは、彼自身考えて居ない。
それでもあの日ミナからの揺るぎない確かな熱を受けたダイナは、答えがどうであれ真剣に彼女と向き合うつもりだった。
そこへ、お茶をいれ終えたらしいデュオスが戻って来る。
「師匠、お茶が──。」
「あ、言っておくがワシはお主と結婚するつもりは無いからな。」
「!?」
「ッ──!?!?」
戻ってきたデュオスの耳に飛び込んできたのは、マナの口からさらりと放たれた衝撃の一言。
これにはダイナはもちろんそれ以上にデュオスが驚き激しく動揺して、せっかくいれたお茶を全部床へとぶちまけてしまう。
弟子達の間に共通認識としてあった、将来師匠と結婚するという大前提が根本から否定された瞬間である。
「え、あ、なッ……!?ど、どっどうしてですかぁっ?!」
「どうしても何も……のう?息子と結婚する母親がどこにいるんじゃ、たわけ。」
「(い、言い切った……!?)」
困惑し声は震え何故だか涙まで溢れてしまいそうになっているダイナは必死にマナへと問い詰める。
しかし彼女はさも当然とでも言うような態度で、それは笑い飛ばしてさえ見せた。
まるで異なる未来の自分の事など知らぬ存ぜぬとばかりの飄々とした彼女の態度に、慌てて床を拭いていたデュオスの手も思わず止まる。
「そ、それは……っ。」
「例え血が繋がっていなくともワシらは親子、じゃろう?……息子であるお主をそういった目で見るのは、ワシにはとても無理じゃよ。」
「っ……。」
真っ当すぎる正論をぶつけられ返す言葉も無いダイナの頭を、マナはそっと優しく撫でながら諭すように言葉を続ける。
どれ程片方が強い気持ちを持っていたとしても、それを受け取る側にその気が無ければ成立しない。
残念な事だが、結婚とはそういう物である。
「でもそうしたらデュオスさんが──っ!」
「わ、ばかッ!?」
「む……、……。」
自分に課せられた使命を果たせないかもしれない責任感で、胸がいっぱいになってしまったダイナが思わず涙ぐんだ声で口走る。
当然、ダイナとマナにそれぞれ別の説明をしているデュオスは大慌てで彼の口を塞ぐが、時既に遅く。
そんな弟子達それぞれの様子から何かを察したらしいマナは軽くため息を零すと、少し目を伏せてから横目で睨むようにデュオスの方へと目を向けた。
「……ダイナに話したのか?あの事を。」
「っ師匠!ぼ、僕が悪いんですっ!僕がデュオスさんを問い詰めたから……っ!」
「父さんっ!(師匠ッ!気づいてくれ……ッ!)」
父親として息子を庇うように自ら名乗り出るダイナを、偽の息子がわざとらしく父と呼ぶ。
だがその目線は父ではなく、マナの方へと向けられている。
まるで何かを訴えかけるような彼のその視線にすぐに気がついたマナは、意図を理解したように瞬きで応えると、やがてゆっくりと立ち上がった。
「……できる事ならば、お主だけは巻き込みたく無かったのじゃが……こうなってしまってはもはや仕方あるまい。」
「師匠……!」
「うむ。お主も聞いての通り……この者、デュオスは未来から来たワシらの息子なのじゃ。」
「(つ、伝わった!流石です師匠っ!)」
近頃の弟子達の妙な仲の良さや行動、そしてそれぞれの口ぶりから瞬時に状況を把握したマナは、弟子が弟子へついたであろう嘘の内容までを完璧に推理してみせる。
そうして奇跡的に言葉無しでの口裏合わせに見事成功したデュオスは、何とも言えないような表情を浮かべながらも、内心では立ち上がりたい程に安堵し歓喜していた。
「はい!それで、未来の世界が大変な事になってて、師匠が……。」
「……ごめん母さん、父さんには秘密にするって約束守れなくって。(師匠に面と向かってこう呼ぶの……なんか、すっごいムズムズするな……。)」
「良い。もう過ぎた事じゃ。……じゃが、知ってしまった以上、お主にも話しておかねばなるまい──。」
もはや無関係では居られなくなったと判断したマナは、最近の王宮での事件やその背後に潜む幻魔族の男エクデスの存在がある事、そのエクデスこそが未来の世界においてマナ達を失う事になった元凶である事、そして古の戦争において幻魔族達が受けた悲劇の全てを話した。
「そう遠くない内にまた動きがある……そうなったらワシとデュオスで今度こそ彼奴を止めに行く。」
「じゃ、じゃあ僕も──!」
「ならぬッ!!」
「っ!?」
自らも戦いに加勢しようと逸るダイナを、マナは珍しく大きな声で叱りつける。
そのあまりの迫力に、ダイナは思わず獣耳をぴんっと立てて固まってしまう。
デュオスとの本当の関係性を隠しているとは言え、彼女は本気でダイナを戦いには巻き込みたくないと考えていたからだ。
「わかってくれ、ダイナ……ワシの可愛い子よ。……頼む。」
「……っ、……はい、師匠……。」
両肩に手を置いてまっすぐ真剣な目で見つめてくるマナに、ダイナは言いたい事を我慢して飲み込むように頷いて返事をする。
だがその直ぐ側では、デュオスがそんな2人を複雑そうな表情で見守っているのであった。
「(キャロル……やっぱりお前とはもう、会えないのかな……。)」




