第33話『隠されていたもの』
【主な登場人物】
『師匠』
名前:マナ・アスター
性別:女性
種族:ハイエルフ(絶滅危惧種)
年齢:400歳オーバー
容姿:身長140cm エルフ耳 色白 華奢な体型
紫がかった白く長い腰まである髪 金色の瞳
服は白系のワンピースタイプの服が多め
外出時はその上に黒のローブとツバ広の魔女帽子
備考:一人称は「ワシ」 天才魔法技術者、及び魔術師。別名魔術おばけ。
王宮直属の魔術研究機関に勤めていた過去を持ち、数え切れないほどの魔術やそれに関する技術を開発した。
しかし、ものぐさな上に人嫌いであり、面倒事に巻き込まれる気配を察して逃げるように研究所を退職。
それ以来、研究者時代に稼いだお金で買った土地と森で、ダイナを拾うまでは悠々自適な一人暮らしをしていた。
未来から来たという大人になったダイナの話を聞いて強い後悔と責任感を覚え、共に未来を変えようとしている。
『弟子』
名前:ダイナ・アスター
性別:男性
種族:幻魔族(絶滅済みとされていた)
年齢:12歳
容姿:身長152cm(ケモミミを含まない) 狼のような黒い獣耳と尻尾 浅黒い肌 可愛い系な顔立ち 標準体型
赤みがかった黒色で前髪長めの無造作ショートヘア こめかみ辺りからは灰色で小ぶりな巻角 赤い瞳
冬以外は半袖半ズボンで居る事が多い 中でもドラゴンが刺繍された赤いシャツがお気に入り
学校へ行くときは、その上から学校指定の黒いフード付きローブを着用
備考:一人称は「僕」 マナの弟子にして、古に絶滅したとされる幻魔族の末裔の少年。
ある雨の日に、母親からの手紙と共にマナの家の前に置かれた籠の中に入れられていた。
12歳になって学校に通い始めるまで森の外に出たことが無く、少し世間の常識とはズレている所がある。
好きな事は読書と料理、マナに教えてもらう魔術の勉強。最近はそれに学校へ行くことも追加された。
マナの事はもちろん好きだが、その感情の正体や意味を本人はまだ完全には理解していない。
ずっと怪しんでいたデュオスの事を現在は「未来から来た自分とマナの子供」だと勘違いしている。
『もうひとりの弟子』
名前:デュオス(未来のダイナ)
性別:男性
種族:幻魔族
年齢:不詳(見た目は20代後半くらい?)
容姿:身長178cm(ケモミミを含まない) 狼のような白い獣耳と尻尾 浅黒い肌 すっかり大人の顔立ち がっちり体型
ストレスで真っ白になった長いやつれ髪 こめかみ辺りからは黒色で立派な巻角 本来赤の瞳はマナと同じ金色に偽装している
時間遡行の影響で部分的に真っ黒に変色してしまった身体を隠すため、長袖長ズボンでいる事が多い
外出時には、こっちに来てからマナに買い与えられた黒いロングコートを身に纏う不審者スタイル
備考:一人称は「俺」 マナと結婚した未来から来たというダイナ。
ある雷雨の日に落雷と共に全裸で家の前に現れ、不審者だと思ったマナに拘束・保護された。
同じ時間軸に現在と未来の同一人物が存在するという時間的矛盾の発生を回避するために、過去の自分であるダイナには記憶喪失という事で通していたが、現在はダイナの思わぬ勘違いによって2人は父子という事になっている。
未来から来た理由は、この先に待ち受ける最悪の未来を変える為だという。
【その他の登場人物】
『真実を求めるお姫様』
名前:ソフィエル・マベリスキア
年齢:見た目10代後半くらいのレディ
種族:エルフ
性別:女性
容姿:身長165cm 長い金の髪 翡翠色の瞳
綺羅びやかな銀色のクラウン ふわりとしたスカートのピンク色のドレスが特徴的 とても大きい
備考:王宮内部の協力者 好奇心旺盛なお転婆姫に見えて、その実かなり賢く強か。
王宮がひた隠しにし続けてきた真実を知りたいと願っている他、国王である父が病床から抜け出せないのは、兄ラギルの策謀による物ではないかと疑っている。
『国王暗殺を企てる王子』
名前:ラギル・マベリスキア
年齢:20代くらいの見た目 妹とは結構離れてる
種族:エルフ
性別:男性
容姿:身長180cm 金髪 翡翠色の瞳 すらりとした体型
髪を後ろへまとめて前髪を片側だけ垂らしたような髪型 外面は良い
権威を主張するようなギラギラとした装飾派手めの白スーツが特徴
備考:策謀家にして危険な野心家
次期国王に選ばれる事は確実という立場ながら、いくつもの黒い繋がりを持つ。
妹であるソフィエルに疑われている事には気づいており、王宮内では彼女への監視の目を光らせる。
傲慢かつ小心者であり、エルフ以外の種族を心の中では見下している。
円盤型の遺物に封じられていた記録映像から、知られざる古の戦争における大虐殺の真相を知ったマナ達4人は、やがて未来の世界で復讐を先導する事になる幻魔族の男エクデスと、彼と裏で繋がりを持ち国王暗殺を企てているラギル王子の野望を阻止するべく、本格的に動き始める。
裏で糸を引くエクデスを引きずり出す為には、まずはラギルをどうにかしなければならないと判断したマナは、ある作戦を実行に移す事にしたのだが──。
「……見えた、間もなく来るぞ。準備は良いか、デュオス。」
「ちょっと緊張してますけど……大丈夫です、師匠。」
王都から遠く離れた農村地帯、道端の草むらに潜んでいるのは真っ黒なローブに身を包んだ師弟。
見るからに不審な姿だが、今から行うのはもっと危険でもっと犯罪的な事なのだから、服装などは些細な事だ。
やがて馬車の走る音が近づいてくると、マナは静かにデュオスへと指で合図する。
「じゃあ……行きますッ!」
軽く深呼吸をして気合を入れたデュオスが、指を鳴らしながら道の真ん中へと飛び出す。
するとそれに驚いた馬が暴れ嘶き、咄嗟に御者が手綱を強く引いて馬車を停止させた。
「な、何者だ……!」
「……ちょいと後ろに乗ってる奴に用ががあってな、アンタには悪いが大人しくしてもらう。」
見るからに不審なローブ姿の大男に御者が咄嗟に腰から護身用の剣を引き抜くと、
デュオスはゆっくりとそのローブのフードを外して、素顔を見せる。
輪郭を覆う鬣のような髭面に浅黒い肌、そして顔には切り傷と眼帯という絵に描いたような山賊めいた姿。
片手にはろくに扱ったこともない湾刀など握りしめて、雰囲気たっぷりだ。
「ぞっ、賊だとぉッ!?ちくしょう!なんでこんな時にッ……!」
王都近辺は治安も良く大型の獣や賊の類が出る事などは滅多に無い為、それに慣れきって平和ボケした兵士達は、こういった不測の事態に弱い事が多い。
ましてや戦闘をメインに行うのではなく、あくまで馬車を駆る運転手としてそこに座っている彼には、訓練以外で人と戦った経験など無かった。
その上どういうわけか一国の王子が乗っている馬車にも関わらず、護衛の一人も随伴していないというのだからどうぞ狙ってくださいと言っているような物だ。
「おい、何を騒いでいる?さっさと馬車を──!?」
「王子ッ!お逃げくださ──!」
「ごめんね。」
騒がしい外の様子が気になってしまった窓からラギルが顔を出せば、デュオスは軽く謝罪を口にしながら指を鳴らす。
その途端、先程まで緊張気味ながらも震える手でデュオスへと刃先を向けていた御者が、突然気を失ってしまったかのように倒れ、御者席から鈍い音を立てて落下する。
「(やべっ……大丈夫かなあの人……。)」
「ッば、馬鹿め!襲う相手を間違えたな野蛮な賊め!この王室専用馬車には最強の防犯魔術が搭載されて──!」
落下した御者の心配をするデュオスをよそに、大慌てで窓を閉めたラギルが備え付けの緊急用信号弾を発射しようと座席下の隠しレバーを強く引く。
通常であれば即座に馬車上部から信号弾が発射され、瞬く前に王宮自慢の精鋭部隊がすっ飛んでくるという仕組みなの、だが。
「良く知っておるとも。何せ……これを設計したのはワシじゃからな。」
いつの間にやら馬車の屋根の上へと飛び乗っていたマナが、発射される信号弾の光を素手で捕まえるとそのまま握りつぶす。
自らが設計したもの故にその強さも弱さも熟知している彼女にかかれば、もはや王室専用馬車はただの車輪がついた頑丈な箱となってしまうのだった。
「じゃが、まさか何も改善されておらんとはな……平和ボケも些か考え物じゃ。」
いつまでも何百年も前の物を使い続けている王宮の危機感と進歩の無さに、マナが呆れてため息を零しながらも馬車の屋根へとしばらく手を当てると、最強の筈の防犯魔術はあっさりと解除され、侵入者を歓迎するようにその強固な扉あっさりと開く。
「……ちょいと邪魔するぜ。」
「ひ、ひィッ!?馬鹿な馬鹿な馬鹿なッ!何故扉が開くッ!?これは──もがッ!?」
「騒ぐなよ。……ちょっところすぞ。」
何故か空いた扉からすかさず乗り込んできた山賊に怯えて激しく狼狽えながらも喚くラギルの口を、デュオスは大きな手で鷲掴みにして無理やり黙らせると、不慣れながらもドスの効いた低い声で良くわからない脅しをかける。
だがそれでもラギルには十分だったようで、途端に静かになった彼は翡翠色の目を見開きながら激しく頷いた。
「ではワシはワシの仕事をしてくる、上手くやれ。」
「了解っと……じゃ、ちょっとお話しようか?なぁ、王子様。」
「ひッ……!?」
マナは屋根から飛び降りると指を鳴らし、馬車周辺にいくつかの認識阻害効果のある多層魔術結界を展開すると、デュオスへとそう言い残してどこかへと姿を消す。
そして残されたデュオスはしっかりと馬車の扉を内側から閉め、狭い車内でラギルと2人きりの楽しい楽しいお喋りタイムを始めるのであった。
◆◆◆
デュオスがラギルとのお喋りを楽しんでいる一方、そこからもう少し離れた場所に位置するとある農村では──。
「ん、んん……おい、誰か居ないのか!」
山の麓へと位置する古い民家へ向け軽く咳払いをしてから呼びかけるのは、デュオスとお喋り中のはずのラギル王子──もとい、彼に魔術で化けたマナだ。
彼女の仕事はデュオスがラギルへの尋問を行っている間、彼が本来訪れるはずだった目的地へと代わりに赴き、確認と工作をする事だった。
「はいはいただいまっ!お待たせいたしました!どうぞこちらへ!」
数秒ほどして慌てた様子で古民家から飛び出してきたのは、明らかに畑仕事にはそぐわないような白衣めいた姿に身を包んだ1人の男。
男はマナの顔を見るなりへこへことお辞儀をして、家の奥へと招き入れた。
するとすぐに、通常は家の中にはあるはずもない謎の洞窟へと行き着くが、男は慣れた足取りで薄暗いその中を進んでいく。
どうやらこの洞窟は人工的に掘られたどこかへの通路のようだ。
「いやはや、お早いご到着で……!」
「ですが既に準備は整っておりますので、いつでもご覧頂けますよ!」
「う、うむ……。」
途中幾度か顔色を伺うようにしながら振り向いた男がそう告げると、程なくして外の光が見え2人は出口へと辿り着く。
洞窟を抜けた先は全方位を高い山に囲まれた山間部になっており、まるで隠れ里のような場所だ。
とはいえそこは村や集落と呼ぶにはどこか物々しく、そして明らかに不釣り合いな大砲めいた物が数台設置されている、異様な空間であった。
「前回の試射でのデータを踏まえ改良を重ねましたところ、安定性の向上に成功いたしました!」
「目標である連続発射はまだ難しいですが、時間を置いての単発砲撃であれば問題無いかと……はい。」
どうやらここはラギルがエクデスから入手した件の兵器の試射場を兼ねた極秘の工廠のようで、先程から熱心に説明してくれている彼もここで働く技術者の1人であるらしい。
噂の兵器開発が魔技研内や王宮内で行われていたのならもっと早くに誰かが気がついていた筈であり、そうでないのならどこか他の場所に隠されているのであろうと踏んでいたマナだったが、ここがまさしくその場所だったようだ。
こんな場所が存在していたという事と、あんな兵器が既に発射段階まで来てしまっているという事に、マナは技術者としての血が騒ぐのを感じながらも、強い危機感を覚えていた。
「……あれは、試し打ちで空いた穴だったか?」
「はい!そうですね!あれは前回の実験の際の着弾地点になります!」
設置された大砲の向いている先にある、明らかな違和感を感じる山肌を指差しマナは研究者の男へと尋ねる。
砲弾によって吹き飛ばされただとか、強力な魔術によって焼き尽くされたのとは明らかに違う。
そこにはまるで最初から何も無かったかのように、綺麗にぽっかりと球状に抉り取られた痕跡。
あんな物がもし、人や人の住む建物に着弾してしまったら。
「早速、我々の新たな研究成果をご覧になられますか?きっとご納得を──!」
「いや……いい、研究は中止だ。兵器は全て破棄せよ。」
「えっ!?で、ですが……!」
「中止だ、わかったな?」
「か、かしこまりました……。」
一目みてその強力さと危険性を理解したマナは、直ちにこの兵器開発を中止させなければならないと判断した。
例えこの兵器がこの国を守るための物であろうとも、こんな物は存在していてはいけないのだと。
有無を言わせぬようなマナの鋭い眼光に、研究員の男は不承不承ながらも引き下がり、他の研究員達に中止を通達しに向かった。
やはり突然の開発中止宣言に現場には混乱が広がっているようだ。
「(遺物と同等の技術……か。これは、彼奴との戦いも一筋縄では行かぬじゃろうな。)」
そうして強力すぎる兵器の残した傷跡をぼんやりと眺めながら、マナはこの先に待つであろうエクデス達幻魔族との戦いを憂いた。
◆◆◆
馬車襲撃からしばらく、師弟はそれぞれの仕事を終えて再び魔技研にて合流を果たし、待っていたソフィエルに成果の報告をする。
「ワシの方は開発計画の中止と兵器の破棄を命じてきた。……それと、念の為に向こうで使われていた石の回収もな。」
ラギルに扮して一仕事を終えたマナは、所長室の机の上に現地で回収してきたいくつかの例の石を並べる。
もし兵器を修理されるような事があっても、それを制御するためのパーツが無ければ動かせないだろう、という判断からだ。
開発中だった兵器と遺物に共通して見られる幻魔族の技術で作られた青い宝石のようなパーツ。
工廠に居た研究者たちが魔石と呼称していたそれは、小型ながらも高い術式処理能力を秘めているらしい。
「俺の方からは……まずはコレを。」
報告を終えたマナと入れ替わるように前へと進み出たデュオスが懐から取り出し机の上に置いたのは、三角形に折られた2つの薬包紙。
それはいつかのパーティにてラギルがエクデスから受け取った、あの薬であった。
「毒の隠し場所は、指輪の中でした。」
「ほう?」
「指輪の……?」
「はい、実は──。」
興味深そうな反応を示すマナとソフィエルに、デュオスは詳細な説明を始める。
曰く、ラギルが着用していた指輪の1つに実は遺物と見られる物が混じっており、その指輪には小さな異空間を作り出しそこへ自由にアクセスする能力があったのだという。
彼はその能力を用いて異空間に毒薬の入った袋を隠し、必要な時にだけそこから取り出して居たようだ。
「指輪型の遺物……それもきっと、例の先生からの贈り物なのでしょうね。」
「恐らくはな。彼奴にとってはラギルの心を掴む良い売り込みになった事じゃろう。」
「……ところでデュオス、事後処理に抜かりはあるまいな?」
「もちろんです師匠!しっかりと消しておきましたから!」
確認するようにマナが問いかけると、デュオスは鼻を鳴らして自信満々な様子で答える。
それはもちろんラギル王子を消したという意味では無く、馬車襲撃の証拠と尋問に関する記憶を抹消・改竄したという意味だ。
当然、襲撃を含めて言い逃れ出来ないれっきとした犯罪行為ではあるのだが、幸いにも誰にも目撃されてはいない。
「とにかく2人ともご苦労様。心から感謝申し上げますわ。……あとはこの薬が毒である事を証明するだけね。」
「だけど解毒でも身体から毒を排出できなかったんですよね……?」
「それはそうなのだけれど……。」
薬包紙をつまみ上げ真剣な面持ちで語るソフィエルだったが、水を差すようなデュオスの発言に少し困ったような表情を浮かべる。
事実、父リュケウス王への治療に際し幾度となく解毒による毒の強制排出を試みた彼女ではあったが、結局のところ一度も毒は排出されなかった。
原因としては、そもそもこれが毒物の類では無いかもしくは何か特殊な作用を含んでいる為だと考えられる。
「ふむ……これ、1つワシが預かっても良いか?魔法薬学には多少心得がある。」
「ええ、それはもちろん構わないけれど……。」
「師匠は魔法薬作りの名人なんですよ!なのできっとこの薬の事もすぐに……!」
もう1つの薬包紙を拾い上げたマナは、ソフィエルへと確認を取ってそれを懐へと仕舞う。
森の家で一人暮らしをしていた200年余りの間に独学で魔法薬学を学んだマナには一つだけ、この毒であって毒でない薬の正体に心当たりがあったのだが、それを確かめるためにも一度持ち帰り詳しく調べたいと考えたのだ。
「たわけ、まだ調べて見ぬ事には何もわからんじゃろう。……ともかく、何かわかったらまた連絡をさせてもらう。」
「わかったわ。こちらからもまた、何かお兄様に動きがあれば知らせるわね。」
そうしてソフィエルと別れた師弟は、魔技研を後にする。
学校にダイナを迎えに行く時間まではまだ少しある為、しばらく王都をぶらついてから帰ることにしたのだが──。
「師匠!手、繋ぎましょう!」
「はぁ……また職務質問されても知らんぞ。」
期待に満ちたような満面の笑みで激しく尻尾を振りながら手を差し伸べるデュオスに、マナは呆れたように小さく溜息を零しながらも、そっとその手を握り返す。
自分よりもずっと大きく、完全な大人サイズと言えるその大きな弟子の手の感触に色々と思うところがあるようで、マナはじっと見つめるようにデュオスを見上げた。
「……?どうかしましたか、師匠?」
「いや……何でもない。ただ……随分と大きくなったな、と思っただけじゃ。」
「ふふ、そういう師匠はずっと変わりませんね。」
見上げるマナをデュオスは小さく首を傾げて不思議そうに見つめ返す。
そんな彼にマナは誤魔化すようにそう返すが、心の内ではやはり色々と考え込んでいた。
ダイナには自分との結婚など考えず、もっと普通で幸せな人生を送ってほしい、マナのその想いは変わらない。
だがそれはマナとダイナが結婚し、その先に娘が産まれてくる事を望んでいるデュオスの願いとは相反する事だ。
仮に彼の思い通りに事が進み、今度こそ全ての悲劇を回避できたとしてもその先は?
恐らく全てを見届けたデュオスが何も言わず、自分達の前から姿を消してしまうであろう事は、マナには容易に想像できた。
だからこそ、現在のマナにできる事は──。
「──のう、デュオス。」
「はい?」
「お主……再婚してみる気は無いか?」
「……はい???」




