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第26話『あつあつホットサンド』

【主な登場人物】


『師匠』

名前:マナ・アスター

性別:女性

種族:ハイエルフ(絶滅危惧種)

年齢:400歳オーバー

容姿:身長140cm エルフ耳 色白 華奢な体型

紫がかった白く長い腰まである髪 金色の瞳

服は白系のワンピースタイプの服が多め

外出時はその上に黒のローブとツバ広の魔女帽子


備考:一人称は「ワシ」 天才魔法技術者、及び魔術師。別名魔術おばけ。

王宮直属の魔術研究機関に勤めていた過去を持ち、数え切れないほどの魔術やそれに関する技術を開発した。

しかし、ものぐさな上に人嫌いであり、面倒事に巻き込まれる気配を察して逃げるように研究所を退職。

それ以来、研究者時代に稼いだお金で買った土地と森で、ダイナを拾うまでは悠々自適な一人暮らしをしていた。

未来から来たという大人になったダイナの話を聞いて強い後悔と責任感を覚え、共に未来を変えようとしている。


『弟子』

名前:ダイナ・アスター

性別:男性

種族:幻魔族(絶滅済みとされていた)

年齢:12歳

容姿:身長152cm(ケモミミを含まない) 狼のような黒い獣耳と尻尾 浅黒い肌 可愛い系な顔立ち 標準体型

赤みがかった黒色で前髪長めの無造作ショートヘア こめかみ辺りからは灰色で小ぶりな巻角 赤い瞳

冬以外は半袖半ズボンで居る事が多い 中でもドラゴンが刺繍された赤いシャツがお気に入り

学校へ行くときは、その上から学校指定の黒いフード付きローブを着用


備考:一人称は「僕」 マナの弟子にして、古に絶滅したとされる幻魔族の末裔の少年。

ある雨の日に、母親からの手紙と共にマナの家の前に置かれた籠の中に入れられていた。

12歳になって学校に通い始めるまで森の外に出たことが無く、少し世間の常識とはズレている所がある。

好きな事は読書と料理、マナに教えてもらう魔術の勉強。最近はそれに学校へ行くことも追加された。

マナの事はもちろん好きだが、その感情の正体や意味を本人はまだ完全には理解していない。

ずっと怪しんでいたデュオスの事を現在は「未来から来た自分とマナの子供」だと勘違いしている。



『もうひとりの弟子』

名前:デュオス(未来のダイナ)

性別:男性

種族:幻魔族

年齢:不詳(見た目は20代後半くらい?)

容姿:身長178cm(ケモミミを含まない) 狼のような白い獣耳と尻尾 浅黒い肌 すっかり大人の顔立ち がっちり体型

ストレスで真っ白になった長いやつれ髪 こめかみ辺りからは黒色で立派な巻角 本来赤の瞳はマナと同じ金色に偽装している

時間遡行の影響で部分的に真っ黒に変色してしまった身体を隠すため、長袖長ズボンでいる事が多い

外出時には、こっちに来てからマナに買い与えられた黒いロングコートを身に纏う不審者スタイル


備考:一人称は「俺」 マナと結婚した未来から来たというダイナ。

ある雷雨の日に落雷と共に全裸で家の前に現れ、不審者だと思ったマナに拘束・保護された。

同じ時間軸に現在と未来の同一人物が存在するという時間的矛盾の発生を回避するために、過去の自分であるダイナには記憶喪失という事で通していたが、現在はダイナの思わぬ勘違いによって2人は父子という事になっている。

未来から来た理由は、この先に待ち受ける最悪の未来を変える為だという。


【その他の登場人物】


『おさぼりキャット』

名前:ミナ・ホロス

年齢:12

種族:半獣人

性別:女性

容姿:身長152cm 健康的な肌色 小柄ながらすらりとした体型

ふわふわ灰色ショートヘア 猫目 灰混じりの青瞳い 猫系の耳と尻尾 毛色も灰

基本的に学校では学校指定のローブに、ズボン姿で居る事が多い


備考:一人称はボク 中性的でミステリアス サボり魔

母がエルフ、父が獣人 魔術より身体動かすほうが得意 鶏肉が好物

同い年にも関わらず上級クラスに通っているというダイナに、少し思う所があるらしい。

とある一件以来、やけにダイナとの距離が近くなっている。


 普段から昼を食べることをサボりがちなミナの為にお弁当を作る事になったダイナはその日、デュオスよりも早くに起きてキッチンへと立っていた。

 デュオスが家にやって来てからというもの、ダイナ自身は学校に通い始めた事もあって、自ら料理をする機会も少なくなっていた為、こうしてキッチンに立つのは久しぶりだった。


「えーとまずは……。」


 ダイナが今回作るのは、昨日食べたデュオスのチキンサンドを参考にしたホットサンドだ。

 具は昨日の鶏肉の残りをそのまま使い、栄養バランスを考えて刻んだ野菜も一緒に加えていく。


「〜♪」


 野菜を切るザクザクという小気味の良い音が、ダイナの鼻歌交じりに早朝の静かなキッチンへと響く。

 彼がキッチンに立つのはいつだって誰かの為で、その人が喜ぶ顔が見たいからだが、今回は初めて師匠マナ以外の為に包丁を握っている。

 それが何だかとても新鮮で、不安と期待の入り混じったような不思議な()()()を彼に覚えさせた。


「まずはパンを軽く焼いて……。」


 続いて魔力で稼働する()()()()()へと火を灯せば、食パンの調理へと取り掛かる。

 普通のサンドイッチではなく今回はホットサンドという事で、パン自体にも軽く火を通しカリッとした表面に仕上げるつもりだ。

 2枚のパンをそれぞれ対角線上に切って、両面をきつね色になるまで焼いていく。

 パンの焼ける良い匂いが、まだ何も食べていないダイナの空腹を刺激する。


「良い匂い……じゃあ次は……。」


 一旦パンを避難させると、今度はフライパンへと薄く油を引き鶏肉の調理へと入る。

 先ほどまでパンを焼いていたのもあって十分に温まっているフライパン上では、引いた油がすぐにパチパチと音を立て始めた。

 そこへ鶏肉を投入するとすぐに、じゅうじゅうという肉の焼ける音と共に何とも香ばしい匂いがキッチンへと漂い始め、空腹をますます刺激する。

 ついつい()()()()()したくなってしまう衝動を(こら)えて、お肉に火が通るのを待つ間に他の準備も進めていく。


「ミナさん、2つで足りるかな……?」


 金属製の四角いお弁当箱の底に先ほど焼いた食パンを2つ敷き、その上に刻んだ野菜をまんべんなく敷き詰める。

 具材を乗せ終わったらもう1枚上からパンを乗せてサンドするつもりだ。

 この形式なら手も汚れにくいし、フォークなどを別でつける必要も無く手軽に食べられる。


「そろそろソースを……あつっ!」


 お肉がいい感じの色になり始めたのを確認すると、そこへ昨日デュオスが作ったソースの残りを投入する。

 とろみのある茶色いソースが熱したフライパンへと触れた瞬間激しく踊りだし、その一滴がダイナの指へと直撃。

 ソースの思わぬ()()にちょっぴり涙目になりつつも、ソースが全体に良く馴染むように木べらで鶏肉を転がしていく。


「……うおっ、何してんだ……?こんな朝早くから……。」

「あ、デュオスさん。おはようございます。」


 ダイナがソースのはねた指の側面を軽く咥えペロペロしていると、お肉の焼ける匂いに釣られて起きて来たらしいデュオスが階段を降りてきて、驚いたような表情でダイナを見つめる。

 昨日の晩にデュオスには食材の残りを使う事を一応報告してはいたが、ミナのために()()()を作るという事までは伝えていなかったのだ。


「ちょっと友達のためにお弁当を……もう終わりますから、キッチン次どうぞ。」

「お、おう……。(友達の為に……?)」


 てきぱきとした手捌きで焼き上がった鶏肉を先程敷いた野菜の上に乗せ、さらにその上にパンを乗せれば、食欲そそる見事なホットサンドの完成だ。


「ほう……ホットサンドか。()()()()チョイスだ。」

「素直に()()って言えないんですか?もう……。」


 どこか評論家気取りなデュオスが弁当箱を覗き込んでそんな評価を出せば、ダイナは軽く苦笑しながら弁当箱を包むための布を選び始める。

 無難な白色や魅惑的な紫色などなど色々ある中選んだのは、ミナの瞳の色に似た()()布だった。


「……何ニヤけてんだ?」

「っ……ニ、ニヤけてなんか無いですよ!」


 からかうような表情で問いかけるデュオスに対し、喜ぶミナの事を想像して無意識のうちに顔が(ほころ)んでしまっていたらしいダイナは、慌ててきゅっと口を固く結んで取り繕う。

 そうしてダイナは素早くお弁当箱を包み終えると、完成したお弁当を持ってデュオスから逃げるようにキッチンを後にしたのだった。


 ◆◆◆


 時は流れ、お昼休み。

 お腹を空かせているであろうミナの為に、自分と彼女の分の2つのお弁当を持ったダイナが席を立とうとした所で、同じクラスの仲良し女子二人組(サーフィとロマリス)にその両サイドをいつかのように挟み込まれる。


「ちょいちょいちょい待ってダイナっち!座って!」

「聞いたわよ……()()()、本当なの?」

「え……?あの話って、何の話ですか……?」


 立ち上がりかけた所を彼女らに止められたかと思えば、ダイナはサーフィに両肩を押さえられる形で一旦その場に座り直させられる。

 どこか真剣な表情で奇妙な問いかけをしてくるロマリスに、何も心当たりの無いダイナは小さく首を傾げた。


「そりゃあれっしょ!()()()()()()──!」

「1年生の子に校舎裏に呼び出されて、貴方が()()されたって話なのだけれど。」

「……はぇ!?」


 やけに興奮気味に目を輝かせるサーフィを遮るようにロマリスが淡々とした様子で説明するが、その内容に身に覚えが無さすぎるダイナは驚いて、小さく口を開けて固まってしまう。


「で、どうなの!?そこんところ!受けたの!?相手の子の名前は!?」

「落ち着きなさいサーフィ。そもそもまだ本当に告白されたと決まったわけじゃないわ。」

「告白なんて……あ。」


 早く答えが知りたいとせっつくサーフィを冷静なロマリスがなだめると、ダイナはそこでようやく2人が()()()を言っているのか理解したらしく、小さく声を上げる。

 確かに昨日の放課後、ミナとお弁当の話をするために一緒に校舎裏に移動したが、それが何故そんな話になってしまっているのだろうか。


「あ!?あ、って何!?っていうかそのお弁当やっぱり……!」

「……いきなり()()()()()()()とは、中々やるわね。」


 そこで何故か今日はダイナがお弁当を2()()持っている事に気が付いたサーフィは、確信を得たかのように両手で口を覆いながら驚いて目を丸くする。

 それに何かを察したらしいロマリスは、いつものダイナのお弁当とは別の青い包みの方を少し見つめた後、再びダイナの方を見て不敵に笑った。


「い、いや(ちが)っ……!違わないですけど!()()()()()では無いですからね!?」

「まぁまぁそんな照れなくてもいいじゃんね~。」

「聞きたかったのはそれだけよ。……じゃあ、お幸せに。行くわよ、サーフィ。」


 必死に否定しようと試みるも、そう言われるとそう捉えられてもおかしくない行動だと今更気が付いたらしいダイナは、結局完全には否定し切れない。

 そんな様子にニヤニヤとした悪戯な笑みを浮かべて茶化すサーフィを、ロマリスが引っ張ってそのまま連れて行ってしまう。

 そうしてひとり残されたダイナは、眼の前の青い包みのお弁当箱を見て変に意識し始めてしまうが、それでも今更やっぱり止めるなんて我儘な事を言い出すわけにも行かず、謎の()()()()した気持ちを抱えながらいつもの場所へと向かうのだった。


 ◆


 ダイナがいつもの屋根上へと到着すると、普段は大体寝ている事が多いミナが今日は珍しく起きていて、どこか()()()()とした様子で待っていた。


「ミナさん、お待たせしました……!」

「あ……飛び級くん、うん……。」


 お弁当の入った包みを軽く掲げて近づいてくるダイナに、やはりどこか落ち着かない様子のミナは気のない返事をして、こんな所に他に誰も居るはずも無いのに(しき)りに周囲を気にしている。

 どうやら彼女は彼女でここに来るまでに、()()あったらしい。


「はい、約束のお弁当です。今日はチキンホットサンドですよ!」

「ありがとう……それで、えっと……、……。」


 なるべく()()()()をしないようにといつも通り振る舞う事にしたダイナが青い包みを差し出せば、ミナは軽くお礼を言って受け取るが、すぐに開封するわけでも無く何か言いたげに俯いたまま、大事そうにそれを抱えている。

 閉じて固まってしまった口とは対照的に、ミナの愛らしい獣耳(ケモミミ)や細長い尻尾は忙しなく動き続けていて、何かを必死に伝えようとしていた。


「……いやぁ、それにしてもびっくりしましたよ!さっき教室を出ようとしたら先輩達に変な事聞かれて──!」


 やれやれと隣へと腰掛けたダイナが自らのお弁当を開封しながら、苦笑交じりにそんな話をしようとした、その時。

 ぴくりと獣耳(ケモミミ)で反応を示したミナが、ゆっくりとダイナの方を振り向いた。


「……ボクが飛び級くん(キミ)に告白したって()()、だろう?」

「っ!」


 どこか困っているようにも見える表情で苦笑いを浮かべるミナに、ダイナは獣耳(ケモミミ)と尻尾をぴんっと立てて驚く。

 やはり昨日の放課後の事が1()()()()()()()でも噂になっているようで、彼女もまたクラスメイトから何か言われたらしい。


「そ、そうなんですよ!本当困りますよね……!そんな根も葉もない噂!」

「……そうだね。」


 ミナの表情を見て、彼女に()()をかけてしまったと捉えたダイナは、誰にでも無く否定するように小さく怒る。

 だがミナはそんなダイナの反応に、同意を示しながらもどこか()()()()()苦笑した。


「……あ、あの。あんまりお腹空いてなかったら、無理して食べなくても良いですからね?」

「ん……いや、お腹はすいてるんだ。でも……、……ううん、何でもない。」


 いつまでも未開封のままの包みをじっと抱えているミナに、ダイナは少し戸惑うようにしながらも声をかける。

 それに対しミナはそんな風に答えて何かを言いかけるが、結局やめる事にしたようで首を横に振って誤魔化すと、ようやく包みを開封した。


「っっ……え、えーと!あ、温めなおしましょうか!ホットサンド!きっとその方が美味しいですから!ね!」

「え?ああ、うん……?そうだね……?」


 かなり思い詰めているように見えるミナの姿に慌てて話題を逸らすようにそんな提案をしたダイナは、戸惑い気味な彼女から一旦お弁当箱を預かると、それに浮遊(レビテイト)の魔術をかけて宙へと浮かせる。

 それから種火(サン・シード)の魔術で指先に小さな火の玉を発生させると、そのままお弁当箱の底へと指先を移動させ、金属製の箱ごと炙り始めた。


「……()()()()、飛び級くん。」

「え……?」


 突然そんな謝罪をしてくるミナに驚いて、ダイナは思わず彼女の方を見る。

 するとそこには、少し目を潤ませながらも空元気のように無理をして笑う彼女の姿があった。


「ボクのせいで変な噂に巻き込んじゃってさ……本当、()()だよね。」

「あっ、いや……!ミナさんのせいじゃ……。」


 なるべく明るく振る舞おうとするミナの気遣いが痛いほど伝わって、逆にダイナは胸が締め付けられるような気持ちになる。

 そもそも自分がミナにお弁当を作りたいなんて言い出さなければ、こんな事にはならなかった筈なのだ、と。


「……折角お弁当作るって言ってくれたけど、しばらくは──?」


 これ以上の変な噂を立てられないように、しばらく会うのを控えよう、とミナが提案をしようとした、その時。

 何かに気が付いた様子のミナが少し目を丸くして、ダイナの方を見て固まる。

 その視線の先には、ぷすぷすと中から()が出始めている温め中のお弁当箱の姿があった。


「と、飛び級くん!お弁当(それ)……焦げてない?」

「え?!……あっ!?ご、ごめんなさい!」


 心の()()を示すように火加減の制御が甘くなった種火(サン・シード)の火が、いつのまにやら強火へと変わってしまっていて、お弁当を焦がしていたのだ。

 指摘されて初めてその事に気が付き慌てて火を消したダイナは、想定以上に黒く焦げ付いてしまった金属のお弁当箱を見て、絶望したような表情をする。

 良かれと思った事が全部空回りするどころか裏目に出て、あげくこうしてミナの為のお弁当まで焦がしてしまったのだから。


「ほ、本当……ごめんなさい……あ、えっと!焦げちゃったのは僕が食べますから!ミナさんはこっちの僕のを──!」

「……あちちっ!……わぁ、結構温めたね、これ。」


 台無しにしてしまった責任感に駆られたダイナは、そう言ってまだ少ししか手を付けていない自分の分のお弁当をミナへと差し出そうとする。

 しかしミナは何を思ったのか、着ていた制服のローブをミトン代わりにして熱々のお弁当箱を掴むと、苦笑しながら自らの方へと引き寄せた。


「箱は焦げちゃってるけど……うん、()()はたぶん大丈夫そうだね。」


 ミナはそのまま蓋をそっとあけると、温め直されたホットサンドの香ばしい匂いを堪能しながら中身の無事を確認する。

 幸いにも底面のパンが少し焦げてしまっただけで、食べるには支障が無さそうだ。


「で、でも──!」

「これは()()()()()お弁当、でしょ?」


 それでもと狼狽(うろた)えるダイナの鼻先を、優しく微笑むミナの指がそっと押し戻し制止すると、ダイナは少し驚いたようにぴたりと止まり口を閉ざす。

 それから彼女が熱そうにしながらもお弁当箱からホットサンドを1つ取り出すのを、じっと見守った。


「うん……美味しそうだね。じゃあ、いただきます──っ……!」


 やがてミナは小さな口を目いっぱいに大きく開けてホットサンドへと一口かぶりつくが、その瞬間何故か慌てて()()()()ようにホットサンドから口を離して動きが止まってしまう。


「っ……!?(もしかして、美味しくなかった……?!)」


 そんな彼女の反応に、焦がしてしまった事以外は何も失敗していない筈だ、と思いながらもダイナは不安で表情を曇らせる。

 するとミナはちらりとダイナの方を見ると、少し申し訳無さそうな顔をしながらゆっくりと口を開いた。


「……ごめん、飛び級くん。せっかく()()()もらって悪いんだけど──。」

「……。(やっぱり、口に合わなかったのかな……。)」


 ミナの表情に何かを察したようにダイナは俯き、軽く下唇を噛み悔しさを滲ませる。

 だが──。


「ボク、自分が()()なの忘れてたよ……冷まさないと食べられないや。」

「え、えぇ……???」


 気恥ずかしそうに笑って、ミナは小さく舌を出す。

 どうやら慌てて口を離したのは、思った以上にホットサンドが()()()()からだったようだ。

 その予想外の言葉に一気に気が抜けてしまったダイナは、困惑しながらも安堵の息を零す。


「うーん、じゃあ飛び級くん……()()()()してボクに食べさせてくれる?」

「っ……~!からかわないでくださいっ!もうっ!」

「ふふ……ごめんごめん。」


 悪戯でも思いついたようにニヤリと笑うと、ミナはおねだりでもするようにそう言ってダイナをじっと見つめる。

 そんな彼女の言葉を一瞬()()にしてドキリとしてしまうダイナだったが、その表情を見ればすぐにからかわれているのだと理解して、拗ねるようにそっぽを向いた。


 それからしばらくして昼食を終えた2人は、そのうち家に遊びに行きたいだとか他愛のない話をした後で、いつものように午後の授業が始まるまでの短い昼寝の時間へと入る。

 今朝はいつもより早起きしたせいか、かなり眠そうだったダイナは目を閉じてものの数秒で眠りへと落ちた。

 だがその横では、添い寝をしながらもそんなダイナの寝顔をじっと見つめるミナの姿があって──。


「……ほんと、()()()()()()()……ボクからの告白なんて、さ……。」


 誰にでもなく小さな声でぽつりと呟く彼女の灰色がかった青い瞳は、眼の前の不思議な子(ダイナ)をしばらく映して、やがて微睡(まどろ)みゆっくりと閉じていく。

 大好きなお日様の温かさとはまた違った()()()を、その指先に感じながら。

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