第23話『ラギルを追え』
【主な登場人物】
『師匠』
名前:マナ・アスター
性別:女性
種族:ハイエルフ(絶滅危惧種)
年齢:400歳オーバー
容姿:身長140cm エルフ耳 色白 華奢な体型
紫がかった白く長い腰まである髪 金色の瞳
服は白系のワンピースタイプの服が多め
外出時はその上に黒のローブとツバ広の魔女帽子
備考:一人称は「ワシ」 天才魔法技術者、及び魔術師。別名魔術おばけ。
王宮直属の魔術研究機関に勤めていた過去を持ち、数え切れないほどの魔術やそれに関する技術を開発した。
しかし、ものぐさな上に人嫌いであり、面倒事に巻き込まれる気配を察して逃げるように研究所を退職。
それ以来、研究者時代に稼いだお金で買った土地と森で、ダイナを拾うまでは悠々自適な一人暮らしをしていた。
未来から来たという大人になったダイナの話を聞いて強い後悔と責任感を覚え、共に未来を変えようとしている。
『弟子』
名前:ダイナ・アスター
性別:男性
種族:幻魔族(絶滅済みとされていた)
年齢:12歳
容姿:身長152cm(ケモミミを含まない) 狼のような黒い獣耳と尻尾 浅黒い肌 可愛い系な顔立ち 標準体型
赤みがかった黒色で前髪長めの無造作ショートヘア こめかみ辺りからは灰色で小ぶりな巻角 赤い瞳
冬以外は半袖半ズボンで居る事が多い 中でもドラゴンが刺繍された赤いシャツがお気に入り
学校へ行くときは、その上から学校指定の黒いフード付きローブを着用
備考:一人称は「僕」 マナの弟子にして、古に絶滅したとされる幻魔族の末裔の少年。
ある雨の日に、母親からの手紙と共にマナの家の前に置かれた籠の中に入れられていた。
12歳になって学校に通い始めるまで森の外に出たことが無く、少し世間の常識とはズレている所がある。
好きな事は読書と料理、マナに教えてもらう魔術の勉強。最近はそれに学校へ行くことも追加された。
マナの事はもちろん好きだが、その感情の正体や意味を本人はまだ完全には理解していない。
ずっと怪しんでいたデュオスの事を現在は「未来から来た自分とマナの子供」だと勘違いしている。
『もうひとりの弟子』
名前:デュオス(未来のダイナ)
性別:男性
種族:幻魔族
年齢:不詳(見た目は20代後半くらい?)
容姿:身長178cm(ケモミミを含まない) 狼のような白い獣耳と尻尾 浅黒い肌 すっかり大人の顔立ち がっちり体型
ストレスで真っ白になった長いやつれ髪 こめかみ辺りからは黒色で立派な巻角 本来赤の瞳はマナと同じ金色に偽装している
時間遡行の影響で部分的に真っ黒に変色してしまった身体を隠すため、長袖長ズボンでいる事が多い
外出時には、こっちに来てからマナに買い与えられた黒いロングコートを身に纏う不審者スタイル
備考:一人称は「俺」 マナと結婚した未来から来たというダイナ。
ある雷雨の日に落雷と共に全裸で家の前に現れ、不審者だと思ったマナに拘束・保護された。
同じ時間軸に現在と未来の同一人物が存在するという時間的矛盾の発生を回避するために、過去の自分であるダイナには記憶喪失という事で通していたが、現在はダイナの思わぬ勘違いによって2人は父子という事になっている。
未来から来た理由は、この先に待ち受ける最悪の未来を変える為だという。
【その他の登場人物】
『国王暗殺を企てる王子』
名前:ラギル・マベリスキア
年齢:20代くらいの見た目 妹とは結構離れてる
種族:エルフ
性別:男性
容姿:身長180cm 金髪 翡翠色の瞳 すらりとした体型
髪を後ろへまとめて前髪を片側だけ垂らしたような髪型 外面は良い
権威を主張するようなギラギラとした装飾派手めの白スーツが特徴
備考:策謀家にして危険な野心家
次期国王に選ばれる事は確実という立場ながら、いくつもの黒い繋がりを持つ。
妹であるソフィエルに疑われている事には気づいており、王宮内では彼女への監視の目を光らせている。
『暗躍する謎の幻魔族』
名前:
年齢:20代くらいの若さに見える
種族:幻魔族
性別:男性
容姿:身長176cm 青髪 糸目 標準体型 頭部に犬系獣耳 ツノ 腰に尻尾
備考:ラギルに「先生」と呼ばれる謎の人物。
ラギルからの資金援助を受ける見返りに、技術的な何かを提供しているようだが──?
ソフィエルから貰った円盤状の遺物に封じられていたのは、当時のエルフ達が何らかの毒物を用いて悪獣達を虐殺したという、古からの記録映像だった。
後日ソフィエルからの呼び出しを受けたマナがその内容を彼女へと伝えると、彼女はやはりというような反応を見せる。
そしてその際にラギル王子の外出予定表を受け取ったマナは、彼女から依頼によって、リュケウス王の毒殺容疑をかけられている彼の素性を調査すべく、尾行を行う事となったのだが──。
「──というわけで、今日はワシは迎えに行けんかもしれぬから、代わりにデュオスに迎えに来てもらえ。良いな?」
「えぇー……。」
3人で朝食を食べながら今日の迎えの予定についての話をするマナに、ダイナはやや不満げな声を上げて口を歪ませながら、ちらりと横目でデュオスの方を見る。
マナに余計な心配をかけない為にも、デュオスが自分の息子である事を、未だ知らないフリをするという父子の約束をしたダイナは、マナの前では普段通りに振る舞っていた。
「……なんだよ。俺の迎えが嫌なら、学校から自力で帰ってこれば良いだろ?」
「言われなくても──!」
口にしていたスープ入りのマグカップを一度置くと、デュオスは挑発するようにダイナへ一言。
それに対しむっとした表情を見せたダイナが挑発に乗ろうとした所で、マナの小さなため息がそれを遮る。
「はぁ……たわけ共、学校から家までどれだけ距離があると思ってるんじゃ?」
実際ここから毎日歩いて通う事を考えるなら、素直に寮に入ったほうが良いと即座に判断できる程度には、学校との距離は離れている。
ましてや子供の足と体力でなど、あまりにも無茶という物だ。
「デュオス、ちゃんとダイナを迎えに行くのじゃぞ?良いな?……ダイナも、それで良いな?」
「もちろんです師匠!」
「はぁい……。」
相変わらず犬猿の仲らしい二人の弟子に、マナはやれやれとため息を零しながらも、出かける準備をするのであった。
◆◆◆
時刻は夕方、ラギル王子の乗る王宮の専用馬車がまもなく王都から会食の会場となる郊外の屋敷へ向けて出発しようかと言う頃。
昼の内に目的地の下見などを済ませたマナは、変身の魔術によって一羽の鳥に姿を変え、王都を離れ行く馬車を上空から追跡していた。
「(馬車に乗っているのはラギルとその従者1人、それと馬車を操る御者が1人……か。)」
ラギルが馬車へと乗り込む所からずっと見ていたマナは、話に聞いていた通りの人数の少なさに既に疑念を抱いていた。
王都近辺のこのあたりは比較的治安もよく、獣や野盗などの出現は滅多に無い事とは言え、王族のそれも次期国王とも噂される王子が、警備の兵もつけずに王都の外へと出かけるのは、常識的に考えればありえない話だからだ。
「(やはり、あまり人目につきたくない何かがあると見たほうが自然か……。)」
理由について色々と考えては見たものの、結局のところそれ以外に納得の行く答えは見つからず、そうこうしている間に馬車は目的地であるレミノフ伯爵の屋敷へと到着する。
程なくして屋敷の入口前へと止められた馬車からラギルが姿を表し、何やら従者に指示をしたかと思えば、たった一人で屋敷の中へと入っていった。
「(む……従者を馬車の中に待たせている……?すぐに戻るつもりか……?それとも──。)」
自らの従者にさえ知られたくないような後ろめたい事をするつもりなのか、と疑いを強めたマナは事前に調べておいた木の上の見張り地点へと移動する。
窓からは既に会場に集まっていたらしい幾人かの貴族らしき者達の姿が見えたが、そこにいる全員が奇妙な仮面をつけている事が確認できた。
犬や猫、鳥に狐に牛などなど、動物をモチーフにしたデザインの色とりどりの仮面だ。
「(……あれは、奴か。)」
少しして会場へと入って来たのは、獅子の仮面をつけた白いスーツの男。
マナは真眼の魔術でその獅子の仮面を透視して、それがラギル本人である事を確認する。
途端、会場内でそれぞれ談笑をしていた貴族達が一斉にその獅子を取り囲み、腰を低くして各々握手などをし始めた。
スーツに負けず劣らずの派手な装飾が施された悪趣味な獅子の仮面は、魔術で看破するまでもなく一発で誰だかわかってしまうほどに良く目立っている。
「(動物に扮した仮面舞踏会……といった所か?)」
事前に聞いた話ではラギル王子はこういった催事などは好まないという事だったが、外から見ている限りでは特にそういった様子も無く、豪勢な食事や高級そうな酒類などを遠慮なく楽しんでいるように見える。
そうしてマナがしばらくそんな動物に扮した貴族たちの仮面舞踏会を眺めていて、特に収穫も無さそうかと退屈そうに大きな欠伸を1つし始めた頃。
会場へ新たに一人、怪しげなローブ姿の参加者が入って来る。
「(む……?遅刻か……?王族より遅れてやってくるなど、一体どこの──。)」
素顔を確認しようと真眼のままローブの人物へと目を向けた瞬間、マナは言いしれぬ既視感のような物を覚えて、思わずその男の姿を注視する。
デュオスと同じか少し低いくらいの身長を持つ若く青い髪の男の頭頂部には、良く見慣れたような獣耳、そして2本の角が生えていたからだ。
「っ……!(幻魔……っ!?いや、まさか──ッ!)」
ラギルを含む貴族たちに歓迎ムードで取り囲まれたローブの男がフードを外し、その正体を表す。
だが誰もその姿に驚いている様子は無く、ごく普通に接しているどころか、貴族達は何か男に装飾品のような物を貰って喜んでさえいる。
そんな様子に違和感を覚えたマナが一度、真眼の魔術を解除してみると、確かに今そこに生えていたはずの青髪の男の角が忽然と姿を消し──否、角の認識ができなくなったのだ。
「(認識阻害の魔術……!となるとやはり──!)」
青髪の男は、自分が弟子達にしているように何らかの魔術によって角を隠している。
その事を確信した彼女が再び真眼の魔術を発動して、その角の存在をしっかりと再認識しようとした、その瞬間。
「……。」
何らかの気配を感じたのか、その青髪の男は突然マナの止まっている木の方を向くと、その糸のような細い目でまっすぐに見つめ始めたのだ。
「ッ!(気付かれた……?!今のほんの僅かな魔力の揺らぎでか?!いや、待て……ここまでは結構な距離がある筈じゃ!そう簡単には……っ!)」
辺りは既に暗くなり始めていて、鳥に扮しているマナを明るい室内から目視するのは、容易なことではない。
だからと言ってマナは、焦って慌てて飛び立つようなわかりやすい真似はしない。
そうして彼女が平静を装って普通の鳥のふりを続けていると、やがてラギルに声をかけられたらしい青髪の男が、ラギルと共に会場の部屋を離れ別室へと移動し始めた。
「(む……!奴ら、どこへ……。)」
今止まっている木の上からでは見えなくなってしまった2人を追って屋敷の屋根へと飛んだマナは、会話の内容を確認するべく今度は黒い猫の姿へと変身する。
そうして屋根の上から2人が入った部屋を確認すると、そのバルコニーへと音もなく華麗に着地して、カーテン越しに聞き耳を立て始めた。
「──先生、わざわざこのような所までお越しいただいて申し訳ない。近頃、訳あって王宮内では動きづらく……。」
「いえいえ、そちらには随分とお世話になっていますから、このくらいお安い御用です……。ではこちら、いつものです。」
獅子の仮面を外したラギルが青髪の男を先生と呼んで、胡麻を擦るように手など揉めば、青髪の男は懐から小さな麻袋を取り出してラギルへ手渡した。
「──それで、どうでしょうか?計画の進捗の程は。」
「……父上の件に関しては、思わぬ妨害もあり中々順調とは言い難く……。」
「(国王の……?とするともしやあれは──。)」
くるりと背中を向け、部屋の中をゆっくりと歩き始めた青髪の男の意味深な問いかけに、ラギルは歯がゆそうな表情を浮かべて受け取った麻袋を強く握りしめる。
そんなラギルの様子に疑念を抱いたマナが、握りしめられた袋を注視すると、次第に中身が透けて見えて、無数の薬包紙が入っている事が確認できた。
「それで、お尋ねしたいのですが……先生は以前に、この薬は一度に2つ以上与えてはならない、とおっしゃいましたが……それは何故なのでしょうか?」
「えぇ、貴方の言いたい事はわかります。ですが、それはお止めになったほうが賢明ですよ。……ここまで来て、失敗したくは無いでしょう?」
どこか遠回しな質問をするラギルに対し、振り向いた青髪の男は言いたい事を全て見透かしているかのように振る舞い、その上で警告をする。
そんな2人の会話、そしておそらく毒薬であろう袋の中身から、マナは少し推理を始める。
「(あれが毒だと仮定した場合……あれを何度も飲まされているリュケウス王が未だ生きているのはやはり、ソフィエルの治療のおかげか……?)」
「(だとすれば、治療と毒で差し引きゼロの現状を抜け出すために、毒の量を増やしたいと考えるのは当然じゃが……。)」
冷静に嗜めるような先生の言葉に、何か言いたげに何度か歯噛みするラギルではあったが、やがて諦めたように小さく息を零して麻袋を懐へと仕舞う。
そして、そんなラギルの姿を見て、マナはやがて1つの結論へとたどり着く。
「(……そうか、それ以上増えると隠しきれなくなるのか。)」
今現在ラギル王子が父リュケウス王を毒殺しようとしている事がバレていないのは、ひとえにその証拠の不十分さにある。
薬を仕入れるルートはもちろんの事、薬包紙の始末に至るまで証拠隠滅を徹底して行っているが、何より最も厄介なのは何度調べてもリュケウス王の体からは毒物が検出されない事だ。
それ故にラギルがリュケウスに毒を盛ったという確かな証拠が掴めないでいる。
だがあくまでそれは1度に服用される薬が1つなら、という前提の話だとしたら。
「焦る気持ちはわかります。ですがもっと長い目で見なければなりません。……幸いにも、あなた方はエルフ種。寿命の長い種族です。」
「時間は十分にある……そうでしょう?」
「はい……確かに、先生のおっしゃる通りです。」
まるで諭すような物腰柔らかな語り口で、青髪の男はそっとラギルの肩へと手を置く。
王族であり、この国においてはリュケウス王を除けば最も上の立場にある筈のラギルが、先生と呼ぶ謎の男に対して平身低頭とする姿は、中々に奇妙な光景だ。
「──では、次の報告を聞きましょう。」
「は、はい……先生に頂いた設計図を元に試作品を作成しましたが、そちらは概ね問題なく……あとは増産設備さえ整えればすぐにでも──。」
「(設計図……?試作品……?)」
ぱんと手を叩き話を切り替えた青髪の男に、ラギルは毒の件とは別の何かについて報告し始める。
そこで飛び出た奇妙な言葉にマナが小さく首を傾げ、もっと詳しく聞こうと一歩踏み出した、その時。
「ぅにゃッ──!?」
突然部屋の内側からカーテンが勢い良く開かれ、驚いて小さく悲鳴を上げたマナは青髪の男とばっちり目があってしまう。
男がしばし窓越しに驚く猫をまっすぐに見つめた後、窓の鍵へと手を伸ばそうとするのを見て、これは不味いと判断したマナは即座にその場から逃げ出した。
「……逃げられてしまいましたか。」
◆◆◆
間一髪の所でなんとか逃走に成功したマナは、今日はもう夜も遅いという事でソフィエルへの報告は明日にして、一旦我が家へと戻る事にした。
「……はぁ、ただいまじゃ──。」
「──おかえりなさい師匠っ!!」
「ぬぁっ!?」
今日のは流石にくたびれたとばかりに、マナが溜息を1つ零して玄関の扉を開けると同時、飛び込んできたのは小さい方の弟子。
そのまま後ろに倒れてしまいそうになるのを、マナは何とか踏ん張って受け止める。
「た、ただいまじゃダイナ……む?あやつ、どうした?」
「そうだ……!デュオスさん!師匠帰ってきましたよ!」
力いっぱいに抱きしめてくるダイナをぎゅっと抱き返せば、そこでふと大きい方の弟子が机に突っ伏している事に気がつく。
「……あぁ、おかえりなさい師匠……今、ごはん温めますね……。」
「何じゃお主、もしやまだ食べておらんかったのか?」
どうやら机で眠っていたらしく、どこかげっそりとした様子のデュオスは、少し眠たげに返事をすればふらりと立ち上がって、キッチンの方へと歩いて行った。
「師匠が帰って来るのを一緒に待ってました!……あ、帽子とローブお預かりしますね!」
「ああ、ありがとう……ってなぬ?!ダイナお主も食べとらんのか!?……ワシの事など気にせず先に食べてよかったんじゃよ?」
嬉しそうに尻尾を振りながらそう言って、マナの外出用の帽子とローブを預かるダイナの姿に、誰の影響を受けたのかと苦笑しながらも、マナは褒めるように彼の頭を撫でる。
すると程なくして、キッチンのほうから良い匂いが漂ってきて、それに空腹を激しく刺激されたらしいダイナのお腹が小さく鳴った。
「くふ……お腹が空いたじゃろう。さぁさぁ、はよう席につけ。」
「っ……はい!皆で一緒に食べたほうが美味しいですからね!」
小さく笑いつつ急かすマナに、ダイナは少しだけ恥ずかしそうにお腹を押さえながらも嬉しそうに笑っていそいそと席に着く。
そこへ温め直した料理を両手いっぱいに持ったデュオスが戻ってきて机の上へと並べ始めたのだが、かなりギラついた目で自分の手料理を凝視しており、無意識にヨダレまで垂らしかけていた。
「なんじゃデュオス、そんなに腹が減っておったのか?くふふ……。」
「……え?あっ!いえ、その……。」
そのあまりの様子に笑うマナの言葉にハッとして、デュオスは急ぎヨダレを啜れば取り繕い、何やら気恥ずかしそうに目をそらす。
「デュオスさん、今日お昼も食べてないんですって!師匠が帰ってくるかもしれないから、って。」
「ちょっ!?言うなよそれを……!」
「お主……はぁ……たわけ。」
ダイナの無邪気で容赦のない暴露に焦り、デュオスは怒られると思って耳を平たく畳む。
つまり彼は今日、朝の一食分しか食べていない為にこんなにも元気が無かったのだ。
しかしマナはそんなデュオスを叱るに叱れず、溜息を一つ零せばじとりとした目で見上げた。
「次からは、一人でもちゃんと食べるんじゃぞ?まったく……。」
「ごめんなさい師匠……。」
何故こんな当たり前の事を教えてやらねばならないのか、とは思いつつも、思い返せば自分の食生活も随分と変わった物だと、マナは少しだけ昔を懐かしむ。
食べるのが面倒で、森に生えていた適当な木の実類をそのまま食べて済ませていた一人暮らしの時代から、ダイナを拾い、少しはまともな物を取るようになった12年前。
そうして気がつけば弟子が1人増えて、こうして3人賑やかな食卓を囲むようにまでなったのだ。
「くふふ……では、せっかくの料理が冷めてしまわぬうちに頂くとするかの?」




