第21話『地下資料庫にて(後編)』
【主な登場人物】
『師匠』
名前:マナ・アスター
性別:女性
種族:ハイエルフ(絶滅危惧種)
年齢:400歳オーバー
容姿:身長140cm エルフ耳 色白 華奢な体型
紫がかった白く長い腰まである髪 金色の瞳
服は白系のワンピースタイプの服が多め
外出時はその上に黒のローブとツバ広の魔女帽子
備考:一人称は「ワシ」 天才魔法技術者、及び魔術師。別名魔術おばけ。
王宮直属の魔術研究機関に勤めていた過去を持ち、数え切れないほどの魔術やそれに関する技術を開発した。
しかし、ものぐさな上に人嫌いであり、面倒事に巻き込まれる気配を察して逃げるように研究所を退職。
それ以来、研究者時代に稼いだお金で買った土地と森で、ダイナを拾うまでは悠々自適な一人暮らしをしていた。
未来から来たという大人になったダイナの話を聞いて強い後悔と責任感を覚え、共に未来を変えようとしている。
『弟子』
名前:ダイナ・アスター
性別:男性
種族:幻魔族(絶滅済みとされていた)
年齢:12歳
容姿:身長152cm(ケモミミを含まない) 狼のような黒い獣耳と尻尾 浅黒い肌 可愛い系な顔立ち 標準体型
赤みがかった黒色で前髪長めの無造作ショートヘア こめかみ辺りからは灰色で小ぶりな巻角 赤い瞳
冬以外は半袖半ズボンで居る事が多い 中でもドラゴンが刺繍された赤いシャツがお気に入り
学校へ行くときは、その上から学校指定の黒いフード付きローブを着用
備考:一人称は「僕」 マナの弟子にして、古に絶滅したとされる幻魔族の末裔の少年。
ある雨の日に、母親からの手紙と共にマナの家の前に置かれた籠の中に入れられていた。
12歳になって学校に通い始めるまで森の外に出たことが無く、少し世間の常識とはズレている所がある。
好きな事は読書と料理、マナに教えてもらう魔術の勉強。最近はそれに学校へ行くことも追加された。
マナの事はもちろん好きだが、その感情の正体や意味を本人はまだ完全には理解していない。
ずっと怪しんでいたデュオスの事を現在は「未来から来た自分とマナの子供」だと勘違いしている。
『もうひとりの弟子』
名前:デュオス(未来のダイナ)
性別:男性
種族:幻魔族
年齢:不詳(見た目は20代後半くらい?)
容姿:身長178cm(ケモミミを含まない) 狼のような白い獣耳と尻尾 浅黒い肌 すっかり大人の顔立ち がっちり体型
ストレスで真っ白になった長いやつれ髪 こめかみ辺りからは黒色で立派な巻角 本来赤の瞳はマナと同じ金色に偽装している
時間遡行の影響で部分的に真っ黒に変色してしまった身体を隠すため、長袖長ズボンでいる事が多い
外出時には、こっちに来てからマナに買い与えられた黒いロングコートを身に纏う不審者スタイル
備考:一人称は「俺」 マナと結婚した未来から来たというダイナ。
ある雷雨の日に落雷と共に全裸で家の前に現れ、不審者だと思ったマナに拘束・保護された。
同じ時間軸に現在と未来の同一人物が存在するという時間的矛盾の発生を回避するために、過去の自分であるダイナには記憶喪失という事で通していたが、現在はダイナの思わぬ勘違いによって2人は父子という事になっている。
未来から来た理由は、この先に待ち受ける最悪の未来を変える為だという。
【その他の登場人物】
『マナの幼馴染(姉)』
名前:ミィオ・フィード
年齢:マナの5つ上
種族:ハイエルフ
性別:女性
容姿:身長170cm 色白な肌 スレンダーな体型
ルビーのような長い赤髪 シルバーの瞳 エルフ耳 金縁ハーフリムメガネ
縦セタ黒ニット 灰色スラックス 白衣代わりの抗魔素材の白ローブ 真っ赤なハイヒール
備考:一人称はアタシ ストイックな研究者 マナと同時に入所し、現在は所長
妹であるマナに並々ならぬクソデカ感情を抱いているタイプの姉エルフ
技術者としての腕は確かだが、マナとは別の意味で倫理観が欠如している所がある。
『真実を求めるお姫様』
名前:ソフィエル・マベリスキア
年齢:見た目10代後半くらいのレディ
種族:エルフ
性別:女性
容姿:身長165cm 長い金の髪 翡翠色の瞳
綺羅びやかな銀色のクラウン ふわりとしたスカートのピンク色のドレスが特徴的 とても大きい
備考:王宮内部の協力者 好奇心旺盛なお転婆姫に見えて、その実かなり賢く強か。
王宮がひた隠しにし続けてきた真実を知りたいと願っている。
予定外の同行者であるソフィエル姫と共に地下資料庫への潜入に成功したマナは、そこで自分も知らない戦争の記録が記された古い巻物を発見する。
巻物を調べている途中、ソフィエルに発見されてしまい危うくマナの正体について言及されそうになるも、なんとかミィオの助け舟によって窮地を逃れる事ができた。
ソフィエル曰く、自分は歴史に隠された真実を知りたいのだと言っているが、果たして──。
「……ふう、ここにある似たような年代の巻物はこれで全部かしらね。」
ミィオが長机の上に、最初にマナが見ていたのと同じくらいの年代に作成されたと思わしき数本の巻物を並べていく。
どれもしっかりと埃がまとわりついていて、少なくとも10年単位で誰も閲覧していない事が想像できる。
「まぁ埃まみれ……いけないわね、貴重な資料なのに……。」
「……!(こやつ、なんの躊躇もなく……。)」
積もった埃を、自分の綺麗なドレスが汚れてしまうのも厭わず袖で拭い取るソフィエルの姿に、マナは少し驚く。
彼女からは貴族としての気品や上品さこそ感じるものの、心のどこかで無意識に他者を見下すような、嫌な感じが一切感じられ無いのだ。
「……順番に見ていきましょう。ソフィエル様、解読をお願いします。」
「ええ、もちろんよ。任せてちょうだい!」
魔導人形のフィオとしてここに居る今の立場的に、古エルフ文字が読める事を知られたく無いマナは、ソフィエルを促すような形で解読を依頼する。
そしてそれは同時に、彼女が嘘をついているかどうかを確かめる手段でもあった。
もし彼女が解読の途中で、こちらが解読できないのを良いことに何らかの嘘をついたとしても、同じく解読可能なマナには直ぐにそれがわかるからだ。
「ええと、これは──。」
新たに引っ張り出した巻物をゆっくりと広げた後、真剣な眼差しで解読に乗り出すソフィエルの表情をちらりと確認してから、マナもまた巻物へと目を落とす。
そうしてまた彼女が巻物の内容を読み上げるのを、2人は静聴し続けた。
◆
しばらくして、そこにあった全ての巻物の内容を検め終えた3人は、少し休憩を取るように並んで椅子に座っていた。
結論から言って、ソフィエルの読み上げた内容とマナが横から解読した内容に殆ど相違は無かった。
つまりソフィエルは一つもマナ達に嘘をつくようなことは無かったのだ。
「……こちらの巻物にも同じように悪獣と戦ったという旨の記録はありましたが……。」
「肝心の、悪獣の正体というか……詳細についての記述が無かったわねー。」
「……やっぱり意図的に消されて……でもどうして……。」
かつてこの大陸を支配していたという悪獣と呼ばれた者達との戦いの記録と、彼らが有していたとされる用途不明な道具等に関する記述はいくつかあったものの、肝心の悪獣そのものに関する記述はすっぽりと抜け落ちていた。
そのあまりに不自然で恣意的なまでの抜け方に、ソフィエルは親指の爪を噛みながら考え込むように独り言を呟く。
皆沈黙して、どこか場の空気が重くなってしまいそうになった時、突然ミィオが思い出したように手を叩いて口を開いた。
「……そうだわ!姫様?先程のお話の続きなのですが……これまでここに来られなかったのには、何かご事情が?」
「それは、ええと……。」
話題を切り替えようと思い立って咄嗟に話を振ったは良いものの、やはりどこか答えづらい内容のようでソフィエルは口をまごつかせる。
そんなソフィエルの反応に、自分のやらかしを感じてしまったらしいミィオが質問を取り下げようかと考えていた、その時。
「──実は、お兄様のせいなの……。」
重い口を開いたソフィエルが口にしたのは、自らの兄──つまりこの国の王子の話だ。
彼女の兄、ラギル・マベリスキア王子は現在、長らく病床に伏している国王リュケウスに代わり摂政として国家を動かしている超大物であり、その巧みな政治的手腕とカリスマ性で王宮内外に数多くの信奉者を持っている事でも有名な人物だ。
血筋的にも手腕的にも次期国王となるのは確実で、中にはリュケウス王はすぐにでも彼に次の王の座を譲るべきだと言う者も見受けられる程。
その誰もが認める優秀な王子であるはずの兄が、ソフィエルに何をしていたのかと言えば──。
「……お兄様は、きっとお父様を殺そうとしているわ。そして、私も。」
「ッ!?」
「は、はい……?」
あまりに突拍子も無いソフィエルの衝撃的な言葉に、2人はそれぞれ驚愕と困惑の表情を見せる。
ラギル王子が父であるリュケウス王と、妹であるソフィエルの命を狙っている。
これがもし身内同士で啀み合い睨み合っているような、政治的確執の強い家の話であるならばそう不思議な話では無いのだが、少なくともこの王宮においてはそうではない。
傍から見てもマベリスキア兄妹の仲は良好で、2人とも偉大な父に対し敬愛の念を抱いている。
その証拠に、ラギル王子は病床の父リュケウスの快復の為に、遠方より仕入れた特別な薬をわざわざ自らの手で飲ませるなど献身的に看病を行っており、ソフィエル姫もまたそんな父のために毎日、回復魔術による治療を行っているのだ。
「ああ、ごめんなさい。話が突飛すぎるわね……、……実はその──。」
驚く2人の反応に小さく謝罪の言葉を述べたソフィエルは何かを警戒するように周囲を確認してから、小さな声で話し始める。
そうして彼女は今日までここに来れなかったのは、兄ラギルによる不自然なまでの妨害と監視の目があった事。
ミィオの地下資料庫への進入許可申請の話を偶然耳にした彼女が、自らを助手として同行させる事を条件に王宮上層部に口利きをしてくれていた事。
今日はちょうど前々からの予定でラギルが王宮外へと出かけている為、彼の目を盗める絶好のタイミングだった事。
自分が毎日、父リュケウスに対して治療を行っているにも関わらず、一向に病状が良くならない事に疑問と不信感を抱いている事などを話した。
「──だから私は思うの……もしかしたら、お兄様はお父様に薬と称して毒か何かを盛ってるんじゃないか、って……。」
「(また毒の話、か……。)……何か、確かな証拠はお有りなのですか?」
決して冗談ではなく真剣な様子でそう話すソフィエルの姿に、マナは至って冷静に問いかける。
確かな証拠も無しにラギル王子に容疑をかける事は出来ない。
それに、ただ単にソフィエルの治療が上手く行っていないという可能性だってまだ残っている。
「残念だけど、毒を使っているという証拠は無いわ……お兄様はとっても用心深い方ですもの。」
「お父様にお薬をお渡しになる時も、メイド達を下がらせてご自分で……2人だけの大事な話があるとかなんとか言って、ね……。」
悔しそうに下唇を噛み、ソフィエルはやりきれないような苦しい表情を浮かべながら語る。
物的証拠になりそうな物は、ラギルが王の寝室へと薬を持ち込む際に用いているらしい薬包紙くらいの物だが、ラギルが部屋から出てきてもその紙はどこにも見当たらず、恐らくその場で燃やす等して証拠隠滅をしている可能性が高いのだと。
「だけど、私の回復魔術による治療が上手く行っていないとも言い難いの……実際、他の人に対してはちゃんと治療の成果が出ているし……。」
再び考え込むように親指の爪へとかじりつき始めたソフィエルを見て、マナも少し考え始める。
治療は正常に行われているのに、その成果がリュケウス王にだけ出ないのだとしたら、それはその治療による快復を妨げる何らかの要因があると考えたほうが自然だ。
「(しかし相手は王子……捕まえて吐かせるわけにもいくまい。毒を盛っているという確かな証拠が掴めない以上は、別の手段を考える必要がある、か。)」
「不思議な話ね……でも確かにリュケウス王が病床に伏せられてからもう10年近く経つのよね……最初はお妃様が亡くなられた精神的ショックだと聞いていたけれど……。」
無言のまま攻略法を考えているマナの横で、長らく魔技研勤めだけあって他の者よりは王宮内の事情に詳しいらしいミィオが、胸の下で腕を組んで唸る。
精神的理由で倒れたのがきっかけで、その間に別の重病を発症してしまったのだと考えても10年は随分と長い闘病期間であり、快復こそしないものの特段病状が悪化したなどという話を聞かない点から考えても、確かに少し奇妙な話だった。
まるで誰かに調整されているかのように、リュケウス王はずっと病床から抜け出せていないのだ。
「……ごめんなさいね、こんな話。急に言われたって信じられないわよね……忘れてもらって大丈夫よ。」
「姫様がそうおっしゃるなら……アタシは何も聞かなかったことに。」
「(やはり無意味な嘘をつくようなタイプには見えんが……まぁ王宮内のいざこざなど、ワシには関係の無い事か。)」
しばらく暗い顔をしていたソフィエルが、ハッとしたように顔を上げると取り繕ったような笑顔で2人に忘れてくれと告げ、その言葉通りにマナがそれについて考えることをやめようとした、その時。
「──ところで、どうして貴女はお人形さんのフリをしているの?」
「ッ──!」
「!?!?」
日常会話でもするようなトーンで、核心に迫った質問をいきなり投げ込んで来たソフィエルに、マナとミィオの動きが同時に止まる。
勘付かれている事には薄々気づいていたが、よもやこのタイミングでぶっこんで来るとは思わず、落ち着きながらもたらりと冷や汗を流すマナに対し、ミィオは完全な不意を打たれ激しい動揺を見せる。
「──はぁ……やめじゃ、やめやめ!」
「ちょっとアンタ……!?ち、違うんです姫様これは……っ!」
数秒の沈黙の後、一番最初に口を開いたのは質問をされたマナだった。
まるで何もかもを諦めてしまったようにスッとフィオとしての演技を止めた上、机の上に脚など放り出し始めたマナに、ミィオは大慌てでソフィエルへの弁明を図ろうとする。
「……いつから気づいておった?」
「そうね、最初は気の所為かと思ったのだけれど……確信を持ったのは、やっぱりさっきの時ね。」
もはや堅苦しい演技などする気もさらさら無いとばかりに普段の口調で話し始めたマナに、ソフィエルは特に怒るでもなく小さく笑って答える。
2人の頭の中に同時に浮かんでいるのは、つい先程の何故巻物の内容が歴史についての記述だとわかったのか、というシーンだ。
そんな2人のテンポについていけず間で頭を抱えているミィオは既に、処刑されるならなるべく痛く無いのが良いな、等と考えていた。
「やはりか……ワシとした事が、失敗したのう。……それで?どうする、ワシらを捕らえて牢屋にでも送るか?それとも──。」
「あら、どうして?」
「……む?」
このまま処刑台へでも送るか、と問いかけようとした所で不思議そうに首を傾げるソフィエルの態度に、マナもまた小さく首を傾げる。
王族という彼女の立場ならば個人的な心情はともかくとして、地下資料庫という重要な場所への不法侵入者は直ちに捕らえ然るべき処分を下すべきなのだろう。
しかし彼女にはどうやら、別の思惑があるようで──。
「だって貴女達はあくまで魔技研の所長のフィードさんと、彼女に造られた魔導人形のフィオニーツァちゃん、でしょう?」
「え?はい……え?」
確認するように問いかけるソフィエルの言葉に、理解の及ばないミィオは一度肯定してからもう一度聞き返す。
だがその隣には、何かを察したようにうんざりとした表情を浮かべるマナの姿があった。
「……ご要件をお伺いします。ソフィエル様?」
「え?ちょっとアンタ何を……!」
要するにこれはお前たちを見逃す代わりにこちらの言う事を聞け、というソフィエルからの交渉なのだとマナは理解したのだ。
もちろんここで断ればすぐにでも兵士を呼ばれ良くて牢屋行き、悪ければ即処刑であり、もはやマナ達に選択の余地など無い事は一目瞭然だった。
今更になってまたフィオの演技をし始めたマナの不可思議な態度にミィオが困惑する中、ソフィエルはその翡翠色の瞳を僅かに覗かせて、にっこりと笑った。
「うふふ……とっても賢いお人形さん。」
◆
かくして地下資料庫から生きて帰る為の実質的に拒否権の無い契約をソフィエルと結ぶ事となってしまった2人は、入ってきた時と同じようにソフィエルを先頭として資料庫から出てくる。
「お疲れ様です!申し訳ありませんが念の為、資料の持ち出しが無いかだけ確認をさせていただきたく……!」
「え?……あ、そうね。どうぞ……。」
資料庫の入口を警備していた女性兵士が敬礼しながら、恭しく3人に持ち出し検査の旨を申し出る。
色々とあったショックで少し呆然としていたミィオがハッとしてそれを了承すると、上着などを脱がされて簡単なチェックが開始される。
問題なくミィオの番が終わり、次はフィオに扮したマナの順番。
しかしそもそもその身体に収納スペースなど皆無に等しいマナには触られる事すら無く、目視のみでの確認となった。
「(触りもせず……やはりザル警備と言わざるを得ぬか。)」
「それでは最後に──!」
「あら、私も必要なの?どうして?」
「き、規則ですので……できればその、はい……!」
そんな兵士の仕事の杜撰さにマナが冷ややかな目を向けていると、検査の順番が回ってきたソフィエルがごね始めて、不思議そうに首を傾げる。
まさかここで拒否されるとは思っていなかったのか、兵士は困ったように愛想笑いなど浮かべながら何とか彼女から了承を取ろうと奮闘する。
「そうなの……仕方ないわね……。でも、優しくお願いね❤」
「ひょぇっ!?は、はいそれはもちろん……ッ!」
やがてソフィエルは渋々了承したかと思えば、何を思ったか自らドレスの胸元を引っ張ると、その豊満を兵士へと見せつけるような動きをする。
当然そんな事を、それも自国のお姫様にされたとなれば兵士は色々な意味で気が動転してしまって、もはやまともに検査をする事などままならない。
「……あんっ❤」
「ッ──!?も、もも申し訳ございません姫様ッ!!検査は問題ありませんでしたッ!お通りいただいて結構ですっ!」
途中ソフィエルの身体に兵士の手が軽く触れると、ソフィエルはわざとらしい声を上げる。
ただですら落ち着かない様子の兵士がそんな声に耐えられるはずもなく、結局ソフィエルの身体をロクに検査する事無く問題なしの判定を出してしまったのだった。
「うふふ……じゃあ行きましょうか。所長さん、フィオちゃん?」
「え、ええ。参りましょう姫様。」
「(こやつ……やはり侮れんな。)」
軽く胸元を整えると、ソフィエルは愛らしくウィンクなど飛ばして2人へと呼びかける。
相変わらず天真爛漫な彼女に少し疲れを覚え始めたミィオの隣では、マナが軽く目を細め感心するようにソフィエルを見つめていた。
そうして無事に地下資料庫からの脱出に成功した3人は、緊張から震える手でぎこちない敬礼をする女性兵士に別れを告げ、一旦魔技研へと戻るのであった。
「(姫様……めっちゃ良い匂いだったな……。)」




