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第20話『地下資料庫にて(前編)』

【主な登場人物】


『師匠』

名前:マナ・アスター

性別:女性

種族:ハイエルフ(絶滅危惧種)

年齢:400歳オーバー

容姿:身長140cm エルフ耳 色白 華奢な体型

紫がかった白く長い腰まである髪 金色の瞳

服は白系のワンピースタイプの服が多め

外出時はその上に黒のローブとツバ広の魔女帽子


備考:一人称は「ワシ」 天才魔法技術者、及び魔術師。別名魔術おばけ。

王宮直属の魔術研究機関に勤めていた過去を持ち、数え切れないほどの魔術やそれに関する技術を開発した。

しかし、ものぐさな上に人嫌いであり、面倒事に巻き込まれる気配を察して逃げるように研究所を退職。

それ以来、研究者時代に稼いだお金で買った土地と森で、ダイナを拾うまでは悠々自適な一人暮らしをしていた。

未来から来たという大人になったダイナの話を聞いて強い後悔と責任感を覚え、共に未来を変えようとしている。


『弟子』

名前:ダイナ・アスター

性別:男性

種族:幻魔族(絶滅済みとされていた)

年齢:12歳

容姿:身長152cm(ケモミミを含まない) 狼のような黒い獣耳と尻尾 浅黒い肌 可愛い系な顔立ち 標準体型

赤みがかった黒色で前髪長めの無造作ショートヘア こめかみ辺りからは灰色で小ぶりな巻角 赤い瞳

冬以外は半袖半ズボンで居る事が多い 中でもドラゴンが刺繍された赤いシャツがお気に入り

学校へ行くときは、その上から学校指定の黒いフード付きローブを着用


備考:一人称は「僕」 マナの弟子にして、古に絶滅したとされる幻魔族の末裔の少年。

ある雨の日に、母親からの手紙と共にマナの家の前に置かれた籠の中に入れられていた。

12歳になって学校に通い始めるまで森の外に出たことが無く、少し世間の常識とはズレている所がある。

好きな事は読書と料理、マナに教えてもらう魔術の勉強。最近はそれに学校へ行くことも追加された。

マナの事はもちろん好きだが、その感情の正体や意味を本人はまだ完全には理解していない。

ずっと怪しんでいたデュオスの事を現在は「未来から来た自分とマナの子供」だと勘違いしている。



『もうひとりの弟子』

名前:デュオス(未来のダイナ)

性別:男性

種族:幻魔族

年齢:不詳(見た目は20代後半くらい?)

容姿:身長178cm(ケモミミを含まない) 狼のような白い獣耳と尻尾 浅黒い肌 すっかり大人の顔立ち がっちり体型

ストレスで真っ白になった長いやつれ髪 こめかみ辺りからは黒色で立派な巻角 本来赤の瞳はマナと同じ金色に偽装している

時間遡行の影響で部分的に真っ黒に変色してしまった身体を隠すため、長袖長ズボンでいる事が多い

外出時には、こっちに来てからマナに買い与えられた黒いロングコートを身に纏う不審者スタイル


備考:一人称は「俺」 マナと結婚した未来から来たというダイナ。

ある雷雨の日に落雷と共に全裸で家の前に現れ、不審者だと思ったマナに拘束・保護された。

同じ時間軸に現在と未来の同一人物が存在するという時間的矛盾の発生を回避するために、過去の自分であるダイナには記憶喪失という事で通していたが、現在はダイナの思わぬ勘違いによって2人は父子という事になっている。

未来から来た理由は、この先に待ち受ける最悪の未来を変える為だという。



【その他の登場人物】


『マナの幼馴染(姉)』

名前:ミィオ・フィード

年齢:マナの5つ上

種族:ハイエルフ

性別:女性

容姿:身長170cm 色白な肌 スレンダーな体型 

ルビーのような長い赤髪 シルバーの瞳 エルフ耳 金縁ハーフリムメガネ

縦セタ黒ニット 灰色スラックス 白衣代わりの抗魔素材の白ローブ 真っ赤なハイヒール


備考:一人称はアタシ ストイックな研究者 マナと同時に入所し、現在は所長

妹であるマナに並々ならぬクソデカ感情を抱いているタイプの姉エルフ

技術者としての腕は確かだが、マナとは別の意味で倫理観が欠如している所がある。



『真実を求めるお姫様』

名前:ソフィエル・マベリスキア

年齢:見た目10代後半くらいのレディ

種族:エルフ

性別:女性

容姿:身長165cm 長い金の髪 翡翠色の瞳

綺羅びやかな銀色のクラウン ふわりとしたスカートのピンク色のドレスが特徴的 とても大きい

備考:王宮内部の協力者 好奇心旺盛なお転婆姫に見えて、その実かなり賢く強か。

王宮がひた隠しにし続けてきた真実を知りたいと願っている。


 王宮の地下資料庫への入場許可をようやく手に入れる事ができたと知らせを持ってきたミィオだったのだが、その許可を得るための交換条件として提示されたというのが、とある人物の同行で──。


「うふふ、楽しみね~。」

「(何故このような事に……。)」


 王宮内のとある廊下にて、魔導人形(ゴーレム)のフィオに扮したマナと、そのフィオの制作者にして魔技研(まぎけん)現所長であるミィオの少し前方を、スキップなどしながら上機嫌に進んでいる1人の女性が居た。

 綺羅びやかなピンクのドレスに身を包み、金の長い髪と翡翠色の瞳を持つ長身なエルフ。

 その彼女の頭の上では眩い程の宝石が埋め込まれた銀色の(クラウン)が、そしてその誰もが目を引く()()()胸元では、赤い宝玉がはめられた黄金の首飾りがそれぞれ燦々と輝いていた。


「こんにちは、地下資料庫へ入りたいのだけれど……。」

「はい!フィード所長殿!お話は伺って──って姫様!?」

「御機嫌よう~。お邪魔するわねー?」


 資料庫への入口を警備している女性兵士へとミィオが一言声をかけると、事前に話を聞いていたらしい兵士が応対しようとするが、酷く驚いたような反応を見せる。

それはもちろんミィオやましてやフィオ(マナ)にではなく、今まさに姫様と呼んだその女性にである。

 何を隠そう、その女性こそは現国王リュケウス・マベリスキア5世の娘にして回復魔術の名手でも知られる正真正銘のお姫様、ソフィエル姫だったからだ。


「事前の申請通り、アタシとその()()2名よ。問題は無いわね?」

「は、はい!問題ありませんっ!」


突然のお姫様の来訪に緊張気味に敬礼をする兵士は、特に何か身体検査をするわけでもなくすんなりと道をあけるが、その兵士の()()()()()にマナはひとり心の内で呆れていた。


「(なんという()()警備……便利すぎる技術も、考えものじゃな……。)」

「うふふ……ここに来るのは、子供の頃にこっそり遊びに来て怒られて以来ね。」


 楽しそうにスキップで入場していくソフィエルに続いて、マナとミィオの2人も資料庫へと入場する。

 王宮の入り口での防犯チェックでも何の問題も無く()()()()()()()()()新規に許可登録する事が出来てしまっており、フィオの姿を以前に見かけた事のあるはずの兵士でさえそれを疑問に思う者は居なかったのだ。

 それはもちろん、それ程までにフィオがマナに()()()()に造られているという事でもあるのだが。


「中は結構暗いですね……今、()()()を──あら?」


 暗い資料庫内を魔術で照らそうとしたミィオだったが、何も起こらずただ指を鳴らした音だけが静かな室内に鳴り響く。


「ふふ、そうなの。この資料庫の中には()()()()()()()()()特殊な結界が張られていて、魔術を行使する事ができないのよ。」

「そうとは……しかしここにある資料の貴重さを考えれば、当然とも言えますわね。」

 

 部屋の仕様を知っていたらしいソフィエルがそんなミィオを見ながら小さく笑って、入口近くの机の上に置かれた古びたランタンへとマッチで火を灯す。

 魔術由来では無い、原始的な温かみのある光が暗い室内を明るく照らし出した。


「……マスター、フィオは()()()()()()の探索に入ります。」

「ええ、お願いね。」

「あら?お待ちになって?」


 フィオへと成りきっているマナが小さく申し出て、単独行動を取ろうと試みる。

 敵か味方かは未だはっきりとはしないが、少なくとも()()である事には変わりないソフィエルと一緒では、好きに目的の資料を探す事も難しいからだ。

 しかしそんなマナを、ソフィエルが呼び止める。


「はい、ランタンよ。暗いから足元気をつけてね、フィオちゃん。」

「……ありがとうございます、ソフィエル様。(フィオちゃん……?)」


 ランタンをもう1つ取れば、ろうそくを用いて自らのランタンから火を移し、ソフィエルはマナへとそっと手渡してくる。

 一般的に見れば()()に分類される筈の魔導人形(ゴーレム)に対して、まるで友人のように接してくるソフィエルの態度に、マナは少し不思議に思う。

 ミィオからフィオへの愛情(こじらせ)とはまた違う初対面の、それも()()()()()()()()()へ何故そこまでするのか。

 王族としての教育の賜物か、それとも単純にソフィエルが変わり者だからなのか、考えても答えは出ない。

 マナはランタンを受け取ると、小さくお辞儀をして単独行動を開始した。


「(過去に出版された本の初版……既に()()となった本……ふむ……。)」


 どこかひんやりとした暗い資料庫の中を、マナはランタンの明かりを頼りにしながら進んでいく。

 古今東西の様々な本が所狭しと並べられたとても大きな本棚。

 並ぶ本の装丁(そうてい)の変化を眺めているだけでもその歴史の長さを感じ取る事ができる。

 最近の物から古い物へと順に追って行くと、やがて現在一般的に見られるような()の形からは外れた、巻物(スクロール)の保管棚へと行き着いた。


「(内容に期待ができそうなのはこのあたりからか……それにしても山のように埃が積もっているな、長らく誰も触っておらんのか。」


 ものぐさな性格ゆえにあまり掃除をするタイプでは無いマナでさえ、流石に少し引くようなレベルで積もった埃の山に、小さく顔を(しか)める。

 それから巻物の1つを手に取ると軽く埃を拭い、破ってしまわないように近くの机の上で慎重に広げていく。


「む……。(古エルフ文字……となると、()()()()の前じゃから……800年以上前か。)」


 古い時代のエルフの言葉で書かれた巻物の内容を、マナは指でなぞりながらゆっくりと解読していく。

 現在一般的に使われている()()()では無い、各種族特有の言語。

 その中でもエルフの言葉の歴史は古く、現代のエルフ達の殆どは古エルフ文字を読むことはできない。

 それでもマナがこれを読めるのは、幼き日に受けた祖母からのスパルタ教育の賜物に他ならなかった。


「(一部が欠損してしまっているが……これは、()()の記録……?)」


 マナが生きて来たここ数百年の間にも、小競り合い程度の戦争やそれに近しい事は幾度と無くあった。

 それより以前の歴史や、大規模な戦争の記録についてもマナは歴史書などからおおよそ把握している。

 だがこの古い巻物に記された戦争については、マナ自身も全く知らない話だった。


「(マベリスキア建国より前か……?となると1()0()0()0()()──。)」


 長机いっぱいに巻物を広げて、今自分がフィオに扮している事さえ忘れてしまうほどに真剣な表情で内容を繰り返し読み込むマナが、そこに記された真実を読み解こうとしていた、その時。


「──()()読んでるのかしらー?」

「ッ!?」


 背後の暗がりからぬっと現れたソフィエルに声をかけられ、マナは思わず小さく身構える。

 読む事に集中していたのもあるが、何故かソフィエルがこの暗い資料庫の中をランタンも持たずに移動してきた為、気がつくのが遅れてしまったのだ。

 少し離れた場所でははぐれたソフィエルを探しているらしい、ミィオの物であろうランタンの光が右往左往と動いているのが見えた。


「あら、驚かせちゃった?ごめんなさいね。うふふ。」

「……いえ、古い歴史が記された巻物を確認していました。」

「そうなの?なんて書いてあったのかしらー?」


 ニコニコとした楽しげな表情で問いかけるソフィエルに、マナは一瞬考える。

 このまま内容を正直に伝えた所で、ソフィエル側から何か有益な情報が出てくる可能性は低いだろう。

 それどころか自分が古エルフ文字を解読できると知られたら、()()()()()をさせてしまうかもしれない。

 となれば、ここで取るべき行動は一つ──。


「不明、です。フィオの言語解析ベースには登録されていない言語です。」

「そうなのね~……。」


 内容は解読できなかったとしらを切るマナに、ソフィエルは少しだけ残念そうに眉を下げ、それから机に両手をついて巻物を覗き込む。


「……あら?でもだったらどうして、()()()()()記録だってわかったのかしら?」

「ッ──!!(しまっ……!!)」


 何故解読できない言語なのに、内容を把握しているのか。

 らしくない初歩的にして致命的なミスにマナが動揺し小さく後ずさると、ゆっくりと身体を起こしたソフィエルが、その優しげな笑顔のままマナへと顔を近づけていく。


「……フィオちゃん?」

「ハイ、なんでショウ?ソフィエル様。」


 追い詰められたマナは、表情だけは無を装っていても背中では冷や汗が止まらない。

 魔術の発動を封じられたこの状況下では()()()()()()()()でしか無いマナは、それでも演技を貫き通さんとする。

 バレれば一巻の終わり、この部屋から脱出しない限り万に一つでも助かる見込みは無い。


「貴女、本当は──。」

「あ!ここにいらしたんですかソフィエル様!」


 ソフィエルの獲物を捉えたような翡翠色の瞳が僅かに怯えるマナの瞳を捉え、何かを口走ろうとした、その時。

 置いて行かれていたミィオがようやくソフィエルの姿を発見して、小走りで近づいてきた。


「……あら、所長さん。」

「あら、じゃないですよ全く……こんな暗い所で姫様が転んで怪我でもしたら、こっちの首が飛びますよ。」


 途端、つい今しがたまでの鋭い目線が嘘のようにニコニコとした表情に戻り、ソフィエルはミィオの方へと向き直る。

 思わぬ助け舟によって何とか窮地を逃れたマナは、緊張から昂ぶる心臓をなんとか落ち着かせようと、自分の胸に小さく手を当てた。


「うふふ、そうね。ごめんなさい、気をつけるわ。……それより所長さん、フィオちゃんが何か()()()()を見つけたみたいよ?」

「面白い物……?」


 机の上に広げられた巻物を指差すソフィエルの言葉に、ミィオは興味深そうに巻物へと目を落とす。

 その瞬間マナに向けられたのは、横目で釘を差すようなほんの一瞬のソフィエルの視線。


「っ……。(もはや()()()()()と考えたほうが良いか……?だが、それなら何故すぐに警備(ひと)を呼ばぬ?)」


 相手の考えが不明な以上、迂闊に動けないマナはソフィエルからの視線を遮るようにミィオの陰へと移動する。


「うーん……古エルフ文字なのはわかるけど……アタシ()()読めないわね……。」


 そう言って困ったように胸の下で腕を組みながらも、ミィオはちらりとマナの方を見る。

 彼女自身もマナならば古エルフ文字を読める事を知っているが、今はフィオとしてこの場にいる彼女にそれを頼む事はできない。

 折角何か資料を見つけても、それを解読できないのでは無いのと同じとミィオが頭を悩ませていると、突然ソフィエルが静かに手を上げた。


「じゃあ、代わりに私が()()()差し上げましょうか。」

「……!?(なぬ!?)」

「え?姫様もしかして古エルフ語を話せるんですか?」

「話せるって程では無いのだけど……昔お父様に習ったから、少しなら読めると思うわ。」


 自ら巻物の内容を解読することを申し出たソフィエルに、マナはその()()がますます理解できずに困惑する。

 歴史書にも記載されていない、古い戦争の記録。

 それは王族やこの国にとっての()()()な歴史だから、現代へ伝えられていなかったのだとマナは考えていたからだ。

 にも関わらず、わざわざ王族の身であるソフィエルがそれを解読してみせようと言うのだから、普通に考えて彼女には()()()()()しか無い筈なのだ。


「なら是非。」

「ええ、任せて。えーっと、まずは……『我ら、遠きより来たりて知る。この地に蔓延(はびこ)りし悪獣(あくじゅう)を』──。」


 そうして巻物の内容を読み上げ始めたソフィエルの声に、ミィオもマナも耳を傾けて静かに聞き入る。

 そしてそれはやはりマナの予想通り、歴史書には載っていない()()()()()()()()()であった。


 かつて新天地を求め他所からやってきたエルフ達は、当時この地を支配していた()()と呼ばれる凶悪な種族に遭遇した。

 悪獣は()()()()()()()を持つ異形の種であり、酷く凶暴でその上強力な()()を操る存在だった。

 それでもエルフ達は勇敢に戦い、その果てに悪獣を()()する事に成功して、以来この地はエルフ達の物となった。


「『そうして我らはこの地に根を下ろし、新たなる国を開きて──』……。」


 そのような内容が記された巻物を読み上げ終えたソフィエルではあったが、その表情はどこか浮かない様子で、何か物言いたげな(しか)めっ面をしていた。


「……姫様?どうかなさいましたか?」

「え?うん……そうね。……この話、昔私が聞いた話とは少し()()みたい。」

「違う……と言いますと?」


 曰く、ソフィエルは幼少の頃に父リュケウスより似た話を聞いた覚えがあるのだが、ここに記されている内容とは大きく違う点があるのだと言う。

 それは()()()()()()()エルフ達が悪獣に勝利したのかである。

 ここにある巻物には、勇敢に戦ったとしか書かれておらず具体的にどう勝利したかは書かれていないのだ。


()、よ。このお話には毒が出てこないの。……確か、お父様から聞いた話には出てきたはずなのだけれど……ううん。」

「毒……?」

「(もしや、此奴……?)」


 自らの記憶違いか、はたまた他の話と混同してしまっているのか、ソフィエルは両手で頭を抱えながらうんうんと唸る。

 彼女の言うように毒を用いて悪獣に勝利を果たしたというのであれば、確かにあまり()()()()()()とは言いづらいかもしれない。

 だがこういった戦いの記録などにおいては基本的にそれを伝えるのは勝者であり、その過程で話の内容が()()される事は何も不思議な事では無いのだ。

 そんな隠すべき汚点とも言える毒の話をわざわざ口にしたソフィエルに、マナはある疑問を抱いた。


「その毒の話が凄く怖くて……その日の夜、お兄様に泣きついた覚えがあるもの、それは確かよ。」

「……この記録に、毒物を使用したという話が出てこない事が()()なのですか?」


 記憶は確かだとしながらも唸るソフィエルに、マナが少し踏み込んだような問いかけをする。

 自分が聞いた話とここに記されている内容に相違があるから不満を感じているのか。

 だが決して()()()()()()()()はずなのだ、と。


「……不満、というよりは……そうね。私はきっと、()()()()()()()を知りたいだけなのよ。」

「本に書かれている歴史が本当に真実なのか。何か隠されているなら、それは()()隠されているのか……。」

「私はそういう事を知りたいの……だから今日は()()無理を言って、ここに助手として同行させてもらったのよ。」


 そう語りながら軽く目を伏せ、巻物の記述を指でそっとなぞるソフィエルの姿に、マナは一つの確信を得る。

 彼女は決して敵ではない、ただひたむきに真実を追い求めているだけだ。

 むしろ捉え方によっては()()になりうる存在なのだろう、と。


「なるほど……真実の探求、理解できます。……ですが、姫様ならいつでも好きな時に()()に来られたのでは?」


 ソフィエルの考えを聞いて同意を示したミィオではあったが、そこで浮かんだ当然の疑問を投げかける。

 あくまで魔技研(まぎけん)の研究員であるミィオや部外者であるマナならばともかくとして、王宮内のどこへでもいつでも好きに行くことのできる正真正銘のお姫様であるソフィエル姫が、何故今までここ地下資料庫にひとりで調べに来る事が無かったのか。

 先ほど彼女自身も言っていたが、ここに来るのは子供の頃以来らしい。


「……それは、そうなんだけどね。」


 何か一言では言えないような深い事情(ワケ)があるようで、ソフィエルは誤魔化すように苦笑した。

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