第12話『マナという名前』
【主な登場人物】
『師匠』
名前:マナ・アスター
性別:女性
種族:ハイエルフ(絶滅危惧種)
年齢:400歳オーバー
容姿:身長140cm エルフ耳 色白 華奢な体型
紫がかった白く長い腰まである髪 金色の瞳
服は白系のワンピースタイプの服が多め
外出時はその上に黒のローブとツバ広の魔女帽子
備考:一人称は「ワシ」 天才魔法技術者、及び魔術師。別名魔術おばけ。
王宮直属の魔術研究機関に勤めていた過去を持ち、数え切れないほどの魔術やそれに関する技術を開発した。
しかし、ものぐさな上に人嫌いであり、面倒事に巻き込まれる気配を察して逃げるように研究所を退職。
それ以来、研究者時代に稼いだお金で買った土地と森で、ダイナを拾うまでは悠々自適な一人暮らしをしていた。
未来から来たという大人になったダイナの話を聞いて強い後悔と責任感を覚え、共に未来を変えようとしている。
『弟子』
名前:ダイナ・アスター
性別:男性
種族:幻魔族(絶滅済みとされていた)
年齢:12歳
容姿:身長152cm(ケモミミを含まない) 狼のような黒い獣耳と尻尾 浅黒い肌 可愛い系な顔立ち 標準体型
赤みがかった黒色で前髪長めの無造作ショートヘア こめかみ辺りからは灰色で小ぶりな巻角 赤い瞳
冬以外は半袖半ズボンで居る事が多い 中でもドラゴンが刺繍された赤いシャツがお気に入り
学校へ行くときは、その上から学校指定の黒いフード付きローブを着用
備考:一人称は「僕」 マナの弟子にして、古に絶滅したとされる幻魔族の末裔の少年。
ある雨の日に、母親からの手紙と共にマナの家の前に置かれた籠の中に入れられていた。
12歳になって学校に通い始めるまで森の外に出たことが無く、少し世間の常識とはズレている所がある。
好きな事は読書と料理、マナに教えてもらう魔術の勉強。最近はそれに学校へ行くことも追加された。
マナの事はもちろん好きだが、その感情の正体や意味を本人はまだ完全には理解していない。
『もうひとりの弟子』
名前:デュオス(未来のダイナ)
性別:男性
種族:幻魔族
年齢:不詳(見た目は20代後半くらい?)
容姿:身長178cm(ケモミミを含まない) 狼のような白い獣耳と尻尾 浅黒い肌 すっかり大人の顔立ち がっちり体型
ストレスで真っ白になった長いやつれ髪 こめかみ辺りからは黒色で立派な巻角 本来赤の瞳はマナと同じ金色に偽装している
時間遡行の影響で部分的に真っ黒に変色してしまった身体を隠すため、長袖長ズボンでいる事が多い
外出時には、こっちに来てからマナに買い与えられた黒いロングコートを身に纏う不審者スタイル
備考:一人称は「俺」 マナと結婚した未来から来たというダイナ。
ある雷雨の日に落雷と共に全裸で家の前に現れ、不審者だと思ったマナに拘束・保護された。
同じ時間軸に現在と未来の同一人物が存在するという時間的矛盾の発生を回避するために、過去の自分であるダイナには記憶喪失という事で通しているが、ちょくちょく怪しまれている。
未来から来た理由は、この先に待ち受ける最悪の未来を変える為だという。
【その他の登場人物】
『マナの幼馴染(姉)』
ミィオ・フィード
年齢:マナの5つ上
種族:ハイエルフ
性別:女性
容姿:身長170cm 色白な肌 スレンダーな体型
ルビーのような長い赤髪 シルバーの瞳 エルフ耳 金縁ハーフリムメガネ
縦セタ黒ニット 灰色スラックス 白衣代わりの抗魔素材の白ローブ 真っ赤なハイヒール
備考:一人称はアタシ ストイックな研究者 マナと同時に入所し、現在は所長
妹であるマナに並々ならぬクソデカ感情を抱いているタイプの姉エルフ
技術者としての腕は確かだが、マナとは別の意味で倫理観が欠如している所がある。
『少女型魔導人形』
名前:フィオ(フィオニーツァ)
年齢:Ver2.7
種族:魔導人形
性別:無機物(女性型)
容姿:瞳の色が銀な事以外ほとんどマナと一緒
関節の都合上、衣服はピンク色のエプロン1枚で露出度が高い 胸の中央に赤い制御コア 球体関節
備考:一人称は「フィオ」 妹への想いをこじらせたミィオが産み出した次世代型の魔導人形
コンパクトなボディに様々な機能を詰め込まれているため、見た目より中々重い。
現在は研究所内のアイドル兼雑用係として試験運用中。ミィオの事を御主人様と呼ぶ。
自らの創り出した少女型の魔導人形の容姿がマナに酷似している事を本人に指摘されたミィオは、所長室の椅子をマナに奪い取られるような形で床に正座をさせられている。
その右隣には件の魔導人形であるフィオニーツァが目を閉じ動力を切られた状態で座っており、そして反対の左隣には何故か一緒に正座をするデュオスが並んでいた。
「──はい、師匠!俺、質問があります!」
「うむ、申してみよ。」
元気よく挙手をするデュオスへと、中々上質で触り心地が良いらしい革の椅子に深く座ったマナが、肘掛けを撫でながらびしっと指をさす。
マナがとても怒っている事と、それについて心当たりがあるらしいミィオが全面的に非を認めている事はわかったが、肝心のその理由についての部分がデュオスにとっては不明瞭だったからだ。
「具体的にミィオさんは何をやらかしたのでしょうか!?やっぱり師匠に無断で師匠そっくりな魔導人形を作った事でしょうか!」
「良い質問じゃ。もちろんそれもあるが……ここは1つ、その理由を本人の口から説明してもらおうかの?なぁ、ミィオ?」
デュオスの率直な質問内容に対し肯定を挟みつつも、マナはそのじとりとした金の瞳をミィオの方へと向けると視線で静かに圧をかけ始める。
最初は必死に床を見つめマナから目を逸らしていたミィオではあったものの、やがてその圧に負けたのかゆっくりと深呼吸をすると、隣へと座る娘の方へとおもむろに手を伸ばし、幾重もの細かな部品で紡がれたその小さな手へと自らの手をそっと重ねた。
「……アタシが勝手にアンタに似た魔導人形を作った上に、この子に禁じられた名前をつけたから……でしょ?」
「禁じられた……名前?」
「うむ、それを説明するには少し昔話をせねばならぬか……。」
ばつの悪そうな表情を浮かべながら渋々といった様子でミィオは自らの罪を告白する。
そんな彼女の口から飛び出した奇妙なワードに引っ掛かりを覚えたデュオスが、再び首を傾げてその意味を問うようにマナの方へと目を戻すと、マナはその大きな椅子の上で胡座をかくように足を組んで座り直し、やがて語り始める。
「今から随分と昔のこと……そうじゃな、ワシがまだマナでは無かった頃の事じゃ──。」
◇◇◇
400年と少し昔。
人里から遠く離れた僻地に位置する広大な森には、ハイエルフと呼ばれる少数種族が住んでいた。
ハイエルフは言わばエルフの祖であり、現在様々な所で姿を見る事のできるエルフ達は、遠い昔に他の種と交わったハイエルフの子孫たちである。
基本的に他種族に対して友好的なエルフに対しハイエルフは排他的で、森という閉鎖されたコミュニティの中でその長い一生を終える者が殆どだ。
外部からの来訪者を良しとせず、他種族との交友を図ろうという気はさらさら無い言わば純血主義に近く、その上長大な寿命を持つが為に繁殖行動を滅多に行わない。
故にその数は年々減りつつあり、ゆるやかな衰退の果てに種の絶滅を待つだけの存在であった。
そんな森で生まれたハイエルフの1人であるマナは幼くして両親を病気で失くし、他に頼れる肉親も居なかった為、5歳の頃にミィオの妹としてフィード家へと引き取られていた。
姉妹の仲はとても良く、それまで一人っ子であったミィオも突然出来たマナという可愛い妹にメロメロと言った様子で、かなりの溺愛っぷりだったと言う。
しかしそんな仲睦まじい2人の間を引き裂くような出来事が、突然やって来る。
それはミィオが17歳、そしてマナが12歳になった頃の事。
遠い昔に森を出たきり行方知れずとなっていた筈のマナの祖母にあたる人物が、唐突にハイエルフの森へと帰ってきたのだ。
「お前がワシの……そうか。こっちへ来いフィオニーツァ。」
「だ、誰……っ!?やだっ!引っ張らないで……!」
「フィオ!?ちょっと待ちなさいよアンタ──!パパ!?何で──ッ!」
祖母はマナの腕を無理矢理に掴み、問答無用でミィオの家から連れ出すと、かつてマナが両親と共に住んでいた住処へと連れて行ってしまう。
もちろんミィオはマナを引き留めようとしたが、それをミィオの父が阻んだ。
何故ならばマナの祖母の名もまたマナであり、その名前はハイエルフにとって最も優れた魔術師である事を示す称号でもあったからだ。
そして祖母は自らの死が近い事を悟り、その技術と経験を次代のマナへと引き継がせるべくして森へと戻って来たのであった。
「……お前には今日より徹底的にワシの知る魔術の全てを叩き込む。もちろん異論は認めん。わかったな、フィオニーツァ。」
「私のおばあちゃん……なの?……ミィオ姉のとこに帰して──!」
「異論は認めぬと言った筈じゃが?……恨むならばお前を置いて早々にくたばったお前の両親と、生まれ持った才能を恨め。」
その特徴的な左目の黒い眼帯姿から、外の世界で隻眼の魔女と呼ばれていた先代マナは、マナという最高の栄誉たる名を継いだ後、マナの母にあたる娘を産み育てても尚、外の世界への興味を抑えきれず自ら森を飛び出したハイエルフの異端者であった。
そのあまりに貪欲なまでの魔術への探究心から、ある者には恐れられまたある者には敬われるような人物であったと言い、実際今なお多く使われている現代魔術の根幹となる物の大半は、彼女とその仲間の魔術師によって編み出されたとされている。
そんな人物に目をつけられてしまったマナは、そこから成人を迎えるまでの約6年間、朝から晩まで徹底的にありとあらゆる魔術を叩き込まれる事となる。
食事の時はもちろん眠っている時でさえ、夢に干渉する魔術によって祖母による授業は続いた。
そうして月日は流れ、6年後。
「……フィオ。何だか久しぶりね……大丈夫?」
「ああ、ミィオ……問題ない。」
「……そう。」
成人の儀を執り行うべく久しぶりに顔を合わせたミィオは、すっかりと雰囲気が変わってしまった妹の姿に不安を覚え思わず声をかけるも、どこか素っ気ない返事を返され小さくショックを受けていた。
何故ならばその時にはもう既にマナの喋り方や佇まいが、あの恐ろしい隻眼の魔女そっくりになってしまっていたからだ。
その後何事も無く儀式は終わり、当たり前のように祖母と暮らす家へと戻るマナの背を、ミィオは少し寂しげに見つめていた。
それから、数日後の夜の事。
「……ワシの命はまもなく尽きる。次にこの名を受け継ぐのはお前だ、フィオニーツァ。」
「……はい。」
「そうなれば、お前は今の名前を捨てる事になる……お前が親から貰った大切な名前を、だ……。」
「……心得ております。」
マナの名を受け継ぐという事は、同時にそれまでの名前を捨て去り二度と名乗らないと誓う事を意味している。
それはもちろん周囲の誰からも二度と、生まれ持った名で呼ばれる事は無い、という事でもあった。
「ワシを……恨んでいるか?」
「っ……それは──。」
病床に伏し枯れ枝のようにやせ細り、出会った頃のような覇気などもはや見る影も無くなり、ついには今際の際となった祖母の問いかけに対し、マナは結局明確な答えを出せないままに、その恐ろしくも偉大な師の命の灯火が尽きるのを見届ける事となった。
そうしてその事をミィオの祖父である森長へと伝えた後、マナは無意識にミィオの部屋を訪れていた。
5歳からの12歳までの7年間をここで過ごした故の、癖のような物だったのかもしれない。
それでも今更姉に会ったとして、一体何の話をすれば良いのかはマナにはすぐには浮かばなかった。
マナが扉を叩こうとして迷い躊躇う手を2回ほど下げ、諦めて立ち去ろうとした、その時。
いつから気がついていたのか扉が開き、中からミィオが顔を覗かせた。
「……そんな所で突っ立ってないで、入ってきなさいよ、フィオ。」
「ミィオ……っ。」
小さく苦笑するそんなミィオの顔を見た途端、マナは自分でもその理由を理解できないままに衝動的に彼女へ飛びついた。
数日前に会ったときは何でも無かったはずなのに、どうしてだか今はとても頼もしく見える気がして。
「ふふ……相変わらず小さいわね。……私の可愛い妹。」
「ワシは……私は、もう……。」
「大丈夫。例え名前が変わったって、アンタはアタシの大切な妹よ……ずっとね。」
子供の頃から殆ど変わらぬ姿の妹を優しく抱きとめ微笑むと、ミィオはそっとマナの瞼へと口付けをする。
そうして2人の姉妹は数年ぶりに同じベッドに入り、互いの温もりを感じながら眠ったのだった。
◆◆◆
その後、マナはミィオに連れ出されるような形で共に森を出て、しばらく放浪するように旅をした後、ここ魔技研の研究員の職についた、というのが数百年程前までの話だ。
「なるほど……この魔導人形の子の名前は、師匠の昔の名前だったんですね。」
「(……ん?つまり、ミィオさんは師匠が居なくなって寂しかったから、それを紛らわせるためにこの魔導人形を……?)」
「……何よその哀れむような目は!?アタシがこの200年間どれだけ──!」
「そっ、それにしても!厳しいお祖母さんから良く逃げ出しませんでしたね?師匠!」
2人の過去話を一通り聞き終え、どこか納得した様子のデュオスが生暖かい視線をミィオへと向ける。
するとその視線に気がついたらしいミィオが目に涙など浮かべながら激昂しかかった為、デュオスは話題をそらすようにマナへと問いかけた。
だが、そんなデュオスの質問が余程面白かったのか、マナとミィオは一瞬顔を見合わせた後で、口元を抑え互いに小さく笑った。
「ふ、ダイナ……冷静に考えてみろ。12歳そこらの子供がいきなりそんな事を強要されて、逃げ出さんわけが無いじゃろう?」
「それは……そう、ですけど……でも魔術にストイックな師匠ならそれでも、って思ったんですけど……。」
弟子にとってはいつでも頼れる大人な師匠であっても、決して子供の時からそうだった訳では無い。
当然の事だが、マナにも子供らしい時期というのは確かに存在したのだ。
「ふふっ。最初の頃は夜中に脱走して、良くアタシに泣き付いてきてたのよ~?」
「えっ?そうなんですか?」
「……それは流石に嘘じゃ。」
にやにやとした少し意地の悪いような笑みを浮かべるミィオが、デュオスへと耳打ちするようにマナのそんな話を暴露する。
それに対しマナは一瞬耳をぴくりと反応させるも、落ち着いた様子で否定した。
「あら、嘘じゃないわよ?アタシの所に半泣きになりながら逃げ込んで来て、ミィオ姉朝までぎゅっとして~、とか言ってたのしっかり覚えてるもの!」
「っっ……知らん知らん!ワシは覚えておらん!そんな昔の事!」
「師匠……。(想像しただけで可愛すぎる……ッ!)」
小さく含み笑いをするようにしながら、わざわざ弟子の前で恥ずかしい思い出を語るミィオに、マナは耳まで顔を赤くしてしまいながら必死に否定をするが、それはつまりそういう事である。
「あらあら?その割にはさっきは随分としっかり昔話をしてたみたいだけど~?」
「ええい黙らんかっ!それ以上続けるならその魔導人形!訴えて廃棄させるぞ貴様ッ!」
「それは絶対やめて!?アタシの命より大切な子なのよ!?」
誂うような態度を続けるミィオに容赦の無い脅しをかけて強制的に黙らせると、マナふんぞり返るように椅子に座り直す。
その気になれば本当に法の力で廃棄処分させられてしまう事を理解しているミィオは、そんな愛娘をかばうようにひしっと抱きしめた。
「ふん、魔導人形なんぞに入れ込みおって、まったく貴様という奴は……!」
「まぁまぁ師匠……!そのへんで……!」
くどくどとした説教を始めようとするマナを、どこか他人事では無いと考えていたデュオスが宥めに入る。
もしマナの時間遡行魔術の研究を引き継いでいなかったら、自分もミィオのようになっていたかもしれないと考えたからだ。
「何よ!ずっと一緒って約束したのに!アタシを置いて突然ここを出ていったのは誰よ!」
「っ……そんな物、子供の頃の口約束じゃろうが!」
「(師匠やっぱり子供の時の事、覚えてるんだ……。)」
「……そ、そういえば師匠は何でここ辞めちゃったんですか?見た感じ、研究設備としては家よりよっぽど色々揃ってますよね?」
もはや見慣れたような言い合いに突入した2人に、再び話題をそらすべくしてデュオスが割って入る。
実際マナから過去に何度か聞いた話では、王宮直下と言うこともあり魔技研の給料はそこそこ高かった筈だ。
「それは、じゃな……。」
「そうよ!何でアタシを置いていったわけ!?ずっと聞きたかったのよそれ!」
「……どうなんです?師匠。」
あまり聞かれたく無い事だったのか、マナは少し答えづらそうに言い淀む。
しかしそれは彼女も気になっていた事らしく、ミィオは思わず立ち上がるほどにヒートアップしてマナへと詰め寄った。
「……その、なんというか……あー……えっと……。」
「何よ?はっきり言いなさいよ!それとも言えない理由でもあるわけ!?」
「ま、まぁまぁミィオさん!一旦落ち着いてください!」
まごつくマナに苛立ちを募らせたのか、襲いかからんばかりの勢いで椅子の座面へと片膝をかけるミィオに、座っていたデュオスも慌てて立ち上がり止めに入る。
「……面倒くさくて。」
「……は?」
「じゃから、その……当時の所長に、ぜひ次の所長にと勝手に決定されてな?それが嫌で、逃げたんじゃよ……ワシは。」
「……はぁ!?」
「えぇ……?」
ようやく開いたマナの口から放たれた、あまりに拍子抜けするような雑な理由に、ミィオもデュオスも戸惑いを隠せない。
要するにマナは、好き勝手魔術の研究ができるここを気に入っては居たが、所長という管理職になってしまうとそれも自由に行かなくなるので、そうなる前にさっさと退職したという事だ。
「な、なんっ……!何よ、それぇぇ……っ!」
「……すまん。」
この200年間、マナが出ていってしまったのは、姉である自分にも言えないくらい複雑な事情があったからなのだと思い込んでいたミィオは、もはや妹の小さな肩へと泣き崩れる事しかできない。
ミィオ自身幾度となくマナの行方を探そうとはしていたが、それでもやはりマナが自らの意思で出ていったのだとしたら、こちらからは探さないほうが良いのではないかという葛藤もあり、その悶々とした長年の思いが積もりに積もった結果生み出されたのが、フィオニーツァという魔導人形の少女であった。
「う、うぅっ!うぐぅ……!ばかっ!ほんっと……!ばかフィオ……!」
「許してくれミィオ……今度、家へ招待するから、の?」
「うぅ……今度こそ、本当の本当に約束よ……?」
「ああ、約束じゃ。……ん。」
椅子の上で胡座をかくマナに正面から跨るような形でミィオが泣きつくと、そんな彼女を慰めるようにマナはその濡れた瞼へとそっと口付けをする。
そのまましばし数秒見つめ合った後で、2人は互いに何も言わぬまま抱きしめ合い始めた。
そんな光景をしばしの間じっと見守っていたデュオスではあったのだが、放っておくといつまでもそうしていそうだと痺れを切らし、少し目を逸らし頬を指先で掻きながらそっと声をかける。
どうやら、2人のどこか甘い雰囲気を邪魔してしまうのが少し気不味いらしい。
「…………あのー、師匠?色々あってすっかり忘れてましたけど、ここには王宮に入るための手がかりを求めて来たんじゃ──?」




