1月29日:謎解きパズルの日
「おはよう、みんな。今日は『謎解きパズルの日』らしいぞ。」
アストルが朝食のテーブルで宣言すると、ルミナが目を輝かせて笑う。
「いいわね! 迷宮や暗号の訓練って聞くと、なんだかわくわくするじゃない」
フィオナはパンをかじりながら頷き、「ちょうど面白そうな魔法を見つけたの。『あべこべ解読魔法』っていうんだけど、暗号文字を逆さまにして読むらしいのよ。試さないわけにはいかないでしょ!」と嬉々として話す。
「相変わらず実験好きだな、フィオナ。俺の工房に昔のパズルボックスがあったはずだ。あれを使ってみるか」
アストルがにやりと笑い、棚の奥から埃をかぶった小さな木箱を取り出す。
「へぇ、これがパズルボックス? なんか複雑そうだね」
レオンが興味津々で覗き込むと、ルミナが肩をぽんと叩く。
「レオン、一緒に謎を解こう。こういうときは協力が大事よ」
「う、うん! おれ、こういう細かい作業はちょっと苦手だけど……頑張る!」
「じゃあ、まずは中に仕込まれた暗号を見つけないとね」
フィオナが『あべこべ解読魔法』を唱えはじめた途端、パズルボックスがまばゆい光を放つ。
「わわっ、ちょっと待って! なんだか変な文字が宙に浮かんでる!」
レオンが慌てて後ずさると、箱の上空に逆さまのルーン文字が浮き上がってくる。
「ふむ、これは『扉の鍵は影に隠れる』って読めるな。……ん? でも全部逆さまに映ってるぞ」
アストルが目を細めて文字を追うが、文字がぐるぐると入れ替わり混乱を極めていく。
「もしかして、魔力が強すぎるのかも。もうちょっと魔法の出力を下げられない?」
ルミナが心配そうに声をかけるが、フィオナが額に汗を浮かべて悲鳴をあげる。
「ちょ、調整ミスったかも! あべこべ具現化魔法に変質しちゃったみたい!」
するとパズルボックスから幻影のカギや扉が次々に飛び出し、部屋の中はミニ迷宮状態になってしまう。
「これ…どうすりゃいいのさ!」
レオンが叫ぶと、アストルは苦笑しながらスパナを構える。
「ここまできたら、全部まとめて修理・解除してやるよ!」
みんなで迷路のように浮かぶ幻影の扉を開け閉めしながら、ようやく本物のカギを探し出すと、パズルボックスは静かに蓋を開いた。中からはボロボロの地図の切れ端が出てくる。
「お宝の地図…かな? それともただの古い紙切れ?」
ルミナが不思議そうに首をかしげると、フィオナは満足げに笑う。
「真相は今度、ゆっくり調べましょ。とにかく今日のパズルは大成功ってことで!」
すると肩にひょいと飛び乗ってきた白い鷹のスノーが、ツンとした声で一言。
「ま、バカ騒ぎも悪くないけど…これ以上、迷惑かけるなヨ。オレ、耳が痛い。」