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3月29日:幻術と奇術の日

「今日は『幻術と奇術の日』よ!準備はいい?」

朝食の席でルミナが楽しげに手を叩く。


「幻術と奇術の日?なにそれ、楽しそう!」

レオンが目を輝かせると、クリスも隣で笑顔になった。


「うふふ、面白い!スノーも楽しみでしょ?」

クリスがしゃべる鷹のスノーを見上げると、スノーはツンとそっぽを向いて小声で呟いた。

「……まあ、悪くないけどね」


「今年も町で幻惑魔法ショーがあるんだろ?僕、絶対行きたい!」

レオンが早くも落ち着きなく椅子の上でぴょんぴょん跳ねる。


「そうね。王宮奇術師協会が毎年盛大にショーを開いてくれるのよ」

ルミナが笑いながら説明すると、フィオナが楽しげに目を輝かせて立ち上がった。


「こんな面白そうな呪文、試さないわけにはいかないでしょ!私も何か一つ、新しい幻術を披露しようかな?」

フィオナの宣言に、家族全員がピクリと反応した。


「おいおい、フィオナ。ほどほどに頼むよ?」

アストルが苦笑しながら工房の扉を開けた。「去年も家中を煙だらけにしたじゃないか」


「大丈夫、今年はちゃんと制御できるはず!」

フィオナが自信満々に答えると、スノーが呟いた。

「その『はず』が一番危ない」


――そして夕方、家族は広場へ向かった。


広場にはすでに多くの人が集まり、奇術師たちが煙と鏡を駆使して幻想的なショーを繰り広げていた。


「すごーい!人が消えたり現れたり!」

クリスは目を輝かせて興奮気味に手を叩いた。


「僕もあんな風にかっこよく剣を消したり出したりしたい!」

レオンも興奮して、木剣を振り回す。


「レオン、落ち着いて。周りの人にぶつかるでしょ?」

ルミナがレオンを制止しつつ、楽しげに微笑んだ。


その時、フィオナが密かに準備してきた杖を取り出した。

「そろそろ私も新しい幻術を試すわ!」


「えっ、ここで?」アストルが慌てて止めようとしたが、すでにフィオナは呪文を唱え始めていた。


「幻想なる炎よ、踊りながら宙を舞え!」

フィオナの杖から美しい青白い炎が踊りだし、次々と空中に幻影の花や鳥を描き出した。


「うわぁ、きれい!」

クリスが歓声を上げるが、その瞬間、フィオナがほんの少し呪文を噛んだ。


「ちょっ、まずい!」

フィオナが焦った顔で杖を振り回すと、青白い炎が暴走を始め、次々におかしな幻影を生み出し始めた。


「何これ!ドラゴンが踊ってる?」

レオンが驚きながらも笑っていると、ドラゴンの幻影は町の人々を追いかけ始め、広場は大混乱に陥った。


「フィオナ!」

ルミナが回復魔法で人々を落ち着かせ、アストルも急いで魔法道具を駆使して幻術の解除を試みる。


「ご、ごめん!今解除するから!」

フィオナが再び呪文を唱え直すが、焦るほど魔力は暴走を続けた。


そんな中、スノーが翼を広げて空中に飛び上がった。

「仕方ない、ボクがやる!」


スノーは小さな風魔法を使い、暴走した幻術の炎をうまく散らして収束させた。

ようやく広場は落ち着きを取り戻し、人々から拍手が起きた。


「スノー、ありがとう!助かったわ!」

フィオナがほっと胸を撫で下ろすと、スノーはツンと顔を逸らした。


「まったく、世話が焼ける」


最後にグレゴールが地下室から遅れてやって来て、一言。

「まあ、幻術も奇術も人生も、うまくいかないところが一番面白いんじゃよ」


家族が顔を見合わせ笑い合う中、スノーが再びぽつりと呟いた。


「…だからって毎回ドタバタすることはないと思うけどな」

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