3月25日:勇者伝説朗読の日
「さあ、今日は勇者伝説朗読の日だ!みんな、準備はいいか?」
レオンが元気よくリビングに飛び込んでくると、家族が暖炉の周りに集まっていた。
「もちろんよ。毎年楽しみにしてるんだから!」フィオナが張り切った声で言う。
「今年の朗読は誰がする?」アストルが優しく笑顔で家族を見回した。
「僕がやりたい!」レオンが元気いっぱいに手を挙げるが、すかさずフィオナが横から口を挟んだ。
「レオンの朗読は去年、大暴走したじゃない。魔法がめちゃくちゃになって、家中が大騒ぎになったのよ。私が今年はちゃんとした伝説を読み上げるわ!」
「えー、おれだって練習したから、きっと上手になったもん!」レオンが頬を膨らませて抗議する。
「まあまあ、ふたりとも。今年は特別なんだから仲良くやりましょ?せっかくだから二人で協力したら?」ルミナが優しい笑顔でなだめる。
すると、グレゴールがひょこっと顔を出して、「そうだな、ふたりで分担して読み聞かせるのが一番だ。協力して朗読すれば、きっといい思い出になるぞ」と提案した。
フィオナとレオンは一瞬お互いを見つめ合い、にっこりと頷いた。
「じゃあ、前半は私が読むから、レオンは後半をお願いね?」
「うん、任せて!」レオンは目を輝かせる。
暖炉の前に並び、フィオナが古い魔法書を慎重に開いた。
「その昔、この世界に恐ろしい魔王が現れ、人々は絶望の淵に立たされました。しかし、その闇を切り裂き、希望をもたらしたのが、伝説の勇者なのです……」
フィオナが落ち着いた声で物語を語り始めると、レオンは魔法の杖を取り出して、小さな幻影を作り出しながら、物語を視覚的に盛り上げていく。
「すごい!勇者が魔王と対峙してる!」クリスが目を丸くして興奮しながら手を叩いた。
「いいぞ、ふたりとも!こうやって聞くと、物語が本当に生き生きとしてくるな!」アストルも嬉しそうに二人を見守る。
朗読がクライマックスに差し掛かり、レオンの番がやってきた。気合十分のレオンが勢いよく読み始めると、魔力も一気に増幅され、思わず杖を強く振り上げてしまった。
すると、レオンの魔法が再び暴走し、小さな魔王の幻影が部屋中を飛び回りはじめた。
「ちょっとレオン、また暴走してる!」フィオナが大慌てで叫んだ。
「ご、ごめん!つい気持ちが盛り上がりすぎちゃって!」
家族は小さな魔王を必死に追いかけ回し、リビングは笑い声と歓声で大混乱に陥った。
ようやくグレゴールが魔法で小さな魔王を捕まえ、魔法の暴走を収めると、部屋は再び平穏を取り戻した。
「今年もまた、勇者の伝説よりも家族のドタバタ劇が主役になったな」アストルが苦笑いしながらつぶやく。
「でも、とっても楽しかったわ。今年の朗読も忘れられない特別な思い出になったもの」ルミナが優しく微笑む。
その時、肩にひょいと止まったスノーがぽつりとつぶやいた。
「勇者も魔王も、お前たちの騒ぎには敵わない。」




