3月24日:竜肺病撲滅の日
「ねえねえ、今日は『竜肺病撲滅の日』だよね!」
朝から元気いっぱいのレオンが食卓で大声をあげる。
「そうよ。昔は竜肺病って大変だったらしいわね。」
ルミナが薬草入りのパンを切りながらにっこり微笑む。
「竜肺病?それってドラゴンがクシャミしてうつる病気?」
フィオナが少し不安そうな顔をする。
「違う違う!ドラゴンの吐息から病気が広がったっていう昔話だよ。」
アストルがコーヒーをすすりながら説明した。
「お、おれ知ってるぞ。ドラゴンがクシャミしたら街が大変だったって。」
レオンが手を上げて話すと、スノーがふわりと舞い降りて彼の頭を軽くつつく。
「それは昔話。お前はクシャミよりいたずらの方が大変。」
スノーがいつもの調子でつぶやくと、皆がくすくす笑った。
食後、ルミナが庭の薬草ガーデンを見ながら言った。
「実はね、今日は街の広場で『竜肺病撲滅の記念式典』があるの。私もちょっとした回復魔法を披露することになったのよ。」
「お母さん、すごい!それなら私も何か手伝う!」
フィオナが目を輝かせると、レオンも負けじと立ち上がった。
「おれだって役に立つよ!ね、スノー?」
レオンがスノーに話しかけると、スノーは少し冷ややかに返す。
「お前、役に立つより騒ぎ立てる専門。」
ルミナは苦笑しながら、
「そうね、みんなで手伝いましょうか。」と穏やかにまとめた。
昼過ぎ、家族揃って広場へ向かう。
すでに街中の人々が集まり、賑わっていた。
ステージでは町長が力強く語りかけていた。
「竜肺病を撲滅した先人たちに感謝を捧げ、我々はこの街の健康を守り続けます!」
そこへルミナの番が来て、彼女は杖を掲げて優しい魔法を放った。
「これが、私たちの感謝の光『ヒーリング・ウェーブ』です!」
会場が優しい緑色の光で満たされ、人々は拍手喝采。
「お母さんすごい!」
フィオナとレオンが喜ぶ中、クリスが何かを指差した。
「あっ、見て!ドラゴンさんがいる!」
クリスが叫ぶと、皆の視線が彼女の方へ集まる。
「えっ、ドラゴン?こんなところに?」
アストルが慌てるが、それは小さな幻影のドラゴンだった。
「クリス!幻影魔法で遊ばないで!」
フィオナが慌てて杖を振ると、幻影のドラゴンがふわりと空を飛んで会場の頭上をぐるぐる回る。
「あら可愛いドラゴンね!」
町の人々は幻影を楽しんでいる様子だったが、フィオナは顔が青くなった。
「しまった!ドラゴンの幻影を出したまま解除呪文忘れちゃった!」
ドラゴンの幻影が次第に大きくなり、リアルな咳き込みを始める。
「えっ、まさかこのドラゴン、竜肺病?」
レオンが目を丸くする。
「フィオナ、解除呪文急いで!」
アストルが叫ぶ。
フィオナが必死に杖を振るが、緊張のせいで呪文がうまく出てこない。
「え、えっと、ヒーリング、ヒーリング…ああもうっ、なんだっけ!?」
そこへグレゴールがのんびり現れた。
「やれやれ、賑やかなことだ。竜肺病に似せた幻影を消すなら、『クリーン・イリュージョン』だよ。」
フィオナがすぐに呪文を唱えると、ドラゴンの幻影がスッと消え、会場が静まり返ったあと拍手が巻き起こった。
「フィオナ、魔法はもっと落ち着いてな?」
グレゴールが優しく微笑んだ。
フィオナは赤面しながら、
「おじいちゃんありがとう…」と小声でつぶやいた。
家に帰ると、夕食を囲んで家族が笑いあった。
「まあ、幻影のドラゴンも良い記念になったじゃないか。」とアストル。
「次からはちゃんと呪文を覚えなきゃ。」
フィオナは反省しつつも微笑んだ。
スノーがテーブルの真ん中に飛び降りてきて、ちょっと一言。
「幻影ドラゴンに竜肺病?本物の病気は、この家族のドジ病だな。」




