1月27日:雪晶の燈火の日
朝からフレイメル家は雪に包まれた街を眺めながら、「雪晶の燈火の日」を祝う準備で賑わっていた。この日は、国の象徴となる雪晶の紋章が描かれた旗を掲げ、家々が魔法の燈火で彩られる特別な日だ。
「おーい、アストル!また地下室に潜り込んでるんじゃないでしょうね?」ルミナがリビングから声を張り上げる。
「い、いや!ちょうど出てきたところだ!」アストルが埃まみれになりながら階段を上がってくる。その手には、年季の入った魔法ランタン。「これを修理しておけば、雪晶の燈火の日らしい明かりが灯せるだろう?」
「そのランタン…怪しげな呪符が貼ってない?」フィオナが目を細める。
「うーん、かなり前の冒険で拾ったものだ。まあ、動けば問題ないだろう!」
「パパ、それいつも言うけど、大体問題起きるよね!」レオンが笑いながら突っ込む。
その頃、クリスは庭で「幻影雪魔法」で雪だるまをいくつも作って遊んでいた。
「ほらスノー、これが私の新作!雪の王様よ!」
「スノー、寒そうに見えるけど、似合ってるわよ!」ルミナがスカーフを持ってきてスノーに巻きつけた。
「これ、いらない…」スノーは翼で器用にスカーフを解きつつ、不機嫌そうな声を漏らした。
一方、家の中ではフィオナが実験的な魔法ポーションを煮込んでいた。
「雪晶の輝きを再現する新しい魔法薬を作ってみる!その名も『煌雪スプラッシュ』!」
「…名前だけ聞くとすごく危ない。」レオンが呆れた顔で言う。
「これで雪が虹色に輝くのよ!」フィオナが自信満々にポーションを鍋に注ぎ込むと――
ドンッ!
鍋が突然膨張し、室内は一瞬で小さな虹色の雪吹雪に包まれた。
「わわっ!視界ゼロ!」アストルが目をこすりながら言う。
「きゃっ!パパ、ランタン落としちゃダメ!」フィオナが叫ぶが、時すでに遅し。アストルが持っていたランタンが床に転がり、呪符が剥がれて奇妙な光が放たれた。
光が消えると、そこには家族全員が頭に雪晶の形をした帽子をかぶった状態になっていた。
「…これどういうこと?」ルミナが恐る恐る帽子を触る。
「た、多分呪符の古い魔法が発動したんだな…『雪晶帽子魔法』かもしれない。」アストルが申し訳なさそうに言った。
「パパ、古い魔法道具には注意してって言ったよね!」フィオナが呆れ顔。
「うふふ、みんなお揃いでかわいい!」クリスは大喜びでスノーを追いかける。
「これ、ツンデレの誇りが傷つく…」スノーが苦々しげに呟き、家族の肩に飛び乗った。
夕暮れには、無事に街中が灯火で彩られ、フレイメル家もランタンを玄関に飾った。虹色の雪吹雪で賑やかになった家は、いつも以上に楽しい一日だった。
「まあ、こういう日も悪くないな。」アストルが帽子を取る。
「次回はもっと静かな日にしてほしいわ。」ルミナが笑うと、スノーが一言。
「家族のドジは雪晶以上に目立つ。」