3月19日:炎の巨像祭の日
「さあ、今日は『炎の巨像祭』よ!一年の厄を全部、燃やしちゃいましょう!」
朝からルミナは笑顔で気合十分だ。
「やった!オレ、でっかい炎が見たい!」
レオンは大はしゃぎで跳ね回る。
「燃えるのはいいけど、怪我だけは気をつけてね?」
アストルが工房から顔を出すと、ルミナは心配そうに息子を見つめた。
「大丈夫、ちゃんと回復術の準備もしておいたわ。それに……」
ルミナがにこっと笑った。「厄を燃やすんだから、ちょっとくらい熱くないと!」
「母さんの言うことが一番危ない気がするわね」
フィオナは苦笑しつつも、祭りの準備に心が躍っている様子だ。「とにかく、さっさと会場に行きましょう!」
一家は祭りの中心広場へ向かう。そこには高さ十メートルもある巨大な藁人形『炎の巨像』がそびえていた。
「うわー!本当にでかい!」
レオンは目を輝かせて巨像を見上げる。
「これが燃えるんだよね?怖くない?」
クリスはスノーをぎゅっと抱きしめた。
「フン、ボクならもっと華麗に燃やせるけどね」
スノーはツンとした顔で羽を広げる。
「はいはい、風で炎を煽ったりしないでよ?」
フィオナがスノーを牽制する。
すると、アストルが宝物庫から持ってきた古い巻物を取り出した。
「これは『炎の守護呪文』だ。昔の冒険で手に入れたんだが、今日は特別に試そうと思う」
「またパパの怪しいアイテム?」
フィオナが半信半疑で巻物を見つめる。
「大丈夫だって、今日はお祭りだしな!」
アストルが得意げに巻物を広げ、巨像に向けて詠唱を開始した。
「炎よ、大地を守り、我らの厄を焼き尽くせ――『インフェルノ・プロテクト』!」
すると巨像が突然赤く光り、周囲の空気が熱を帯び始めた。
「おお、成功か!?」
「ちょ、ちょっと待って!熱すぎない!?」
フィオナが叫ぶ。
「あれ?これ、予想以上に火力が強いぞ!」
アストルが巻物を振り回し焦っていると、炎が勢いよく巨像に飛び込んだ。
一気に燃え上がった巨像は真っ赤に染まり、見る間に大迫力の炎の渦になった。
「わああ、すごい!」
レオンは興奮のあまり飛び跳ねる。
「パパ、これ絶対やりすぎよ!」
フィオナが叫ぶが、その時すでに炎は巨大な火柱となり空を焦がしていた。
「あらまあ、ちょっと派手すぎたかしら?」
ルミナは困りつつも、何だか楽しそうに笑っている。
すると突然、炎が周囲の藁人形まで引火し始めた。
「あ、あれ?どうなってるの!?」
広場中の人々が騒ぎ出す。
「ちょっと、これどうするのよ!?」
フィオナが焦ると、グレゴールがどこからともなくゆったり現れた。
「まあまあ、落ち着いて。『炎吸収結界』を展開するぞ。こんなこともあろうかと準備しておいたのじゃ」
グレゴールが杖を振ると、炎は次々と小さな火花となって結界に吸い込まれていった。
「おじいちゃんナイス!」
レオンは感動のあまり拍手した。
「ふう、これで一安心だな」
アストルは冷や汗を拭ったが、ルミナは微笑んで言った。
「今年の厄は相当強力だったのね。これで全部燃えてスッキリよ!」
「それ、母さんが言うセリフ?」
フィオナが呆れてツッコミを入れる。
結局、フレイメル一家の炎の巨像祭は、いつも通りドタバタ劇場で幕を閉じた。
帰り道、クリスがスノーに尋ねる。
「スノー、厄は燃えたかな?」
スノーはそっぽを向きつつも、優しく羽を広げた。
「……さあね。でも、この家族の騒ぎを見る限り、燃やしても燃やしても、またすぐ厄が湧き出てきそうだけどね」




