3月16日:竹熊の日
「今日は竹熊の日よ!」
朝食の席でルミナが元気よく声を上げると、フィオナは眉をひそめながら問い返した。
「竹熊の日って何?」
「ほら、聖なる竹林を守る白黒模様の熊を祝う日よ。竹のおやつを捧げて感謝するの」
ルミナが説明すると、クリスが目を輝かせて声を上げた。
「かわいい! クリス、竹熊さんに会いたい!」
アストルはコーヒーをすすりながら苦笑した。
「まあ、実際に竹熊に会うのは難しいが、今日は工房に竹細工でも作ってみるか」
「お父さん、それいい! 私、竹で魔法の杖作ってみる!」
フィオナが勢いよく立ち上がる。
「おれは竹の剣だな!」
レオンも負けじと声を張り上げた。
午後になると、一家は裏庭に集まって竹細工を始めた。アストルは慎重に竹を削りながら言った。
「昔の冒険中、竹熊の森に迷い込んだことがあるんだ。あの時はほんとに驚いたなあ」
「え、父さん、竹熊に会ったことあるの!?」
レオンが興奮して聞き返した。
「ああ、でもな、竹熊はすごく臆病で、少しでも物音を立てるとすぐに逃げてしまうんだ。それでも運が良ければ、遠くからそっと眺めることができるんだよ」
アストルが微笑みながら答えた。
「ねえ、竹熊ってどんな鳴き声なの?」
クリスが興味津々で尋ねると、ルミナが優しく答えた。
「竹熊は静かな生き物だから、鳴き声はほとんど出さないの。でも、竹を噛むときのパリパリッて音がすごく可愛いのよ」
「へぇ~、その音、聞いてみたいなあ!」
レオンは想像を膨らませながら、ますます目を輝かせる。
すると突然、庭の片隅でガサガサと物音がした。
「まさか、本物の竹熊が来たの?」
フィオナが目を丸くすると、茂みから白黒模様の何かが飛び出した。
「うわぁ!」
しかし、それは竹熊ではなく、竹でできた人形が歩き出したものだった。
「へへ、びっくりした?」とレオンが得意げに笑う。
「レオン、また変な魔法使ったわね!」
フィオナが呆れながらも笑った。
「でも、すごくよくできてるわ。魔法の制御が上手になったじゃない?」
ルミナが感心して褒めると、レオンは照れくさそうに頭をかいた。
「えへへ、まあね」
クリスは人形と一緒に踊り始める。
「竹熊の日って最高だね!クリス、竹熊さんとお友達になる!」
「よし、じゃあ来年の竹熊の日までに、もっとたくさんの竹人形を作ってみようかな」
アストルが微笑みながら提案すると、家族全員が賛成して歓声を上げた。
夕暮れ時、一家は手作りの竹細工を庭に並べて飾り付けをした。柔らかい夕日の光が竹細工を照らし出し、幻想的な光景が広がった。
最後にスノーが肩に舞い降りてきて、一言ぼそりとつぶやいた。
「竹熊の日に竹を振り回す家族、まあ退屈しないけどさ……」




