3月10日:砂糖魔法の日
「今日は何の日か、知ってる?」
アストルが工房から顔を出し、手に小さな瓶を持っていた。瓶の中には、砂糖がぎっしり詰まっている。
「えーっと、砂糖に魔力が宿ってる日?」
フィオナが机の上に広がった魔法の書物を指で閉じながら答える。
「おお、よく覚えてるな、フィオナ!」
アストルは頬を緩め、瓶を家族に見せつけた。
「今日は使砂糖魔法の日だ。砂糖に宿る魔力を使って、色々な魔法を使えるんだよ」
「へぇ、そうなんだ!でも、どうやって魔法を使うの?」
レオンが興奮気味に尋ねる。彼の目は、何やらお菓子の魔法に夢中になっているようだ。
「そうだな…簡単なところだと、シュガースプライトという精霊を呼び出す魔法があるんだ」
アストルが砂糖瓶を振ると、瓶からふわりと小さな光の粒が浮かび上がる。
「おお!精霊だ!」
「すごい!」
レオンとフィオナが声をあげると、その光の粒が形を成し、かわいらしい小さな精霊が現れた。
「シュガースプライトちゃん、今日はどんな魔法を見せてくれるんだ?」
アストルが優しく声をかけると、シュガースプライトはちょこんと頭を下げた後、ふわりと飛び跳ねながら砂糖を撒き散らした。
「きゃー!甘い匂いがする!」
フィオナが楽しそうに笑う。
「さて、今日は家族みんなで砂糖魔法を使って、ちょっとしたお菓子作りをしてみよう」
アストルが提案すると、家族全員が賛成した。
「よし、じゃあ、レオンはお菓子の形作りを担当な!」
「え?僕?どうして僕が?」
レオンが不満そうに言うと、アストルがにっこりと笑って答えた。
「だって、形作りはすごいからさ。昨日もお前が作った魔法のエクレア、あれは完璧だっただろ?」
「そ、それは…確かに!」
レオンが照れくさそうに頬をかく。
「フィオナはその魔法のポーションを使って、風味をちょっと調整してくれ」
「わかってる!ポーション実験、楽しみだね!」
フィオナは魔法の瓶を手に取り、目を輝かせて魔法の準備を始める。
「じゃあ、私はシュガースプライトと一緒に砂糖を混ぜるわよ」
ルミナが手を差し伸べ、シュガースプライトは喜んでその手に砂糖を乗せると、スプライト自身もふわりと空中に舞い上がった。
その後、みんなで協力して砂糖魔法を使い、お菓子を作り始める。
「レオン、ちょっとそのクッキー、丸くならないように見えるけど…」
「だって、この形、魔法っぽくない?」
レオンが笑いながら、失敗したクッキーの形を見せると、それはまるで山のように盛り上がったおかしな形になっていた。
「フィオナ、これ、砂糖の風味がちょっと強すぎない?」
「いや、これは実験段階だし…もう少し調整すれば完璧よ!」
フィオナは魔法の瓶を振りながら、あたふたと調整を試みる。
その間、クリスが静かに近寄ってきた。
「ねぇ、スノー…これ、食べてもいいの?」
クリスは手に持った奇妙な形のクッキーを見つめている。
「食べないほうがいいんじゃないか?」
スノーが肩にとまり、首をかしげながら答える。
「だって、言うことなんて、あんまり信用できないんだよね」
「でも、クッキーおいしそう…」
「おいしそうだろうけど…見た目が、な。あんた、魔法でいろんなもの作ってるけど、たまにはまともなもの作れよな」
スノーが皮肉っぽく言うと、クリスは笑ってクッキーを食べ始めた。
「美味しい!やっぱり魔法ってすごいんだね!」
「はぁ…まあ、仕方ないな」
スノーが肩をすくめる。
その後、お菓子作りはなんとか形になり、家族全員がその出来栄えに満足した。
「うーん、やっぱりお菓子作りは楽しいな!」
アストルが幸せそうに言うと、
「それにしても、魔法の力を借りても、あんたたちのクッキーは、どこか歪んでるんだよな」




