3月8日:魔女の日
この世界では「魔女の日」。偉大な女性魔法使いたちの功績を讃える祭典が、街の広場でにぎやかに開かれる。
ルミナも朝から張り切っていた。魔女仲間たちが一堂に会し、回復術の新技や薬草の珍しい育て方などを披露し合うのだという。
「今日はお母さん、大忙しね」
フィオナがテーブルの上でメモを広げながら言う。
「回復術士の立場で発表するんでしょ? スライド用に簡単な火魔法で照明を当ててあげようか?」
「助かるわ、でも焦がさないでね。去年みたいに書類が燃えたら目も当てられないわ」
ルミナは苦笑いしながら、大きな鞄に薬草や魔法書を詰め込む。
一方、アストルは工房でホウキを整備中。
「この“祝祭用ホウキ”、不調だって依頼されたんだ。たぶん魔力の通り道が詰まってるんだろうけど……」
ゴソゴソと内部をチェックしていたところ、謎の札が貼られているのを発見。
「なになに……『へんてこなオルゴール飛行魔法』?」
アストルが札を剥がすと、突然ホウキから軽快な音色が流れ始める。
「へっ、面白そうだな。ちょっと試してみるか」
――その頃、街の広場では華やかな衣装をまとった女性魔法使いたちが勢ぞろい。
「わぁ、みんなすごいね!」
クリスが目を輝かせながら走り回る。
「ルミナ、発表はもうすぐ?」
フィオナが杖を片手に舞台袖で待機しているルミナを覗き込む。
「うん、次の次くらい。回復魔法の新技“癒やしの息吹”を紹介するの。薬草のガーデンもこの日のために色とりどりにまとめてきたわ!」
するとそこへ、アストルがガタガタとよろけながら飛び込んできた。
「た、大変だ! ホウキが勝手に踊り出すんだよ!」
見ると、アストルが抱えた祝祭用ホウキは音楽を鳴らしながらクルクル回転し、通りかかった人たちを巻き込み始めている。華やかだった祭典会場が一気に混乱の渦に!
「ぎゃー、何この音!? 耳にこびりつくわ!」
フィオナが思わず耳をふさぐが、ホウキはさらに勢いを増し、宙をびゅんびゅん飛び回る。
「これが“へんてこなオルゴール飛行魔法”の正体ね……」
ルミナは額に汗を浮かべながら、急いで回復魔法の応用を試みる。
「『鎮静術』で音色を抑え込めれば……!」
舞台から観客が逃げ惑うなか、ルミナの唱えた魔法の力でホウキの音楽が徐々に小さくなり、最後には静かに床に着地した。
「やれやれ、助かった……。私の発表、どころじゃなかったわね」
ルミナが肩で息をしながら苦笑いする。
「でも、みんなの注目は浴びたわよ! ある意味、すごいインパクトだったし!」
フィオナがフォローしつつも、あちこちに頭を下げて謝っている。
「ごめんごめん。札を外したらあんな大音量になるとは思わなかったんだ」
アストルも平謝り。
祭典の騒ぎが一段落すると、クリスがスノーを抱きかかえてにこっと笑う。
「スノー、魔女のみんな、すごかったね! わたしもいつかあんなふうに活躍したい!」
するとスノーは、ちょっと不機嫌そうな顔で翼を一振りしながら、ツンとした声で言い放った。
「ふん……女魔法使いは偉大。でもお前たちは、ドタバタしすぎ」




