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3月7日:防火魔術の日

3月7日:防火魔術の日


「今日は“防火魔術の日”なんだって! 街のあちこちで炎魔法のデモンストレーションをするみたいよ!」

フィオナが朝食のパンをほおばりながら、興奮気味に話し出した。

「魔法学院でも『安全な火の扱い』についての講習があるって先生が言ってたわ。なんだかワクワクしない?」


「おお、タイミングばっちりだな。ちょうど工房のほうでも防火用の魔具を修理する依頼が増えてるところだ」

アストルがコーヒーのカップを片手に、工房の扉を振り返る。

「この時期、みんな火の扱いには神経を使うからね。俺も忙しくなるぜ」


「お父さん、無理しすぎないでよ。工房で寝落ちするクセ、まだ直ってないんだから」

フィオナは呆れた表情を浮かべるが、アストルは笑って肩をすくめた。


「ははは、気をつけるよ。ところで、フィオナは今日何をするんだ? お得意の炎魔法で何か披露するのか?」


「うん、学院のイベントで“鎮火支援呪文”をお手伝いすることになったの。実は私、火のコントロールは得意だけど、消火魔法はまだうまくないんだよね」


「そういうときこそ、練習あるのみよ」

隣からルミナが笑顔で助言する。

「もし火傷とかしたらすぐに言うのよ。回復術士として、サポートは任せてちょうだい」


そのころ、リビングではレオンが新聞の見出しを読んでいた。

「ほら見て! 『街の中心広場で大規模な防火呪文ショー』だって! これ絶対見に行きたい!」


「うふふ、クリスも行きたい!」

五歳のクリスが小さな手をあげてはしゃぐ。彼女の肩にはしゃべる鷹のスノーがとまっていて、きょろきょろと周囲を見回している。


「じゃあ、みんなで行こうか。お父さんはあとで合流する感じでいい?」

ルミナが提案すると、アストルは頷きながら工具箱を持ち上げる。

「そうだな、ちょっとだけ修理に集中して、それから追いかけるよ」


――昼ごろ、フレイメル家の面々は街の中心広場へと足を運んだ。大通りには炎のスペシャリストたちが並び、次々に防火呪文を披露している。


「わあ、あっちのチームは水球を飛ばして火を消してるみたい! あれも魔法の一種なのかしら?」

ルミナが目を輝かせる。


「私はこっちのステージでお手伝いしてくるね。たぶん『火の封じ込め実演』ってやつ。成功するといいなあ」

フィオナは急いでステージ裏へ向かった。


ところが、ステージ上ではトラブルが発生していた。火をあやつるはずの呪文陣が、なぜか暴走を始めたのだ。炎が高々と舞い上がり、辺りは騒然となる。


「フィオナ、大丈夫!? 何が起きてるの?」

ルミナが駆け寄ると、フィオナは汗だくで呪文を唱えている。

「鎮火支援呪文をかけようとしてるのに、火勢が強くてなかなか抑えられないの!」


「私も手伝うわ! “クールダウン・セーファー”!」

ルミナが光の帯を炎に向かって放つ。ほんの一瞬だけ炎が小さくなるが、また勢いを取り戻してしまう。


「どうしよう、これ以上大きくなったら大変だ!」


そこへ、工房帰りのアストルが走り込んできた。

「間に合ったか? フィオナ、ほら、この防火魔具を使え!」


「それなに?」

フィオナが受け取ったのは、小さな金属筒に刻まれた複雑な魔法陣。


「“セルフ冷却式 消火エアロ”ってやつだ。引き金を引けば、冷気の風が吹き付けて火の勢いを殺せる!」


フィオナが筒を握りしめ、思い切って引き金を引くと、白い冷気がシュワシュワと広がり、炎がピタリと収まっていく。


「やった…消えた! すごいじゃない、お父さん!」

フィオナは安堵の息をつき、周囲からも大きな拍手が沸き起こった。


「はぁ、助かったわね。さすが魔具職人だわ」

ルミナも胸を撫でおろす。


「いや、俺一人じゃ無理だったさ。フィオナも頑張ったな」

アストルは笑って娘の頭をポンと叩く。フィオナも照れくさそうに笑みを返す。


すると、スノーがひゅっとステージの柵にとまり、ツンとした声で一言。

「ふん…火消しご苦労。でも、どうせまた燃やすんだろ? まったく手間のかかる家族だね」

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