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3月2日:魔導書の日

「今日は『魔導書の日』だってさ。家中の本棚をひっくり返して、面白そうな魔導書を探したい!」

朝食の席でレオンがパンをかじりながら声を弾ませると、フィオナが苦笑いしつつ答えた。

「うちなら宝物庫に怪しい本が大量にあるわよ。お父さんが昔、冒険の途中で拾ってきたやつとかね」


「なになに、冒険で拾った魔導書? すっごく強そうな呪文が載ってたりするのかな!」

レオンが目を輝かせると、アストルはコーヒーをすすりながらのんびり言う。

「まあ、面白い本はあるけどな。ちゃんと注意しろよ。下手な呪文を試して、家中を爆発させるのは勘弁してくれ」


「それ、私のこと言ってない?」

フィオナはぷいっと横を向く。最近、彼女は学院の課題で新作ポーションや変わった呪文を片っ端から試していて、何度かちょっとした騒動を起こしているのだ。


そんなやりとりを微笑ましく見守っていたルミナが提案する。

「今日は各地の魔法図書館が開放されるらしいわよ。せっかくだから、家族みんなで行ってみない? 古文書を見せてもらえるチャンスなんて、めったにないもの」


「おお、いいじゃないか!」

アストルが立ち上がり、ちょうど工房へ向かう道具を片付け始める。「そういう催しなら、魔具職人としても新しい発見がありそうだ」


「ねえねえ、スノーも一緒に来る?」

クリスが肩に乗せた白い鷹をのぞき込むと、スノーはツンと顔を背けながらも、ちらりと視線だけ送った。

「フン…図書館なんて退屈…でも、仕方ない。ついていってやるか」


家族がやって来たのは、大きな魔法図書館。今日は「魔導書の日」特別企画として、通常は非公開の貴重な書棚も解放されている。


「わあ、こんなに分厚い本ばっかりだ!」

レオンは嬉しそうに走り回るが、図書館の司書に「走らないで!」と注意され、慌ててストップ。


フィオナは興味津々で古い魔導書を手に取り、小声で呪文の見出しを読み上げる。

「へえ、 ‘浮遊植物の増殖記録’なんてのがある。これ、実験に使えそう…」


ルミナは医療関係の古文書コーナーを覗いているらしく、隣でアストルが「まるで研究者みたいだな」と感心している。


一方、レオンは棚の奥から「魔導書限定版!」と書かれた怪しい本を発見。

「こ、これは絶対すごい呪文が載ってるに違いない!」


「レオン、ちょっと待って!」

フィオナが止める間もなく、レオンはその本を勢いよく開いてしまった。すると――


「えっ、表紙の裏に“ひっくり返し魔法”の文字? うわっ!」


バチンッ! という音とともに、周囲の本棚が上下逆さまに見える奇妙な空間になってしまった。床と天井が入れ替わったような感覚で、家族が「な、なんだこれ!」と大混乱になる。


「レオン! 本当にやらかしたわね!」

フィオナが半ば呆れながら呪文を解除しようとするが、本に仕掛けられた魔力はかなり強力らしく、うまく解けない。


「どうしよう! 本が浮いてる!」

クリスが指差す先では、棚から抜け出した魔導書が何冊も宙を漂っていた。


「まあまあ、落ち着け。こういう時こそグレゴールじいさんの研究室で学んだ知識が役立つ…」

アストルが工房仕込みの小型魔具を取り出し、紫色の光を放つ。しばらくすると、本や空間の歪みが少しずつ元に戻り始めた。


「ふう、やっと収まったか…」

ルミナはホッと息をつく。司書さんも「ひやひやしましたよ」と苦笑いだ。


「ご、ごめん…つい面白そうだと思って…」

レオンがしゅんとしながら本を司書に返すと、フィオナも呆れ顔で言う。

「まったく、 “魔導書の日”に何やってんのよ。でも、ある意味忘れられない記念日になったわね」


最後にスノーが本棚の上からひとこと。

「…魔導書読む前に注意書きぐらい読め…。ま、それがあんたたちらしいけどね」

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